転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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シーグラルド公国編

潜入!グロームスコーピオン。

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チュンチュン。

窓のすぐ傍で鳥の鳴き声が聞こえた。

ガバッ・・!!
と思い切り起き上がると

ゴスッ・・。と低い音がした。

「うぐっ・・・。」

「あ、ごめんなさい。・・毎朝すみません!」

いつものように、隣に眠る男性にエルボを見舞ってしまったようだった。

「おはよう、セレーナ。よく眠れたんだね。」

幸せそうに、半裸の状態で私へと手を伸ばす・・・。
頬にキスを落とし、幸せそうに頬を擦りつけた。

「はい、ストップ。それ以上は犯罪です!」

ぶうっと膨れた顔のアリストラドは、少し寂しそうに笑う。

「セレーナは、くっついていたくないの?まだ、ランドルが忘れられない?」

「そうですね。・・・ぶっちゃけてしまうと、全然忘れられません。」

そう言ってクスっと笑うと益々頬を膨らまし、悲しそうにため息をつく。

「いっそ、私と寝ちゃえば忘れられると思うんだけど。
・・・自信あるけど、今からどう?」

「アリストラド様は私の体が欲しいのですか?」

「うーん。心もどちらも欲しいよ?先に体からでもいいんじゃない?」

そう言いながら私の夜着の裾を引っ張った。

「起きますね。お互いお仕事に遅れますので!」

毎日の日課のように交わされる押し問答になっていたのだった。

何だかんだでアリストラドは、体を無理やり繋げる事はしないのが不思議だった。

あんなに強引に奪いそうな雰囲気だったのに・・。

私は、彼との生活にいつの間にか馴染んでいる自分に驚いていた。

アリストラドは、朝食を食べると邸を出ていき夜遅くに転移して戻る。

組織のメンバー達は屋敷の中で鍛錬に励む者、研究者と共に研究に励む者と、各地にばら撒かれ諜報活動や暗殺を担う者に分かれているようだった。

「ねぇ、ランベール博士・・。その機械、完成したらどうなるのですか?」

「そうだなぁ・・。
地殻を刺激し、地震を起こす超振動の機械だから。・・滅亡だな!」

私はサーッと顔が青くなる。

笑って言うなよお爺ちゃん!!と突っ込みたい。

いや、本当にジェンダリン=ボマード博士の頑張りに期待したい。

私が攫われて、本当に良かったわ・・・。

「セレーナ、邪魔しちゃ駄目だよ?
アリストラド様にお仕置きされちゃうよ?」

心配そうに、私を見張るエミールの言葉に更にサーッと青ざめる。

「アリストラド様って変態よね?!怖いくらい厭らしいのよ!!
この間なんて、スケスケの夜着着せられてね・・。そんで・・。」

「上官の性癖とか聞きたくないから!!女性なんだから慎みを持ってよセレーナ・・!!」

「そう・・。ごめんね。
でね、いきなり写真を撮ろうとしたの!!
もう、変態極まりないでしょう?!」

エミールは顔を真っ赤にして、俯く。

・・・ああ。刺激強かったか。

「エミール様を虐めないでくださいよ、セレーナ様!!
純情なんですよー。アリストラド様に昔っから憧れてらっしゃるんでそんな事言ったら可哀想です。」

エミールの部下の、シフォンに怒られる。

「ああ、ごめんね。つい、いつもの魔術師団の感じで喋ってた!」

「第3師団では、そんな恥知らずな会話をなされていたんですか?」

「いえ、・・・全く。」

エミールはポカンとした顔で私を見下ろす。

その姿を見て、一同が爆笑する。

いつの間にか私は、ついつい敵陣のグロームスコーピオンに馴染んでしまっていたのだった。



夜も更ける頃、私は科学者達の論文を読み漁っていた。

「ふーん、超振動ね・・。
この原理って防衛の為にはこの振動を起こす装置の
破壊だけで行けそうだけど・・。この装置は魔鉱石で出来ているのかな。」

寝台の傍にあるナイトテーブルに置いていた紅茶のカップを取り頬張る、ウキウキとメモ書きをしていると、何時の間にか部屋へと帰ってきたアリストラドが私を見下ろして微笑んでいた。

「今日も楽しんでいたようだな?
エミールに私の性癖の話をしたんだって?」

「ブーッ・・・!!
な、なに?なんでその話を知っているんでか?!」

「いや、シフォンから変な目で見られるから、理由を聞いたのだ。
そしたら、真っ赤になったエミールが私の性癖がどうでも、尊敬しております!と言った物でな。
・・その話の出どころは、セレーナしか考えられないだろう?」

紅い瞳を楽しそうに煌かせて、顔を近づけて来る。
そんなエミールを想像して私は笑ってしまった。

その笑顔を見たアリストラドは、嬉しそうに目を細めて私を抱きしめた。

「どんな事を言われてもいい。セレーナが笑ってくれるなら、馬鹿にされても構わない・・。」

ぎゅううっと、痛いくらいの強さで抱きしめられる。

「この世界は、全てが虚構で出来ている。
何故、カルドリアと、マグダリアが隆盛しているのかを考えると腸が煮えくるのだ・・。」

「アリストラド様は、ご自身がマグダリアの王家の出なのにそう思うんですか?
しかも、カルドリアの騎士団長までされていて、しかも政変に携わり殺されそうになる
なんて・・。」

「私は、マグダリアを追われた身なのだ・・。
魔術の隆盛から科学に取って代わり
国から魔術を排除しようとした王と対立してな。
沢山の魔術師が亡くなったのだ・・・。
カルドリアへその者たちと亡命し、私は魔術師団で認められていった。
しかし、「クロニクル」に留学していたカルドリアの王兄エセルが私の婚約者だったセレーネを奪ったのだ。」

「セレーネ?!
あ、貴方は・・母と婚約していたのですか?」

「ああ、4つ上のセレーネに一目惚れをして11歳の時に申し込んだ。一目見て運命の女性だと思ったのだ・・。
マグダリアを追われた私は、公女との結婚は難しかったので仕方ないが・・。
エセルに奪われて、・・私は奴と決闘の果てに殺したのだ。
6年前、エセルの派閥の残党が私が殺した事を嗅ぎ付け命を狙ってきた。
今までの経歴も全て嘘を突き通してきた私が、ケイレブに問われたのだ・・・。」

「ケイレブ様に?!何故です?
・・・だって決闘の果ての死亡なら誰も悪くないじゃない。」

「魔術師団は私の代で第6師団までを有する大きな物になっていた。
カルドリア王家は、私が邪魔になったのだろうな。
ケイレブはただ、王令に従い、私に剣を向けた。
エセルを殺して次は誰を殺すつもりなのか・・。
これ以上、カルドリアを混乱に貶めたいのか?と。
親友だと思っていた・・。あの日までは・・。」

私は耳を疑った。
チクリと胸が痛くなる・・・。

何故この人は、こんなにも孤独な瞳を陰らせて
それでも、自分の悲しい過去を淡々と他人事のように話すのだろう。


「私達の一件で、セレーネは公女としての身分を隠し表舞台から消えてしまった。
別の男と結婚し、子を成していたのに・・後から私はセレーナの存在を知ったのだ。
私は、ケイレブに問い詰められ・・マグダリアでの身分隠したまま。
明確に答えを返せず、戦闘となり・・死んだ。」

「・・・え?死んだ?!貴方が?」

碧の目は大きく見開かれて、驚愕の表情を浮かべる私に、アリストレアは小さく微笑む。

「そうだ・・。6年前に。
しかし、私は目を覚まし息を吹き返したのだ。
別の男の魂が入り込んだこの体に・・・。
夢の中で見るその者の記憶では、彼は髪の短い・・白い服を着た君を知っていたようだ。
瞳にアレキサンドライトをもつ、桁違いの魔力をもつのセレーネの生まれ変わりである君を。
彼は科学の知識や、様々な鉱物や、力動学の知識にも精通していてね・・。
この組織を立ち上げるのにも役に立った。」


「そうですか・・・。その人は誰ですか?
何故に今から6年前に転生を・・。
時間軸のズレがあるの?
私を追っていた人なら同じタイミングで落下したのかしら・・。」

「多分、君とよく一緒にいた男だよ・・・。
僕は彼が君を見つめている記憶しか知らない。
あとは、知識や言語などの記憶・・。
自分自身の記憶については閉ざしていて、私を中に入れてくれないんだ・・。」

「そうですか・・。
私は、現世では誰かに狙われていました。
その人が貴方に入っているのなら正体を知りたい。
誰かに追われて・・転落したんです。
目を覚ますと、この世界のセレーナ=アルベルディアに入っていたんです。
全ての意識は私が持ち、彼女の記憶は全く残ってない状態で・・。」

アリストラドは驚いた表情で、私の腕を掴んだ。

「待って!!
じゃあ、本物のセレーナは完全に死んだの?」

私はポカンと口を開けて、アリストラドの言葉の意味を翻訳していた。

ええと・・。セレーナが死んで私が転生してきた・・。

しかも、セレーナとしての記憶は私は全く持っていない状態だった。

「そ・・そうなんだ!!あれ?
そういえば、セレーナの記憶って私一切ないんですけど??」

「可笑しいくないか?私の記憶の上に転生してきた・・彼がいる。
だけど私は両方の記憶を持っているよ?
・・・セレーナの記憶は眠っているんじゃない?」

アリストラドの言葉に私は、呆然となった。
セレーナは・・・バルコニーから落ちたって・・。

そう言えばメイドのローゼが言ってた!!
爆発しそうな頭を抱え、アリストラドに向かう。

「まぁ・・。いいです!!
今日はキャパが超えたので眠ります。
おやすみなさい!!」

頭から火が出そうになり、ガバリ!!とベッドに潜り逃避の為の睡眠を貪ることにしたのだった。

クスクスと笑んだアリストラドは、私に性癖を披露した事の罰ゲームとして、首元にキスマークをつけ、嬉しそうに就寝したのであった。

翌朝知らずに、エミールに「おはよう!!」と笑顔で挨拶をすると真っ赤になったエミールは遥か遠くへと全力で駆け抜けて行ってしまったのだった。
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