前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

文字の大きさ
134 / 135
2章 魔法使いとストッカー

69 ピクニック

しおりを挟む
 お出かけ用の馬車に乗り込んだ私はユーリをすぐさま横に座らせた。だって… 前の二人が怖いんだもん。

「お前はついて来なくてよかったのに。せっかくのお嬢様の休みが台無しだ」

 ランドは足を組み窓の外を見ながら愚痴を吐く。

「嫌ならお前が帰ればいい」

 と、リットも足を組んで反対の窓の外を見ながら言う。

「…」
「…」

 車内はし~んと静かになりガタゴトと馬車の進む音だけが聞こえる。嫌だな~、今から楽しいピクニックなのに。はぁ。

「きょ、今日は馬車なんだね。久しぶりで楽しいな~。なんて、ね? ユーリ」

 びくっとしたユーリは前の二人を盗み見してからコソコソと私に返す。

「止めてくださいお嬢様。私はまだ死にたくない… 今日はユーリは無視でいいです。居ないものと思ってください」

「はぁ? 裏切る気? ちょっ、お話ししようよ、ユーリちゃん」

 と、ユーリの腕をつかんで揺らすがユーリも窓の外を見て、かたくなにこっちへ振り向いてくれない。

「…」

 長い沈黙。でも、馬車はどんどん目的地へ近づいている。こんな調子じゃピクニック、楽しめないじゃん。

「あのさ~、リットとランド。久しぶりのお出かけなんだし二人共ツンケンしないで」

 バッと勢いよく私を見る二人は何故か息が合っている。

「こいつが!」
「こいつが!」

 グルルーと野獣の喉を鳴らすかのように一瞬睨み合ったが、すぐに逆方向へ顔を背けた。

「はぁ~。せっかくのピクニックなんだから仲良くしてよ。こんな事なら二人以外を連れて来るんだった」

 と、私は大きなため息混じりに二人をにらんだら、バツが悪そうにやっと謝ってきた。

「すまない。自分で誘っておきながら、嫌な態度をとってしまった」
「悪かった… 俺だけ除け者になりそうだったからムカついて」

「いいわ。じゃぁ、この瞬間から仲良くしてよ。はい、握手」

「…」
「…」

 無言でそろっと軽く握手をする。途端にランドは切り替えたのか笑顔で話しかけてきた。

「それよりお嬢様、今日は転移で行かないのが不思議じゃないか?」

「そうね、なぜ?」

「ゆっくりと外を眺めるのもいいかと思ってな。普段の領民の暮らしぶりが見えるだろう?」

 そっと窓の外を見ると、ちょうど畑仕事をしている人たちが見えた。あれは何を収穫しているのかな? 夫婦とおじいさん、そして子供が二人。家族全員で籠を抱えて作業している。
 と、その何気ない情景に顔がついついほころぶ。

「みんな一生懸命働いてるんだよね。顔が生き生きして見えるのが私にとってはうれしい。ありがとうランド」

「いいんだ」

 リットもムスッとするのを止め農夫たちを見ている。
 少しは領民も豊かになったんだよね。誰も道端に転がっていない。やせ細っていない。心なしか笑顔が見える領民たち。私がやってきたことはちゃんと繋がっていたんだ。

「お嬢、よかったな」

「うん」

 リットもランドも、そして固まっていたユーリもみんなで笑い合った。
 二時間ほどガタゴトと馬車に揺られながら着いた場所は、ミトン村とかレンモ村が見渡せる小さい丘の上。

「う~ん! 気持ちいい~」

 丘に吹き上がる軽風が心地いい。後ろ手は岩が目立つ山々で麓は樹木で覆われた暗い森だった。

「いい場所だろ? ほら村の向こうに城も見える。それに、この木だ。今は葉の季節だがお嬢様の好きなチェリーの木なんだ」

 と、ランドが指差した木を見上げる。高さが優に三メートルはある古木だ。

「すごいね。こんなに大きなチェリーがあるんだ。これって千年以上はあるのかな?」

「どうだろう。まぁ、こんなに大きくて古い木なんだからあるんじゃね?」

「でも、よくこんな場所を見つけたねランド?」

「あぁ、アークに教えてもらったんだ。あの洞窟の石探しの時に見つけたらしい」

 みんなでピクニックの荷解きをし、ユーリと敷物を広げた時だった。

「へぇ~、あの時ね… … ん?」

『… シ …… … ジェ…』

 葉が擦れる音で少し聞こえにくい。でも何か聞こえたような…

「どうした?」

 リットが席に着く前に籠から鶏揚げをつまみながら聞いてくる。

「いや、何か聞こえたような…」

 と、ユーリとロッシーニも耳を澄ませる。リットとランドは周囲を警戒して武器に手を置いている。
 
「何も聞こえませんが?」
「はい、私もです」

「空耳かなぁ? まっいっか。ユーリ、お腹が空いちゃったし早めのお昼にしない?」

「ふふふ、お嬢様ったら。ではご用意しますね」

 ユーリとロッシーニがカトラリーを出していると

『ジェ …… シー… わ… だ』
 
 やっぱり何か聞こえる。今度は無言で皆に手を上げて合図する。『うん』とうなづいた私に皆が警戒体制に入った。

「誰?」

『ジェシ… 我… …ランド だ』

 ? 誰だ? ~ランド。目の前のランドじゃないし… ~ランド、~ランド…

「あぁわかった! グランド様だ!」

『そうだ。やっとか』

 と、声が頭の中に響いた途端、森の中から疾風が吹き込んできて私たちの視界を遮る。しばらくすると風が止んだので、顔の前の両腕を解く。と、敷物の上にぬいぐるみのようなかわいい恐竜がちょこんと座っていた。
しおりを挟む
感想 405

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。