二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

やっぱり治りませんでした①

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光の中から抜け出た美月は、急に心もとない空間に身体を投げ出された。

慌てて手足を動かすも、ニュートンの法則の原理に従いすんなりと地面へと落下する。

私の真下には、立ち並ぶ豪華絢爛なドレスや見たことのない騎士服を纏った人物が立ち並んでいた。

「きゃあぁぁぁあぁああぁ!!!」

ちょっと・・!!
銀猫!?

何処に落としてんのよ!?

涙目になりながら、私の真下にはプラチナブロンドに、青い瞳の美形が立っていた。
咄嗟にその人が腕を広げて私を抱き留め・・後ろへと倒れた。

痛みは殆どなかったのだが、目の前には青い瞳が大きく見開かれていた。
唇には少し硬めの引き締まった肉感、そして人の熱があった。

重なる唇と唇に驚きながらも、固まって動けない現状認知が難しい状況で私は触れた唇にカッと眉を顰めて、剣呑な瞳を向けた。

ガバッと体を起こして、一言その信じられないような美形の男を怒鳴りつけた。

「・・・今の、ノーカウントだから!!!・・今のは事故!!・・接触事故だから忘れて!!!」

「・・な、なんだ・・。あんた、何言ってるんだよ?そっちが勝手に食らいついて来たんだろ!?」

真っ赤な顔で起き上がった男性は、右手で唇に触れていた。

私を押しのけた、大きなビー玉のような青い瞳が激しく揺れていた。

2人の様子に驚いた王族たちは、呆然とその場で喧嘩をしだす美月とアルベルトを眺めていた。

「あああっ・・・。ごめんごめん、美月!・・変なとこに落っことしちゃったね。大丈夫?」

「イムディーナ・・。変なとこって・・。」

私の下にいた男性が不本意そうにごちる。

見知らぬ男性が後ろのドアから慌てた様子で登場し、私に急に謝りを入れる。

私は、理解できない頭を整理するも鋭い視線を各所から向けられパニック状態に陥っていた。

「・・・あなたは誰?」

 「にゃあぁぁん。」

銀色の猫がその場に現れた。

その猫をそっと腕に抱き寄せた、黒髪に金色の瞳を持つ青い紗の不思議な出で立ちの男は、さっきまで一緒だった小さな器を抱え、穏やかな表情で微笑んでいた。

「銀色の猫!?貴方が私を此処に飛ばしたんですか?・・・お尻は打ったけど、大丈夫です。」

「そうか、着地点まではちゃんと配慮してなかった。ごめんね、美月・・。」

頭をポリポリかきながら、不思議な出で立ちで清いオーラを放っている男性は苦笑いを浮かべた。

「・・アルベルト!?ちょっと大丈夫?あんた、顔が真っ赤なんだけど!?」

同じブロンドの髪の美しい女性が、さっきの唇泥棒に話かけていた。

赤くなってこちらを睨み付ける男は、慌てた表情でプイっと顔を背けた。

その名前に私は驚いて素っ頓狂な声を上げた。

「・・アルベルト!!?あなたアルベルトって言うの?私のパパと同じ名前じゃない?」

私の言葉に、唇泥棒と、ブロンド美女は驚いてこちらを見る。

それよりも、そのブロンド美女によく似た落ち着いた雰囲気の女性が緑色の瞳を揺らしてこちらへと
走り込んで来た。

その猛烈な勢いに驚いた私は、数歩後ろへと後ずさりをしたが間に合わなかった。

「貴方!?・・・まさか、アルベルト様の?えええっ!?まさか、エリカとアルベルト様の娘なの!?」

その言葉に、後ろで黙って見つめていた黒髪に、青い瞳の物凄いオーラのある男性が驚いたように私を見た。

そしてもう1人、ブロンド美女の隣に立つシルバーの髪の美形も金色の瞳を激しく揺らしていた。

「私は美月=ハツネ=ベルナンド。父はアルベルト、母はエリカと申します。兄と弟が・・・。」

そう口を開いた瞬間、ブロンド美女(落ち着いた方)にガシッ!!と強い力で思い切り抱き着かれて
ふらりと体を揺らした。

「・・・嘘でしょう?まさか、アルベルト様とエリカの娘さんに会えるなんて・・・。
この日に・・。貴方を神様が遣わしてくれるなんて・・・。想像すらしたことがなかったわ。」

震える声で、私を抱きしめた女性は涙を浮かべている様子だった。
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