ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八

文字の大きさ
20 / 44
一章 憎しみの魔女

20話 力の代償は

しおりを挟む
 三百人を超える冒険者たちがゴーレムを止めるべく挑んだ結果、その半数以上が地に伏していた。

 魔力を使い果たし動けなくなった者、ゴーレムの反撃により怪我を負った者。
 そこにいるほぼ全ての冒険者が最悪の結末を想像している。


――このままアークフィランは壊されるのだと。


 圧倒的なゴーレムの強さに俺たちは対抗する戦意すら削がれていった。

「もう……止まらない……止められないよ、こんなの……」

 誰かが発した言葉に一人また一人と、武器を握るその手から力が抜けていく。

 しかし皆が絶望に打ちひしがれる中、俺は考えていた。この強大な敵に対抗できるかもしれない、と。

 俺の持つ反抗レジスト魔法は、敵視の数が多いほど威力が上がる。そして、敵視の度合いが強い時も。
 憎しみ、怒り、恨み……俺に向けられるそれらの感情が強ければ強いほど、発動する魔法は威力を増すのだから。
 
 ファイアーバードの群れに反抗レジスト魔法を使った時の事を思い出し、俺の右手は震えていた。

 力が入らず指一本動かせないほどの疲労感。
 魔法を使う時、全身から血が抜けていくような感覚は、言葉では言い表せない恐ろしさがあった。

 このまま死ぬんじゃないだろうか? 本気でそう思うほど、魔力の枯渇は怖かったのを覚えている。

 皆が命を懸けて戦っているのに、俺だけ見ているだけでいいのか……?

 俺は自分自身に問いかける。
 大勢の前で魔法を使うことに躊躇とまどっていた。だけどそれは、いつかは直面する避けては通れない道だった。

 最強の魔術師になって、救いを求める人を助ける。それを夢見て俺は冒険者になったんじゃないか。

 その考えに至った時、手の震えは自然に止まっていた。
 俺はまた手が震え出す前に、杖を操るカナタに声をかけた。

「……カナタ、協力してくれないか」
「タクトの考えている事は分かっていますよ」

 カナタは背を向けたまま、冷静な声色で返事をする。

「私たちがタクトを守ります。魔力が足りなければわたしのをあげます。だからタクトも……私たちを守ってください」
「……ああ、必ず守るよ」

 カナタの言葉は俺の決意を揺るぎないものにしてくれた。
 握っていた右手を拡げ、ゴーレムに向ける。
 肺が大きく膨らむほど息を吸い込み、力の限り叫んだ。

「こっちを見ろデカブツ!!」

 宙に詠唱紋が浮かび上がると、同じく空を舞う魔術師たちからも視線を浴びた。

 あの子たち、いったい何をするつもり?
 詠唱紋……え、男?
 魔術師の子がやってるんじゃないの?

 
 もうバレてもいい。それよりも、やらなければならない事が目の前に迫っているのだから。

 ゴーレムの敵視を俺だけに向けさせる。
 みんながもう傷つかないように、俺がみんなを守るんだ。
 

「【敵視ヘイト】ォオオ!!」


 俺が詠唱を叫ぶとゴーレムの体を紫色のオーラが纏った。

 ゴーレムの赤い瞳と目が合う。そしてその色はより濃く、暗く輝いた。

『オマエハ……マジョサマ……デハナイ』

 大きく振りかぶった岩の拳が、俺たちに向けて放たれる。

「来たッ!」
「しっかり掴まっててくださいねッ!!」

 眼前に迫る拳は巨大な壁のようだった。

 カナタは杖を巧みに操り、間一髪のところで拳を避ける。

 支柱のように太い腕の周りを飛びゴーレムに近づいていく。

(もっと……もっと俺に敵視を向けろ!!)

 反抗レジスト魔法の威力を上げるために、俺は何度もゴーレムに敵視ヘイト魔法を上掛けしていく。

「オラどうした人形さんよォ! 捕まえてみやがれ!」
「操縦してるのは私なんですけど、ねッ!」

 ゴーレムの周囲を飛び回り、掴もうとする手をかわし続ける。
 そんな俺たちを見て、他の魔術師らは困惑した様子だった。

 一体何をしているんだアイツらは?
 モンスターを煽ってる……?

 やがて、地上にいた人たちも気づき始めた。
 それまで無差別に攻撃をしていたゴーレムは、いまや俺とカナタだけを追いかけている。

「あれは……おい、リオン上を見ろ!」
「えっ? カナタ……タクト……!!」

 一瞬、リオンたちの驚く声が聞こえた。

 悪いなリオン……ちょっといま返事はできそうにない。

 コイツを倒す。俺の頭にはそれしかなかった。

「カナタ」
「了解です。ありったけをお願いしますよッ」

 一言で俺の意思を感じ取ったカナタは杖のスピードを上げる。

 ゴーレムの手を掻い潜り、少し距離を置いて敵の正面へと回り込んだ。

 覚悟しろよ、デカブツ野郎ッ!!

 反抗レジスト魔法を唱えようと、口を開いたその時だった。

「【汝 我、憎しみの魔女より生まれし者よ 今その力を解放し 役目を終えよ】」

 なんだ? 口が勝手に……。

 俺の声、じゃない……? 誰だこれは?

 俺は何を言っている?

 ファイアーバードの時にも感じた違和感。知るはずのない詠唱を口ずさむ自分。

「タクトッ!! 早く!!」
「——ッ!!」

 重なった声に戸惑いながらも、俺は眼前の敵に向けて最後の詠唱を叫んだ。


「【反抗レジスト】ォォオオオッッ!!」


 宙に出現した巨大な詠唱紋から七つの鎖が飛び出した。
 現実ではありえない大きさの鎖は、ゴーレムの腕、足、胴、首に絡まり動きを封じる。

『マジョサマ……!! マジョサマ……!!』

 ゴーレムはまるで、親の帰りを待ちわびていた子供のように歓喜の声をあげる。

 七本目の鎖には先端にやじりのようなものが付いており、鋭い先をゴーレムの顔に向けていた。

「砕けろォオオ!!」

 魔力が枯渇しても構わない。俺は仲間を助けるために、この力を使うと決めたのだから。
 俺の声に押されて飛び出したやじりは、岩の顔面を砕き、貫通して地面に突き刺さった。

『グォオオオオ……』

 低い遠吠えのような声が空気を震わせた。
 ゴーレムの瞳からゆっくりと光が失われると、体を形成する岩の隙間から紫色の光が漏れ出す。
 光は次第に強くなり、街全体を光が包み込んだ。

 光が弱まってくると、今度はゴーレムの体が音を立てて崩れていく。
 最期には岩の丘を形成し、完全に沈黙した。

 体を縛っていた魔法の鎖も光の粒となって消えていく。

「や、やったぞ……倒せた……」

 カナタも長時間高速で飛びすぎたのか、杖の動きが鈍くなっていた。
 杖はゆっくりと力を失うように高度を下げて、俺たちは地上に降り立った。

 まだ辛うじて歩けるほどの力は残っていた。カナタが魔力を分けてくれたおかげだろうか?
 杖から降りたカナタは、流石に疲れたのかしゃがみ込んで俯いていた。

「カナタ……お前のおかげだ、ありが――」
「――ッ」

 労おうと伸ばした手が、勢いよく払われた。
 突然、拒絶されたことに俺は動揺した。

「え……?」
「――私に触らないで」
「ど、どうしたんだよ? カナタ?」

 自分の力で立ち上がったカナタは俺を鋭く睨みつける。
 その目は怒りに満ちており、ここまで怒ったカナタを見たことがない。
 気づけば俺を取り囲むように他の冒険者も集まっていた。

「あ、あの! すみません! 魔法を使えること黙っていて……」
「――黙れ魔女」

 弁明しようとする俺を言葉で突き放したのは、ギルド長のワインズさんだった。
 ワインズさんもまた、険しく眉をひそめて俺を睨みつけている。

 俺を見る冒険者たちの目には覚えがあった。憎しみ、怒り……俺を敵視する目だ。
 ワインズさんのかたわらにユルナとリオンが並び立つ。

「リオン! ユルナも無事か!?」
「気安く名前を呼ばないで」
「お前を仲間に入れたことを後悔しているよ。お前はこのパーティの汚点だ」
「な、何を言ってるんだ……みんな……?」

 リオンが剣を構えると周囲の冒険者たちも各々の武器を握り、俺へ矛先を向ける。
 その光景は、村を追い出された時と酷似していた。

 まさか敵視ヘイト魔法がみんなに?
 そう考えずにはいられなかったが、俺には思うところもあった。

 あの時は魔法が使えることを知らず、むやみやたらに敵視ヘイト魔法を連発したことで、村中の人が魔法にかかってしまった。

 しかし、今回はゴーレムにしか使っていない。

 この状況に理解が追いつかず頭を悩ませていると、リオンが俺の前に立った。

「今すぐ私たちの前から消えなさい。そして二度と、この街に近づかないで」
「おい……嘘だろ、リオン?」

 ヒュンッと俺の頬を剣がかすめた。
 鋭い痛みのあと、僅かに触れた頬から血が滴り落ちた。

 リオンは本気だ。従わなければ本気で俺を切るつもりだ。

「消えなさいと言ったの、聞こえなかった?」
「か、カナタ……?」

 俺は信じたくなかった。信じていた人達が仲間が、そうなっていることを。
 救いを求めてカナタに声をかけたが、返ってきたのは冷たい視線と侮蔑だった。

「死にたくなければ早く消えて。目障りです」
「……そんな」

 俺は村を出た時から変わったと思っていた。
 魔法を使いこなし、町を救い、仲間もできて浮かれていたんだ。

 でも、現実は何も変わっちゃいない。

 向けられた矛先と敵意から逃げることしか出来ない。

 称賛は侮蔑に、仲間は敵に。

 これが憎しみの魔女から受け継いだ、力の代償だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...