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異世界。
やっぱり治りませんでした②
しおりを挟む「父と母を・・・。アルベルトとエリカを知っているんですか?」
「よく知っている・・・。アルベルトは私の幼馴染で、素晴らしい王子だった。」
カイザルがそっと優しく微笑み、私の元へと歩みを進めた。
「私の名前はエリカ。貴方の賢い母上の名から貰ったのよ?
そこにいる弟の名はアルベルト・・・。
貴方の勇敢な父上から頂いたの。本当に、生きていてくれたんですね・・。
アルベルト王子殿下が。」
「はい・・。父と母は幸せに暮らしてます。笑顔を絶やさず、仲睦まじく。」
緑の瞳をくしゃっと細めてほほ笑んだその女性は女神のように美しかった。
その言葉に、金色の瞳に涙を浮かべた銀色の髪の美形が眉根を寄せて嗚咽していた。
ブロンド美女は、その男性に寄り添い、優しく何か言葉をかけていた。
私は、父と母を知っている人たちに急に親近感が沸いた。
本当に、父と母がこの世界で生き、それだけこの人たちの心に生き続けていた事が
嬉しかった。
「今から、その2人の功績を讃えたシェンブルグ王国の再建国の式典を行うところだ・・・。
どうか、一緒に見ていってくれ。」
「式典?私が・・。いいんですか?」
「勿論よ。貴方に参列してもらえたら、私たちもどれほど嬉しいか・・。
積もる話もあるから式典の後で、ゆっくりお話ししましょう。」
「私も、色々聞きたいわ!!貴方のお母さまによく似てると言われるの・・。
お母さまのお話しを教えてね!!」
そう言ってほほ笑むと、式典の進行を促した。
少し遅れた式典は恙(つつが)なく幕を開けた。
私は、壇上の影に立ちながら舞台の袖からその式典の様子を見渡していた。
「あの・・。ところで皆さんは?・・何者なんですか?」
式典?
建国って・・・?
庶民じゃなさそうな身振りと品のある言葉遣い。
王子であった父のお知り合いと言うことは・・・。
「僕は、アルベルト。・・このシェンブルグ王国の王子だ。
あの壇上の上で王座に座っているのは、父であるシェンブルグの王カイザル、隣は母であるルナ王妃になる。初めまして、美月・・・。
君が、僕の名の由来となったアルベルト王子の娘だったなんて。」
「嘘!?」
パパの名前を受け継ぐ子。
唇泥棒が、王子様ぁ!?
えええっマジですか!?
「・・あなた、本当に王子様なの!?唇どろ・・あ、アルベルト王子と呼べばいい?シェンブルグ王国って、父の育った国はルーベリア王国と聞いたんだけど・・。」
「・・・唇泥棒はお前だろ?さっきから、失礼な奴だな。ルーベリアは隣国だよ。今日の式典にも、ルーベリアの女王と、王配が参列しているよ。女王は、アルベルト王子の妹だったリリア様だ。」
頬を赤く染めて、私を睨むこの王子は私の言いそうになった言葉を理解していた。
「さっきからって・・。なんで全部ダダ漏れなの?」
「人の心が読めるんだ。ここは魔術の国・・・。様々な力を持った者がいる。
僕も物を実体化させたり、様々な攻撃魔術が使える。」
「魔術!?魔術の国・・・。すごいっ!!格好いいわね。
どんな魔術が使えるか、後で教えてよ!!」
空飛べるのかな?
炎を操ったり、凍らせる魔法とか・・・。
あっ、そうだ!!
病気も魔術で何でも治せるとか!?
すごいっ!!
キラキラした瞳で見つめる私を、びっくりしたような、驚いた顔で見つめたアルベルトは
さっきまでの訝し気な瞳ではなく、優しい瞳で微笑んだ。
「どんな魔術が使えるか気になるの?空が飛べるか・・?
ああ、馬を使えば飛べるし、念力でも飛べる者もいる。
ははは・・。杖は使う者もいるが、僕はタクトを使っている。
あんた!!子供みたいに好奇心旺盛だな・・・。質問ばかりが溢れて来て、全部答えきれないよ。」
「ああっ、ちょっと!!いちいち読まないでよ・・。1つずつ質問するから、1問1答で、答えてください!!」
頬を膨らまして、睨みつける。
「あははは!!無理だって、死人は生き返らないって。それは魔術じゃなくて、神の所業だろ!?」
「・・・いいじゃない!!出来るかもしれないでしょう?もう。さっきから笑いすぎよ!!」
そう言ってそっぽを向いた美月を見ながら、声を上げて笑う王子の様子を、
姉のエリカと、サイラス、エミリアンが嬉しそうに見ていた。
恐ろしい物でも見るような表情で見ていたアレクシスとクレイドルは、顔を見合わせて同時に
同じ言葉を声に出した。
「・・・・アルベルト王子が、女性と話して笑ってる。天変地異の前ぶれだな。」
アルベルトの宣誓の出番になり、エリミアンが彼の元へと歩みより小声で出番を伝えた。
「分かった。」
そう言って、壇上を玉座に向けて歩み出すと客席から歓声と黄色い声が聞こえた。
澄み切った張りのある声と蒼い瞳を賓客に向け、堂々と挨拶する様子を見て威厳と
落着きを湛えたその堂々たる素振りに、私は驚いて目を見張った。
「美月様お疲れでしょう?どうぞこちらの椅子に・・。」
クレイドルが、そっと私の側に来て恭しく手を引きそっと指に触れた瞬間に、私は全身に痒みと赤みが駆け抜ける。
青ざめて、目の前が真っ白になった。
最悪だ。
忘れてた・・。
私、男性に触られるのダメだった・・・。
ドサッ・・。
その場に倒れた私は、そのまま意識を失い王城へと運ばれたのであった。
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