転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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異世界

婚約者候補の競演。

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しっかりと結び目がついたカーテンが、窓の下に向かって投げられた。

地面に大きな結び目が着地した事を確認する。

「・・よし、行くか。」

おっこいしょ、と身を乗り出す。
二階の部屋からそのカーテンへ跨り、スルスルと下へ滑り降りて行く。

丁度、中間ぐらいの距離に差し掛かった時に、頭上から声がした。

「セレーナ!!!なん・・何て格好をしているんだ!?」

「げっ・・。お、お父様・・。ど、どうなさいましたか??」

頼りなくぶら下がった姿勢のまま、セレーナは父に笑いかける

「お前が何してるんだ!!今日はランドル様の婚約者候補の選抜が行われる招集日じゃないか?!
あっ、乗馬服なんて着てっ・・何処に行くつもりだ!?」

スルスルと私が一階に降り切る前に、父が凄まじい勢いで2階の部屋から駆け下りて来ていた。

「昨日の夜に逃げとけばよかった・・。」

ブツブツと呟く私に、八の字眉をした父がしゅんとした表情で見つめる。

「・・・不本意かもしれぬが、決まった事なのだ。
お前のその瞳に合うであろう、クリーム色の光沢のあるシルクタフタのドレスを用意しておる。
皆に度肝を抜かせて、競うのも烏滸おこがましいがましいと思わせてやってこい!」

「だったら乗馬服でも良いですかー?着替えるのが面倒くさいです。」

「・・・やる気なさすぎるぞ・・。
舞踏会より本が好きなお前には酷だろうが・・。
でもな、ランドル様はこの国で一番色気がある男だぞ?!
王太子様を抜いて、抱かれたい男NO1!そんな男の妻になりたいとは思わぬのか?!」

「お父様・・。それはいけません!!そんなモテ男は、リスクが高すぎますわ。
私は、女が群がる男よりも、みんなが見向きもしないような男の方が好ましいのです。
刃傷沙汰とか、ストーカーとか・・。二度とごめんですもの!」


「むう。だが、セレーナは誰でも嫌って言いそうだがな。そうだ!!
この際、もし婚約者候補の集いに参加したら何でも言うこと聞く!
頼む・・・!セレーナ!!」

「本当ですか!!?もし、婚約者候補の招集に行ったら、3か月後の魔術師団の入団テストを
受けさせてもらえます??」

私はキラキラした瞳で、父にお願いのポーズで頼んだ。

「なんだと!?ま、魔術師団に入りたいのか?初耳だぞ?!」

「だって!魔術師団は無理に結婚しなくて良いのでしょう?
何よりも、強くなって、自分の身を守れる力が欲しいのです。
なので、もし、この招集に参加したら入団テストを受けても良いですか?」

確実に逃げ切りそうな娘の様子を見て、公爵は・・渋々了承したのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

青い尖塔とドーム型の屋根が一際豪華さを称えていた。
巨大なお城が遠くに見える、そこから500メートル程前の門に馬車が着けられる。

門の前に立つ警備兵が、遥かに見上げる高さの城門を速やかに開ける。

尖塔の先は芸術的な彫刻が各所に刻まれ、その邸だけで世界遺産のようだった。

「え・・!?・・こ、ここですか?」

うちの邸も宮殿かと思ったけど、ここはまた更に桁違いのスケールだった。

「そうだ!!ここが、クラリシッド公爵家の邸になる。
おっ、もう他の令嬢達の馬車も着いているようだぞ・・・。」

ぽかんと大きな口を開けている私を置いて、そそくさと邸の中へと父は入って行った。
パールとリボンで装飾された、イエローのシルクタフタのドレスを身に纏い。
髪はふわふわの巻き毛を垂らしてアップスタイルに纏めていた。

アクセサリーは瞳の色と同じ、エメラルドの首飾りとイヤリングを着けていた。

エントランスホールへと入って行くと、大きなシャンデリアの数々が目に入る。
まるで王が暮らす城のような豪華さに、私は度肝を抜かれて見上げていた。

「あら、セレーナ様だわ!!」「まぁ!!今宵もお美しいですわぁ!!お久しぶりです。」

装いもゴージャスな令嬢2人が、こちらへ駆け寄って来た。

確か、金色の髪にブルーの瞳、ドレスがパープルをお召しの方は、ロレーヌ様。
黒い髪に、黄色の瞳、ピンクのドレスをお召しの方がメルダ様ね。

ローザから、事前に特徴と、性格を聞いていたのですぐに分かった。
・・予習は大事ね!!

粗相がないように挨拶をしていると、階段の上からこちらに向かって降りて来る足音が聞こえた。

ふいに階段を見上げて、その人物の顔を確認した瞬間
・・・私は固まった。

「あらっ、ランドル様よ!!お招き有難うございます!!お目にかかれて嬉しいですわ。」

「ランドル様、本日はお招き下さいまして有難うございます。」

2人の令嬢の声が心なしか、先ほどまでより1トーンは高くなった。

私はその男性を見なかった振りをして、静かにジッと大理石の床を見ていた。

「平常心、平常心・・。気のせい、人違い、あれはドッペルゲンガー。」

ブツブツと唱えてみる。

その男性は階段の下へ、令嬢達に挨拶をしながらゆっくりと降りて来た。

美しい紺のスーツに身を包んだ、黒髪に紅い大きな瞳。
その目の下にある黒子・・。

嫌な予感がした。
ついでに寒感もした。

下を直視している私の目の前で、ピタリと止まる。

「やあ、セレーナ。数日ぶりだね。・・二度目にお目にかかります。
本日はようこそ我が邸へ。公爵家嫡男、ランドル=クラリシッドと申します。」

・・・最悪!!!

あのキス魔がランドルだったのね。
抱かれたい男NO1じゃなくて、破廉恥男NO1じゃない!

他の令嬢達は、ランドルの壮絶に色気のある笑顔に、腰が砕けそうになっていた。

「・・、私はセレーナ=アルベルディアと申します。
本日は、ご招待頂きまして誠に有難うございました・・・。」

むすっとした表情で、礼を取る。

ランドルは嬉しそうに、私の側でコソッと耳うちする。

「よく、今日は逃げなかったね?・・・君は脱走するか、仮病でも使うかと
思ったよ。」

「・・・窓からカーテンを垂らして、脱走しようとしたら、父に見つかってしまったのよ。
本日は、不本意ながら参上致しましたわ。」

キッと、距離を取って緑の瞳で睨むと、嬉しそうに紅い瞳は私を見下ろして見つめている。

二人の世界に、他の令嬢達の顔色がサッと変わり、間に入って来た。

「ランドル様!!本日は婚約者候補をお邸に召集して、どうなさるおつもりなのですか?」

「選考はどのような物を考えておりますの?!」

メルダもロレーヌも、必死に自分の美しい姿を見てもらおうと
上目使いでランドルを見ていた。

ランドルは、くすりと笑って、こちらをチラリと見ると凛とした澄んだ声で告げた。

「本日、私が・・ここに婚約者候補のご令嬢方を集めたのは、婚約者を決める為です。」

艶めいた美麗な笑顔は、まさに王子様然の風格を見せていた。

令嬢達は嬉しそうに、キラキラした瞳でランドルを見上げている。

私は死んだ魚のような表情で、ランドルの方を見た。

「私は、ご令嬢方の中で、私と一番思っている方を妻としたいと思います。」

他の令嬢達は、その言葉に驚きを隠せず真っ青になっていた。

自分たちは、婚約者の招集を聞いた日に、大喜びした様子をランドルに知られている事は知っていたのだ・・。
今の今まで、婚約者候補として選抜され、集められる事を喜んだ事は、選考にプラスであると思い込んでいたのだった。

もっと真っ青・・いや、真っ白になっていた私に、嬉しそうにランドルが囁く。

「あの日の続きをしょうか?・・・未来の奥さん。」

艶めいた紅い瞳で微笑みかけるランドルを見ながら、茫然と立ち尽くしていた。

世界の終わりを感じた。

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