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異世界。
現れた剣。
しおりを挟む-ルーベリア王城・上空―
魔法石を握りしめて、赤い瞳を天に向けて祈る者がいた。
自分のせいで、自分の弱さのせいで消し去る事を心から望んだ世界。
全てを憎んで、この世界が存在しなければ苦しまないとそう思っていた・・。
魔力がなくても、自分の価値は変わらないのだ。
自分だけに能力がないことを恨んで、全てを他人や世界のせいにしていた。
私には、魔術はなかったが剣術や策はある。
コンビクションタワーの発射装置をいじっていた科学者の様子も見ていた・・。
「・・・そうだ。発射装置に介入すれば・・。
撃たれてからは無理でも・・。
装置事態を・・。あのブラックホールの時と同じように破壊すればいいのか。」
イムディーナが先ほど言っていた、元シェンブルグの王妃だった祖母の呪いが解けるのなら
イチかバチかの可能性に賭けてみようか・・。
金色の光を輝かせて、防御魔法を繰り出したイムディーナの肩を掴んだ。
驚いたイムディーナに、強い瞳で懇願する。
コンビクションタワーの最下層まで、私を飛ばしてくれと・・。
<異世界から来た姫よ・・。
お前と同じ志を持った者が、最下層に現れた。お前もそこへと我が力で飛ばそう・・。>
天井からの声に私は、耳を疑った。
目を白黒させている内に、目の前に光り輝く細身の金色の長剣が現れた。
眩い光の中で、ムーンストーンが嵌められた貴重な細かい細工の施された剣。
< 聖剣 オートクレールだ。>
ゆっくりとその剣を手に持つと、羽のように軽い。
だけど、1つ手前にあった足場の石を突くと一突きでその岩が砕けて沈む。
嘘・・・。
この剣、ただ者じゃないわ。
「聖剣 オートクレール・・。神様、有難うございます!!必ず、阻止してきます。」
ふわっと光が天井から刺し、私の体は水の間から消え去る。
次の瞬間には、真っ暗な機械だらけの階層へと到着した。
漆黒のコントロール装置に、タイマーが時をカウントしていた。
この機械の接続先を見ると、遥か先の大きな発射台への筒へと繋がっていた。
黒い鉄性の、パネルにある機械に手を伸ばすとバチッと激しい電撃が体を駆け抜けた。
「・・・痛いっ。魔法壁で守られているの??これ・・。」
痺れた体を起こして。カウントのタイマーを見た。
あと30秒を切る所だった。
「魔法壁解除!!」
見えない空間が歪み、一気に目の前の透明な壁が消え去る。
「・・・消えた??」
私の背後から、見知った声が聞こえた。
驚いて振り向くと、赤い瞳を揺らし息を荒く吐いたアレクシスの姿があった。
「美月・・・。君も来てくれたんだね・・。有難う。その装置を破壊しに戻った!!」
「うん!!私もその為にここに来たの。」
赤い瞳を細めて、発射管理の装置へと走りこむ・・。
黒い鉄製の機械の中には、コード装置が無数に配列を組んでいた。
「・・これ、私たちの世界でも作れる人間は少ないわ。複雑な設計すぎて・・。」
「異世界を越える者の流入があったようだね。君たちだけでなく・・・。」
アデルの言っていた教授に違和感を覚えていた・・。
だけど、今はそれどころじゃない。
止めなきゃ・・!!!
私は、シールドの先にあった分厚い鉄の扉を難なく、聖剣オートクレールで真っ二つにした。
「すごい!!その剣、この分厚い扉もぶった切れるのか!?」
身を乗り出して驚いたアレクシスに、薄く笑って頷いた。
「神様が授けてくれたの。聖剣オートクレールよ!!
これなら、あの信じられないくらい厚い鉄壁も、機械のコードのまとまりもぶった切れるわ。」
驚いたアレクシスは、大きく頷いてその先の回路をぶった切り始めた。
私は、発射装置へと繋がる無数のコードを剣で切り裂いた。
「最後ね・・。このコードを切れば・・。」
私は、最後のコードを剣で切断した。
ブチィィィン・・・。
カウンターのカウントは8秒前で点滅していた。
そのカウンターはそれ以上、時を刻むことをしなかった・・。
発射音は、数分経過しても鳴り響くことなく静寂な空間に緊張感が緩んだ。
「嘘・・。止まったの??」
呆然とした私に、アレクシスの赤い瞳が見開かれた。
泣きそうになる私の肩を強く掴まれて、思い切り揺すられる。
「・・・・やったぁ!!美月、やったぞ!!!」
アレクシスが、嬉しそうに私に思い切り抱き着く。
私も、ホッとして地面へと座りこみそうになった体が支えられた形になった。
「うん!!!発射直前で止められた・・・。すごいよ、有難う。アレクシス!!」
泣きそうになる瞳を揺らして喜ぶ。
次の瞬間に、コンビクションタワー内はぐらりと揺れだす。
<「自動倒壊装置、発動・・・。」>
激しい揺れに驚いた私は、上を見上げた。
倒壊までも・・コントロールしていたの・・・。
アルベルディアの王都「アリアドネス」が爆発に巻き込まれる。
「・・・この建物が倒壊する。アレクシス!!!・・・急いで逃げなきゃ!!」
「何でだよ・・。折角、発射を防いだのに・・・。」
ガシャーン・・・。
「きゃあぁぁ!!・・・アレクシス!!
ここのタワーの出口は、何処にあるの!???」
上から落ちてくる、建物の柱や、ライトを避けて走る。
「ここは最下層だ・・。一階の入り口まで3層上がる必要がある。
・・・倒壊のスピードから・・。多分、出口まで持たないよ。」
「そっか・・。それじゃあ仕方ないね・・・。」
悔しそうに、眉を顰めたアレクシスに私は悲しそうに笑った。
この世界は守られたんだ。
大切な人たちも、この世界で暮らす民たちも守られた・・。
それで十分・・。
グラッと大きく床が崩れ出し、上から大きな柱が自分の頭上目がけて降ってくる。
もう駄目だ・・・。
ぎゅうっと強く目を閉じて、衝撃を待った。
・・・あれ???
痛みや、衝撃が来ない・・・。
いくら待っても私の体にはその衝撃が来ない・・。
不思議に思って、目を薄っすら開ける。
目の前で金色の光が輝いていた。
アレクシスの右手から、金色の防御壁(シールド)の光が放たれる。
丸い球体の中で守られるように、その防御壁(シールド)ごと空へと浮かぶ。
ふわりと、落ちてくる壁や、照明、柱が当たってもその金色の光は全てを跳ね除けて浮上する。
「ア・・、アレクシス!??これ・・。この金色の光は、神力・・!?
魔法石の力じゃないわ!!これ、貴方の魔法じゃないの??」
驚いた私は、隣で必死に光を操るアレクシスを見た。
「・・・うん!!あの時、君だけでも守りたいと思ったんだ。
守れる力が欲しいと・・あの時、強く願ったんだ!!
やったよ・・。魔法、初めて・・魔法が使えた!!!俺の、俺だけの・・魔法だ!!」
嬉しそうに、顔をくしゃっと微笑んで涙を流した。
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