転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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シーグラルド公国編

決闘の敗者。

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王宮の左翼の塔。

ワインのような赤いベルベッドのカーテンが閉め切られた部屋。

光が差さぬ、暗がりの闇夜のようなその部屋に、1人の男が現れる。

金色の髪の男が車椅子を動かし、テーブルに置いてあったワインボトルを掴み手元に持っていたグラスに酒を注ぐ。


「そろそろ、セレーナ=アルベルディアと、マグダリアの王子、シーグランドの公子そして、我が魔術師団の第3師団とグロームスコーピオンの者達はあの場所に向かうでしょう。
・・・どうされますか?」

グラスから酒をゴクリと飲み干した男は、ゴツゴツした手で口元のワインを拭い、ニヤリと笑んだ。

「・・今更だ、行けば良いであろう。
セレーナ=アルベルディアが力を持った神巫女であると気づいた時からこの時を待っていた。
この国の魔術師団、マグダリアのクロニクルの英知の結晶を使い、あの神殿を破壊する。
あとは、セレーナ=アルベルディアに神の国「エストラルド」の復活を願わせるだけだ。」

「しかし、昨夜の奇襲でアリストラドをまたもや
・・取り逃がしてしまいました。」

「奴もしぶといな。何度、抹消しようとしてもまた、我らが前に出しゃばって出て来るのだな。
セレーネは奴の何処が良かったのか・・。
この私には、皆目見当もつかぬ。」

「一度消した筈なのですが・・。
しかし、昨夜セレーネ様の最期を伝えておきました。そして、セレーナ=アルベルディアの件についても。この辺りはマノロ公爵様も、隠したい事でしょうが・・。」

「マノロは、我が王家の頼みに忠実に従う者だ。
しかし、アリストラドが、それを知ってどうするか・・だな。」

「はい・・。
真実を知った上で、どう動くのかなのです。
最後は、全てをどのように、奴に被ってもらうかに尽きるのですが・・。
奴の中には、魔が化け物が入っています。
この大切な局面で、魔の目覚めが起き意識の乗っ取りとの闘いに・・苦しんでいる様子です。」

「まだ、上手く運ぶかは分からぬがな。
どう選択をしようと、魔化学の兵器で恐怖での統治をするのか、神巫女を使い・・世界を再び1つにした上で地上全ての覇権を手にするのか・・。
リスクが低い物を選べば良い。
王家など・・機能しない統治力を持ち各国に分権してしまった覇権を、我らの元へ集めるだけだ。」

「そうですか・・。では、覇権を持って貴方様は何をされたいのですか?」

「・・・決まっておるではないか。
私を選ばなかったセレーネが愛した男に惨たらしい死を与え、自害してまで守ろうとした世界を我が物にするまでだ!」

「ほう。セレーネ様の自害は、やはり貴方が強要したのですか?」


「そうだ・・。あの日、お前と私が策を練り決闘に細工をしたであろう。
アリストラドの命の取引に応じ、私の元へと参じたセレーネの腹にはすでに命があったのだ!!
屈辱に暮れた私は、マノロに下げ渡した。
後はセレーナが生まれ、マノロとの間にクリスが生まれた。セレーネは、2人の子供をアルベルディア家で育てたのだ・・。」

「セレーネ様を、・・あの神具を盾に脅したのですか?」

「お前は馬鹿か・・。
セレーネは母なのだから、子をセレーナとクリスを人質に取ったに決まっている。
神具など、あれは興味など全く持っておらんかったのだ・・。
しかし、エストラルドに着いてあの神殿から飛び降りるなど、クソッ。
最期はもしも、セレーナに手を出せば、自らが蘇り私に裁きを落とすなどと・・脅しをかける始末だった。
しかし、セレーナ=アルベルディアには幼少期にはあの力は無かったようだった。
何故、急に力が目覚めたのかが不思議なのだ・・。」


頭を垂れた姿勢で、静かに言葉を待っていた者は、グッと唇を噛んだ。

苦しそうに眉根に深く皺を刻み込んだが、この暗闇の中では相手の表情など見えなかった。

「アリストラドらの願いは「世界の消滅」であろうからな。
どうしても、それだけは阻止せねばならぬ。
この両国の兵器や武力の力を持ったまま、全てを支配するのだ。
後は、我が物にもならぬ神巫女なぞ・・用が済んだら消せば良い。」

男は、静かに腰に下げた筒に手を触れる。

暗闇の中で、流暢に喋る男に向かい魔化学の結晶である、銀色の筒から矢が発せられた。

「そうだ・・。王立図書館の襲撃なぞ、私は、一言も聞いておらぬぞ。
何故、そんな勝手な事をする。
お前は、一体いつから魔術師団を我が物のように好き勝手に使っていい身分になったのだ・・。
だいた・・ぐっ、・ぐはぁあっ・・。」

・・・パリーーーン!!

冷たい床の上に落ち、粉々に砕け散るグラスの音が静寂の中で響き渡る。

「お・・ま・・まさか・・!?・最初から・・。」

色味のない部屋で、顔から次第に生きた色を失っていく者が喚き声を上げていた。

感情の籠らぬ瞳で、その者を見つめた。

胸元に突き刺さったその矢は全ての命を吸い取り、最後はキラリと光って消滅した。

「喋りすぎだ。
・・・馬鹿だな。
お前のお陰でカルドリアの王家の掌握も、セレーネ様も1度はこちらの手に落ちた筈だったのに・・。
しかし、「クロニクル」の成果も、魔術師団の総長のポストも全て我が手中に入った。
後は能のない頭など、・・いらぬ。」


息絶えたものが、車椅子の上でこと切れていた。

嘲るような笑みを浮かべ、男は漆黒のマントを翻しその部屋を辞した。

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