二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

文字の大きさ
6 / 94
現代。

銀色の猫との出会い②

しおりを挟む
「ええええっ!?ちょ・・ちょっと、いま、この猫が喋った!?嘘・・。どうなってるのよ!?」

ドサッと試合の準備の道具が入った鞄を地面に落として、その猫の姿に見入る。

ずいっと猫の正面まで近づいて屈んでみた。

「しかも、あなた・・。何で私の名前を知ってるの?」

「君の名前は昔から知っている。生まれる前から、我とエリカは親友だったからな。」

ちょっと待って・・。

お母さんの名前まで!?

何なの、この夢?

リアルドッキリだし・・・。

「・・・あれ?何ここ!?私、歩道橋の上に居たはずじゃなかった?」

目の前に広がっていた歩道橋と、下を走る車の渋滞の様子、立ち並ぶ高層ビルの様子が様変わりしていた。

ただひたすらに、真っ白い空間が目の前には広がっていた。

目の前にいる銀色の猫の姿だけはそのままに、全ての私の住んでいた世界の景色は真っ白に色を変えて
消えてしまったのだった。

今日の試合・・。

いや、それよりも・・・ここは何処っ!?

一体、どうなってるの?

パニックになった私に、銀色の猫が急に二本足で歩いて目の前で立ち上がる。

「美月、君に頼みがあって君を異世界へと繋ぐこの空間に連れてきたんだ・・・。
君は、今日のフェンシングの大会に向かう途中に車とぶつかって、この世を去る予定になっている。」

「・・・えっ!?何それ。本当に私、死ぬの・・・!?
それにどうして、私がフェンシングの大会に出ることを知っているの?」

「我は何でも知っている。決められた未来で命を落としてしまう前に、
その肉体を持ったまま・・。この異空間(よみのはざま)に連れて来た。」

「・・そうなんだ。助けてくれてどうも有難う!!で・・・、
どうしたら私、元の場所に戻れるの?」

「今の話、ちゃんと聞いてた?」みたいなリアクションの銀猫が、
非常に驚いた様子で私を見上げていた。

聞いてるけど、全体的に支離滅裂で理解不能なんだって・・・。

「元の世界に戻れば、定められた運命の通りに君は事故で死ぬだろう。
それで良ければ・・、元の歩道橋へと君を戻すが・・・。」

ちょっと待て!?

私は大好きな家族にもう二度と会えないの?

フェンシングの全国大会への出場も、医学部で中途半端になっている医術の習得もそのままに・・・。
・・・死ぬってこと!?

「困ります!!でも、戻って死ぬのも困ります・・。
どうしたらいいの?貴方、神様なんでしょ?何とかしてください!!」

「我は神では無い・・。神に仕える身。しかし、1つだけ生き残る為の方法がある。
その肉体を持ったまま、異世界へと転移させる。
そこで我の出す、二者択一の選択を選んで生き延びるか、死ぬ運命を甘んじて受け入れるか・・。」

銀色に輝く、美しい毛並みの猫は金色の瞳を大きく見開いて私を見つめていた。
その瞳は、懐かしいような不思議な感覚を覚える強い光を湛えていた。

「・・・二者択一って言ったわよね?それって、どんな二択なの?」

大きな茶色の瞳を、瞬いて息を深く吐く。

私は、地面に置いた鞄の上にドサリと座り込んで猫の目線に合わせて見つめた。

混乱する頭の中を、少しづつ整理しながら続きを待つ。

二本足で立ちあがった猫は、落ち着いた声音で伝える。

「 君は、時間が8年前から止まっておる・・・。そんな君に・・、再びその時間を
動かす為に、とっておきの二択を用意した。」

その言葉に、ビクリと体が震え怪訝な表情で猫を息を殺して見つめた。

 「過去に自分を愛した人から、殺されるほど愛されるか?」

「殺されるほど、愛される・・?そんな物騒な・・!!
しかも、私を愛した人って?そんな人知らないし、多分私の家族以外いないわよ?」

呆然と立ち尽くす私を見ながら、もう1つの選択肢を告げる銀色の猫は・・・。

心なしか、物凄く楽しそうだ。

正直、イラッとするほど生き生きとした声で宣言した。

 「これから愛してしまう人を、殺したいほど愛するか!?だ!!君の選択肢は、その二択だ!!」

ビシッと私をピンク色の肉球を向けて指(?)刺した猫に、冷たく一瞥した私は酷く冷静な声音で返事をした。

 「・・・・死にます。」

表情を変えずに、茶色の瞳で金色の瞳を見つめて零した言葉に驚きすぎた猫はヘタリと
その場にしゃがみ込む。

その言葉に、銀色の猫は大きく髭を震わせて金の瞳を大きく揺らして驚いていた。

更にそれよりも驚いている私が、大きな瞳を揺らして猫を見下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...