二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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現代。

不本意ですが、選択します。

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「そんなに・・・。恋愛したくないの!?」

焦ったように裏返った声で、銀色の猫は白い空間で輝きを放っていた。

私は激しく首を縦に振り、髪を指でいじりながら猫を見る。

「正直、死ぬよりダルいんです・・・。
なので・・・、私を元の世界に戻して下さい。
痛いのは嫌だけど・・。
誰かと恋愛するよりはマシなので、気合い入れて、覚悟決めて戻ります!!
あー・・。痛いの一瞬だったらいいなー・・・。」

パン!!と両頬を叩く。

「よし!!」

目を閉じて、気合いを注入した。

「・・・ちょっと待って美月!!!
そうだ、死ぬ前に・・。君の両親が救った世界を見たくないの?」

明らかに焦り気味の銀色の猫が、動揺を隠せぬ声で話始めた。

「 え?・・私の父と母が、・・その異世界と関係あるの?」

「君を転移させる予定の世界は、君の父親と母親が運命を大きく変えて繁栄した世界なんだ。
今からもう、あちらの世界では、25年前の出来事なんだけどね・・。
ちょうど、君の父親と母親の記念式典が行われる。彼等の選んだ選択の上で、今の君が此処にいる。
・・我は、君には死んで欲しくない。」

切なそうな表情を浮かべた銀色の猫は、私を苦しそうに見つめていた。

その金色の瞳は切実に私に、「生きろよ、お前!」と訴えていた。

「そんな話・・・。私、一度も聞いたことがないわ。でも、確か父は一度死んだって・・・。
いつか母がそんな話をしていた。」

「そうだ・・。アルベルトは、その世界の「ルーベリア王国」で、王子だった。」

「お・・、王子!?めちゃめちゃ・・似合う!!
そうだったんだ!!
だから、あんなに無駄に品があるんですね!!納得がいきました・・・。」

私は、父が王子だったと言う事実に驚くよりも納得の表情で頷いていた。

父の育った国・・。

母と出会って恋した、その馴れ初めの世界を見たくない訳がないんですけど!!

「そこに、同じように事故で死にかけたエリカが異世界に転生したんだ・・・。
そこで同じタイミングで死にかけた、ルナ=フェナルディの体に魂ごと入り世界の運命を変えた。
アルベルトは許嫁だったルナではなく、エリカの魂を愛したんだ。
アルベルトは、自らの死を選択し・・・。
君の世界へ逆転生したんだ。
それからは・・・。君がよく知ってる通りだ。今も仲睦まじく、幸せそうな2人を見ると嬉しくなる。君も幼いころからずっと見守っていたんだ。
だから、君には幸せになって欲しいんだ!!」

「その世界に行けば・・・。父の大切にしていた人たちにも会えるんですね。
でも、その為には私は誰かを愛さねばならいないんですよね・・・?」

片目を瞑り、酷く嫌そうに吐いた言葉に、銀色の猫は苦笑していた。

コホン、と気を取り直し、人間のように咳払いした猫は金の瞳で美月を見つめる。

「 君の未来をかけた選択だからね?
本当に死にたいなら元の歩道橋へと戻すが・・・。
だが、それでいいのか?
君が恐れているのは、愛する人を失う痛みだろう?
それを乗り越えてエリカは、アルベルトと幸せになった。
美月、君は2人を幼い頃から見てきただろう?
いつまでも逃げていては何も変わらない!!
過去は、変えられないんだよ・・・。
未来は、いくらでも選択することが出来るんだ。」

愛する人を失う痛み・・・。

逃げるなと、軽く言うのね。

でも、その通りだった。

父と母は幸せだった。
誰から見ても、お互いだけを想い、周りに感謝して生きていた。

羨ましいと思うくらい、運命的な2人だと思う。

「母と父の選択は、幸せに繋がったわ。
母が昔、言っていたの・・・。「運命の人は1人じゃない。」って。
私は、母や父をあんなに尊敬出来る両親に育てたその世界を見たい!!
もし選ぶとすれば・・・。私は、過去ではなく、未来の愛を選択したいです。
だけど、殺したいほど愛するって感情には、正直、恐怖しか感じないんです!!
ちょっとそこだけ、何とかなりません!?」

銀色の猫はため息をついて言った。

「分かった!!殺したいほど・・の部分をちょっと変えるよ。あ、そうだ!!・・死んでしまうほど、愛するに変更しよう。」

「えっ!?あんまり文章的な意味に変化は感じられないし。それより、二択一のどちらを選んでも誰を愛せば、私が死んでしまうエンドになりますけど!?そんなの絶対、誰も愛したくないんですけど・・!?
えーと、・・ちょっと落ちつきましょう!!」

一番落ちついてない、美月は不安そうに猫を見た。

猫を見ると、すでに二本足で立ち上がり、手を翳(かざ)し光が溢れ出していた。

予告なく、急に異世界転移!?

気持ちの整理の時間も、なしですか!!

「では、今すぐに・・異世界へと導くとしよう。
美月、君の導き出す選択を楽しみにしている。
誰かを深く愛せた過去を持つ君は、また誰かを愛することが出来る。
そして、君の選択によってあの世界の未来は大きく変わるだろう。
君に世界の未来を委ねるよ・・。どうか、光輝く未来の選択が成されますように。」

「はぁっ!?・・いや、荷が重いって言うか・・。世界を変える選択なんて無理!!!
死んだほうが、人類に迷惑かからないならそうしますから!!タイムっ・・・もっかい考えます!」

「大丈夫だよ。エリカも、悩んで現在(いま)を創った。
彼女と、アルベルトの娘である君なら、大丈夫だよ。すぐに我も君に会いに行くよ・・。
この猫に入った時に驚いたんだ・・・。君の魂は銀色だった。彼も同じ色だよ、美月!!!」

「ちょっと・・待ってっ!!
タイムだってばーー!!どうせ死ぬなら事故エンドがいいっ!!う・・っ。」

眩い光に照らしだされた白い空間は、目が明けてられないほど光輝いていた。

最後の方が聞き取れずに、私の魂の色が銀色って事は聞けた。
あの猫の色が、私の魂の色だなんて・・・。

不思議と、温かい光に包まれた私は心地よいその光に身を委ねた。

薄れゆく意識の中で、大好きな家族の笑顔が浮かんで・・消えた。
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