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異世界。
魔術都市「ミストラル」②
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王城の廊下。
良く磨かれた鏡のように美しい、白い大理石の床には焦ったような靴音が響く。
3人の男性マントを翻して、急ぎ聖堂へと向かっていた。
「急いで下さいよ!!どうして式典のギリギリまで、鍛錬場で兵を扱(しご)いているんですか!?
王子である、アルベルト殿下が遅刻なんて・・。
この式典の開催国は我が国であるのに、有り得ない事ですけど・・・。
姉上であるエリカ様も、すでに先ほど、サフィール様と式典会場である聖堂に入られていらっしゃいますよ!?」
「仕方ないよ・・・。アルベルト殿下は、この式典で出入りの激しい王城の中で、悠々と昼寝をしていた衛兵を叩き起こして稽古をつけてやっていたんだ。
こんな時だからこそ、警備に力を入れねばならぬのに・・。
王を守る為の王立騎士団は、弛んでいるな・・・。魔術騎士団を少しは見習って欲しいものだ。」
黒い短髪の髪に、紫色の瞳を眇めて横にいる王子を睨み付けているアレクシスを窘(たしな)めるように、双子のクレイドルは、溜息交じりに束ねた黒い背中までの長い髪を揺らし、落ち着いた表情で紫色の瞳を細めて笑っていた。
「この城の中では、一番に守られるべき王である父が一番強いからな・・。気が緩んでしまうのも分かるが・・。両家の子息だから騎士として選ばれるような弛んだシステムを、今一度考えなおさねばならぬ。
各国からの貴賓たちに、わが国で何かあれば、シェンブルグ王国の沽券にかかわる一大事となるのだ。
気を引き締めて、警備に当たらせろ・・・。」
「王立騎士団だけでは心もとないので、魔術騎士団の何隊かは王城警備へと回しましょうか?」
「・・・頼む。あれでは、警備の意味もない・・。犬を置いた方がマシだ。」
「畏まりました。直ちに、副団長ルードリフに伝えて参ります!!」
クレイドルは、すぐにアルベルトとアレクシスから離れ、王城の端にある魔術騎士団の詰め所へと向かった。
あり得ない・・。
こんな大切な日に。
この国は平和ボケしすぎなのだ。
いつあの国に寝首をかかれても可笑しくない状況なのに、それを理解している者は
果たしてどれぐらいいるのだろうか?
蒼い瞳が厳しい色味を帯びる。
漆黒の魔術騎士服に青いマントを羽織り、金色の髪を輝かせた王子は深いため息をつきながら
目指す聖堂へと足を速めた。
「遅いわよ、アルベルト!!何してんのよ・・・。あんた王子でしょう!?」
同じプラチナブロンドの髪を編み込んで纏め、美しい青いドレスに身を包んだ母と似た美貌を誇る
姉と、シルバーの髪に金色の瞳を持つ美丈夫の姿を捉えた。
「久しぶりだね、アルベルト殿下。また凛々しくおなりになられたね。
エリカも・・、久々に会ったのだから、弟君にもう少し優しく声掛けをしたらどうかな?
騎士団長も務めてるとあれば、アルベルト殿下も色々とお忙しいんだろう・・。」
夫の甘い笑顔に、姉はデレていた。
「相変わらず、顔に締まりがないですね・・。お久しぶりですね、姉上!!
厳(おごそ)かな式典の前に「今日もうちの旦那は素敵!!」とか、阿保っぽい心のダダ漏れは聞きたくないです。」
「・・・もう!相変わらずね、アルベルトは可愛くなーい。」
苦笑いのサフィールと、怒り出す姉のいつものツーショットに、アルベルトは緊張を解いた。
壇上の裏側に集う、シェンブルグの王族とルーベリアの王族が並び立っていた。
「・・アルベルト、初めても良いか?」
厳粛な聖堂で、背の高く引き締まった体躯のカイザル王が澄んだ声で囁く。
母である王妃も、嬉しそうに父の隣でいつもの優しく美しい微笑みを浮かべていた。
頷いて、返事をしようと父の方向を見つめた瞬間に、聖堂の窓が一瞬大きな光に包まれた。
「・・・なんだ、この光は!?」
その眩い光に瞳を凝らして、蒼い大きな瞳を揺らした。
カイザルも、その眩い光に気を引き締めた顔で窓の外を見上げる。
母の側にいたリリア女王と、サイラス王配殿下も緊張の面持ちで窓の外を見た。
サフィールは、エリカの腰を抱き自分の方へと引き寄せる。
ザワッと揺れた聖堂内の参列者は、不安な様子で周りを確認する。
魔術騎士団と、王立騎士団たちは表情を引き締めて鞘の近くに手をかけた。
緊張した面持ちで、王族や、参列者の側へと駆け寄る。
もう一度、今度は聖堂の天井が光輝いた。
アルベルトは頭上を見上げた瞬間、空から降って来た影に驚いて大きく目を見開いた。
「・・・うっわあぁあぁあああ!!!」
「きゃあぁぁぁああぁああああ!!!」
<・・・・ドサッ。>
光の中から、自分の目の前に茶色の瞳を大きく開けた、見たこともない恰好の美しい女性が空から降ってきたのだ。
僕は彼女を見た瞬間に、自然と、自分たちの敵だとは思わなかった。
咄嗟に腕を広げて、その少女を受け止めたが強い衝撃に耐えられずに床へと投げ出される。
「・・・ンッ」
「..ッ。」
式典が執り行われる時間の僅か数秒前の刻・・・。
アルベルト王子殿下の元に、光に包まれた一人の少女が天から降って来た。
聖堂の赤い絨毯の上に重なるように倒れた。
カイザルもルナも・・。
その場にいた出席者の皆が、目の前の光景を呆気に取られた表情で見つめていた。
大きな王子の体の上に、覆いかぶさった少女の唇が、青い瞳を大きく開けた王子のその唇と重なっていた。
柔らかく、甘い唇の感触に驚いたアルベルトは目を大きく見開いて目の前の茶色の瞳を捉えた。
同じように、大きく見開かれた瞳を揺らした少女は眉を寄せ、その瞬間、驚きよりも嫌悪の眼差しを向けた。
動けない体と、唇から熱くなる鼓動にアルベルトの頭は混乱と、現実の認知が追い付かなかった。
その場に集いし者達は、目の前の光景に驚愕の表情を向けていた。
良く磨かれた鏡のように美しい、白い大理石の床には焦ったような靴音が響く。
3人の男性マントを翻して、急ぎ聖堂へと向かっていた。
「急いで下さいよ!!どうして式典のギリギリまで、鍛錬場で兵を扱(しご)いているんですか!?
王子である、アルベルト殿下が遅刻なんて・・。
この式典の開催国は我が国であるのに、有り得ない事ですけど・・・。
姉上であるエリカ様も、すでに先ほど、サフィール様と式典会場である聖堂に入られていらっしゃいますよ!?」
「仕方ないよ・・・。アルベルト殿下は、この式典で出入りの激しい王城の中で、悠々と昼寝をしていた衛兵を叩き起こして稽古をつけてやっていたんだ。
こんな時だからこそ、警備に力を入れねばならぬのに・・。
王を守る為の王立騎士団は、弛んでいるな・・・。魔術騎士団を少しは見習って欲しいものだ。」
黒い短髪の髪に、紫色の瞳を眇めて横にいる王子を睨み付けているアレクシスを窘(たしな)めるように、双子のクレイドルは、溜息交じりに束ねた黒い背中までの長い髪を揺らし、落ち着いた表情で紫色の瞳を細めて笑っていた。
「この城の中では、一番に守られるべき王である父が一番強いからな・・。気が緩んでしまうのも分かるが・・。両家の子息だから騎士として選ばれるような弛んだシステムを、今一度考えなおさねばならぬ。
各国からの貴賓たちに、わが国で何かあれば、シェンブルグ王国の沽券にかかわる一大事となるのだ。
気を引き締めて、警備に当たらせろ・・・。」
「王立騎士団だけでは心もとないので、魔術騎士団の何隊かは王城警備へと回しましょうか?」
「・・・頼む。あれでは、警備の意味もない・・。犬を置いた方がマシだ。」
「畏まりました。直ちに、副団長ルードリフに伝えて参ります!!」
クレイドルは、すぐにアルベルトとアレクシスから離れ、王城の端にある魔術騎士団の詰め所へと向かった。
あり得ない・・。
こんな大切な日に。
この国は平和ボケしすぎなのだ。
いつあの国に寝首をかかれても可笑しくない状況なのに、それを理解している者は
果たしてどれぐらいいるのだろうか?
蒼い瞳が厳しい色味を帯びる。
漆黒の魔術騎士服に青いマントを羽織り、金色の髪を輝かせた王子は深いため息をつきながら
目指す聖堂へと足を速めた。
「遅いわよ、アルベルト!!何してんのよ・・・。あんた王子でしょう!?」
同じプラチナブロンドの髪を編み込んで纏め、美しい青いドレスに身を包んだ母と似た美貌を誇る
姉と、シルバーの髪に金色の瞳を持つ美丈夫の姿を捉えた。
「久しぶりだね、アルベルト殿下。また凛々しくおなりになられたね。
エリカも・・、久々に会ったのだから、弟君にもう少し優しく声掛けをしたらどうかな?
騎士団長も務めてるとあれば、アルベルト殿下も色々とお忙しいんだろう・・。」
夫の甘い笑顔に、姉はデレていた。
「相変わらず、顔に締まりがないですね・・。お久しぶりですね、姉上!!
厳(おごそ)かな式典の前に「今日もうちの旦那は素敵!!」とか、阿保っぽい心のダダ漏れは聞きたくないです。」
「・・・もう!相変わらずね、アルベルトは可愛くなーい。」
苦笑いのサフィールと、怒り出す姉のいつものツーショットに、アルベルトは緊張を解いた。
壇上の裏側に集う、シェンブルグの王族とルーベリアの王族が並び立っていた。
「・・アルベルト、初めても良いか?」
厳粛な聖堂で、背の高く引き締まった体躯のカイザル王が澄んだ声で囁く。
母である王妃も、嬉しそうに父の隣でいつもの優しく美しい微笑みを浮かべていた。
頷いて、返事をしようと父の方向を見つめた瞬間に、聖堂の窓が一瞬大きな光に包まれた。
「・・・なんだ、この光は!?」
その眩い光に瞳を凝らして、蒼い大きな瞳を揺らした。
カイザルも、その眩い光に気を引き締めた顔で窓の外を見上げる。
母の側にいたリリア女王と、サイラス王配殿下も緊張の面持ちで窓の外を見た。
サフィールは、エリカの腰を抱き自分の方へと引き寄せる。
ザワッと揺れた聖堂内の参列者は、不安な様子で周りを確認する。
魔術騎士団と、王立騎士団たちは表情を引き締めて鞘の近くに手をかけた。
緊張した面持ちで、王族や、参列者の側へと駆け寄る。
もう一度、今度は聖堂の天井が光輝いた。
アルベルトは頭上を見上げた瞬間、空から降って来た影に驚いて大きく目を見開いた。
「・・・うっわあぁあぁあああ!!!」
「きゃあぁぁぁああぁああああ!!!」
<・・・・ドサッ。>
光の中から、自分の目の前に茶色の瞳を大きく開けた、見たこともない恰好の美しい女性が空から降ってきたのだ。
僕は彼女を見た瞬間に、自然と、自分たちの敵だとは思わなかった。
咄嗟に腕を広げて、その少女を受け止めたが強い衝撃に耐えられずに床へと投げ出される。
「・・・ンッ」
「..ッ。」
式典が執り行われる時間の僅か数秒前の刻・・・。
アルベルト王子殿下の元に、光に包まれた一人の少女が天から降って来た。
聖堂の赤い絨毯の上に重なるように倒れた。
カイザルもルナも・・。
その場にいた出席者の皆が、目の前の光景を呆気に取られた表情で見つめていた。
大きな王子の体の上に、覆いかぶさった少女の唇が、青い瞳を大きく開けた王子のその唇と重なっていた。
柔らかく、甘い唇の感触に驚いたアルベルトは目を大きく見開いて目の前の茶色の瞳を捉えた。
同じように、大きく見開かれた瞳を揺らした少女は眉を寄せ、その瞬間、驚きよりも嫌悪の眼差しを向けた。
動けない体と、唇から熱くなる鼓動にアルベルトの頭は混乱と、現実の認知が追い付かなかった。
その場に集いし者達は、目の前の光景に驚愕の表情を向けていた。
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