二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

夢から覚めたら①

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「・・・死んじゃ駄目だよ。」

ビクリと震えた私の背中に緊張が走る。
現実感が戻って来た私は、その目の前に広がる高さの景色に足が竦みそうになっていた。

冷たい風が吹いていた秋の頃。
少し遠くを見ると飛行機が飛んで行くところだった。

「貴方には関係ないじゃない!!放っといてよ!!!」

思い出すのは、私の瞳の色を侮蔑の笑みで揶揄う男子生徒達の楽しそうな姿だった。
転校したての私は、上手く日本語も話せず、発言を促されても緊張で固まってしまうことが多かった。

そんな私を馬鹿にしたように笑う声・・・。

日本語には随分と自信があった筈だった。
だけど、母国語のようには流暢には上手く話すことが出来なかった。

ぎゅうっと目を閉じて、心もとない足元に強い風が吹き付けてふらりと体のバランスを崩した。

そんな時、腕に激しい衝撃が走り、体が急に強い力で支えられた。

ガシッと掴まれた腕はとても温かく、私は驚いてその手の主を見上げた。
柵を乗り越えて、私の腕を掴んだ少年の瞳は痛みで揺れていた。

「貴方・・・。手から・・血が・・・。」

ポタポタと滴る血に、私は大きく目を見開いて屋上の階段の方へと視線を走らせた。
そこには、抜かれた点滴と、倒れた点滴台の滑車がカラカラと回っていた。

「僕は大丈夫・・・。それよりも、どうして死のうと思ったの??」

「私の瞳の色が・・。気持ち悪いって・・・。
そんな目で見るなって・・殺されるって揶揄われて・・・。」

落ち着いた黒目がちのその男の子の瞳を見た瞬間、私の瞳に熱い涙が浮かぶ。

私の青色の瞳を真正面から見つめた少年は、信じられないくらい優しい瞳で笑った。

「馬鹿だな・・・。こんなに綺麗なのに。まるで宝石みたいじゃないか・・・。
空を映したような美しい宝石みたいに綺麗だよ。
遂に、僕を迎えに天使が来たのかと見間違えちゃったくらいだ。」

「・・・何言ってるの??そんな訳ないじゃない・・。貴方、視力悪いの?」

同情でも、嬉しかった。

私の頬に涙が一筋伝うと、それをそっと拭う長い指にドキッと心臓が跳ねた。

私よりも多分、年上のその少年は私の瞳をジッと見つめた。

「視力は悪くない・・。心臓は悪いけどね。君の瞳の色は、見たことないくらい綺麗だ。」

そう言って、パジャマ姿の少年は微笑んだ。

その眩しい笑顔に、高鳴る心臓の音と胸が苦しくなるような痛みを。

私はその日、初めて覚えた。





「・・・づき!!おい、美月!!!しっかりしろよ!!」

目が覚めると、目の前には槐色(えんじいろ)の天蓋が広がっていた。

・・・ん?

何故、目の前に天蓋!?

あれ、私・・・。
さっきまで式典会場にいたような・・。

私を瞳に怒りの色を浮かべた、端正なお顔が見下ろした。

「なんだ!!良かった・・・。目が覚めたのか・・・。」

アルベルトが、眉間に皺を寄せて、ため息をついた。

アルベルト王子?何か怒ってる?
・・怖っ!!

「おわっ!!?アルベルト王子!?」

ガバッと、ベッドから急に起き上がる。

そうだ!!
私、倒れたんだ・・。

つい油断して、男性恐怖症のことを忘れていた。

背中に冷たい汗が走った。

「・・おわっ。じゃないよ、全く。
急にクレイドルに指先を触られただけで気絶って・・。一体、何処の深窓のご令嬢だよ・・。」

むうっと頬を膨らませた私は、プイっとアルベルトの視線を交わしてそっぽを向く。

「男性に触られると、気絶してしまうんですよ!!そういう病なんです!!!
私、とってもデリケートなんですから!!!」

「あのさ・・。僕の上に乗っかったり、唇を奪ったくせに気絶しなかったじゃないか?」

驚いた顔で私を見つめるアルベルトは、至極当然の発言をした。

私も同じく驚いた。
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