平凡魔法で素敵な勇者パーティー生活

相楽 快

文字の大きさ
10 / 18
二章 魔王の憂鬱

魔王城を作ろう

しおりを挟む
やあ、魔王だ。
正確には89代目魔王、ホキンズだ。

先日の白龍強襲はうまくいった。
正直、とても怖かった。
先代も先先代も、白龍に殺されている。
それも、産まれたばかりの乳飲子のころに殺されている。

いわば、天敵。

ホキンズの部屋には、歴代魔王の肖像画が飾ってあるが、そのうち七割は赤子だ。
名前と死因が書いてある。
そのほとんどが白龍による殺害と、勇者との戦闘での死亡とある。

長寿だったのはたったの四名で、初代、二代目、三代目、そして49代目だけだ。
四代目以降は、人類と白龍が協力して強襲してきたせいで、殆どが志半ばで死んだ。


一人の骸骨が、部屋の扉を開けて入ってくる。
「のう、末裔よ。生きて帰ってきてくれてよかったわい」
骸骨は、分厚いマントを外し、椅子に座る。

「ありがとねん、ブリフ」
ブリフこそ、49代目魔王である。骸骨の姿は死後の世界から呼び戻した姿だ。
ブリフは、人類を最も追い詰めた魔王として知られている。

「わしの策がうまくはまったのう。」
ブリフは、知略に長けた魔王だった。

僕が魔王として産まれてすぐに、歴代魔王の記憶を引き継いだ。
歴代魔王の経験から、産まれてすぐが一番危険だと知った。

我がしもべ達も、辛酸を舐め続けてきた経験から、僕が産まれてすぐに、僕に成長呪文をかけた。

成長し、言葉を喋れるようになった瞬間に、ブリフを冥界から呼び寄せた。

ブリフは言う。
「魔王ホキンズ、お主の最初の選択は大正解じゃ。我らの記憶は受け継いでも、我らの知略や発想は受け継げない。だから、呼んだのじゃろ。生き残るための策戦を練って欲しいと」

「そうなのよ、ブリフ。産まれて二週間の僕には経験がナッシング。判断力も、知略も。先代も先先代も、産まれてすぐに白龍に殺された。だから、今回は成長するまで死なない策が必要だった。ブリフ、あなたの助言は適切だった」

ブリフは、骨だけの手を横に振る。
「賭けじゃった。白龍にも油断があった。次、同じ策は通じぬ。」

魔王ホキンズは不安になる。
「確かにねん。次か、どうすれば、、、」

ブリフは安心せい、と言う。
「敵の策を利用するのは定石じゃ。産まれたばかりの白龍を殺し続けるしかあるまい」

「なるほど、、、」

「攻めの面では、高速で目的地に到着できる移動手段の確立が必要じゃ。飛竜隊と、怪鳥隊、翅虫隊の整備をさせよ。そして、守の面。人間の勇者も馬鹿にできん。わしを追い詰めたのは白龍ではなく勇者だった。」

魔王ホキンズは、立ち上がる。
「部下を集める。移動に長けた隊は、魔王旅団とし編成を進めさせる。城については、58代魔王リクセパが命尽きるまで描き続けた設計図がある。その築造を進める」

ブリフは頷く。

「お主は、急速成長の代償に、寿命半分と一切の魔術が使えなくなってしもうた。誰の目から見ても、最弱の魔王じゃ」

「ああ。だから僕には最高の部下が必要だ」

「その通り。であるならば、まず、最高の部下ではなく、最高の仲間が必要と認識を改めよ。逸脱した個ではない存在が勝ち続けるには、最高の仲間が不可欠じゃ」

魔王ホキンズは頷く。
「わかった。部下ではなく、仲間。仲間はどうすれば手に入れられるのだ、ブリフ」

ブリフは椅子から立ち、言う。
「志を待て。苦楽を共にせよ。彼の幸せと成長を願え。人間の勇者のように。さすれば、必ず共感し、お主を支えたいと思う者は現れる」

ホキンズは首を傾げる。
「志?」

「お主の願い、と言ってもいい。」

ホキンズは歴代魔王の記憶を眺める。
僕の、願い。
歴代魔王は、人間が守る宝玉なるものを手に入れようとしていた。
…食指が動かない。

「僕は父になりたい。父として、産まれてくる魔王を守り、育て、安心して大きくなって欲しい。もう、僕のような綱渡りな生存競争は断ち切りたい。だから、父になりたい。宝玉は、いつか後世で欲しいと願うものに託す」

ブリフは驚き、椅子に座り込んだ。
「お主は、優しいのう。そして、いい願いじゃ。組織としても安定するのう。」

よし、乗った。
わしがお主の仲間第一号じゃ。
父親代わりにはなれんが、仲間としてお主を命懸けで守ろう。

ブリフの眼底骨から、流れるはずもない涙が流れた。



後に魔王ホキンズは、歴代最高の魔王として君臨する。
歴代全ての魔王を召喚し、全ての魔王から支持され、愛された。
未来を託された魔王ホキンズ。

そして、ボルサリーノ達勇者一行の前に立ちはだかることになる。

決して最強ではない、最高の魔王として。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...