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3話 探し物は何ですか?
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「そ・れ・でぇ~、キミの探し物とはなんだい?なんだい?何なんだい?」
「…探し物なんかしてないと言っただろ」
「カーッ!隠す必要ないじゃないか…ボクだって神の端くれだよ。願いを叶える手伝いくらい出来ると思うんだよ?それとも他の神にお願いする気かい?それは嫉妬しちゃうなぁ」
「カラスって生物はうるさくて敵わないな…」
「カーッ!カラスという生物くくりで侮辱はやめてくれよ!ボクはカラスたちに逃げられるくらいに一人で歌い踊って、あることないこと話せる自信があるんだよ!」
「ただ嫌われているだけじゃないか、このほら吹きカラスめ!」
「そうかい?ボクのホラはその筋じゃ魅力的だって有名なんだよ」
「だったら俺は筋違いだ」
橋を渡り終え、歓楽街へ続く道中。お喋りカラスの鳴き声に辟易しつつ、壱は周囲に目配せをしている。
しかし、お目当ての物が見つからないのか壱の歩みは止まらない。日は沈みかけ林道に差していた光もまばらになり、不安という感情が背中を走りそうな雰囲気に辺りは包まれた。
二つの足音とホラが林の中に静かに溶けていく。
―――やがて、二人に耳に祭囃子の音色がかすかに届き、歓楽街の熱気がそよそよと肌を撫でた。
「このままだと歓楽街に着いてしまうよ。キミはここが嫌いじゃなかったっけ?」
「ああ、ここは神どもが跋扈しているから気分が悪いからな…」
「そんなに毛嫌いしなくてもいいじゃないか。ここは神の国だが、キミの故郷でもあるのだし…」
「好きで産まれ落ちた訳じゃない」
言い捨てる壱を見やり、カラスは小さく嘆息した。
「なぁ、カラスよ…神隠しってのはどういう時に起こるんだ?」
「…神隠し?なんだい藪から棒に?それでもキミがせっかく与えてくれた問題だし、お答えするとしよう…」
焦らすように大仰な前置きをし、
「人間が神域に踏み込んでしまった時だね。でも…だがしかし言うほど簡単な事柄じゃないんだよ。まず第一に神の国に入国できるだけの清い心。その上で神域から続く迷路を越えなきゃならない」
「迷路?…そんなのがあるのか?」
「ああ。」とカラスは得意気に黒い羽を広げる。
「迷路というのは比喩だけど、暗い森の中を灯りも持たず彷徨うようなものさ。案内人でもいないと決してたどり着くなんて出来やしないんだよ」
「案内人というのはお前達の事か?…神よ?」
壱の問い掛けに一瞬驚いた表情を覗かせ、ニヤリと口角を上げた。
「さぁね…神の悪戯じゃないかな?」
「…探し物なんかしてないと言っただろ」
「カーッ!隠す必要ないじゃないか…ボクだって神の端くれだよ。願いを叶える手伝いくらい出来ると思うんだよ?それとも他の神にお願いする気かい?それは嫉妬しちゃうなぁ」
「カラスって生物はうるさくて敵わないな…」
「カーッ!カラスという生物くくりで侮辱はやめてくれよ!ボクはカラスたちに逃げられるくらいに一人で歌い踊って、あることないこと話せる自信があるんだよ!」
「ただ嫌われているだけじゃないか、このほら吹きカラスめ!」
「そうかい?ボクのホラはその筋じゃ魅力的だって有名なんだよ」
「だったら俺は筋違いだ」
橋を渡り終え、歓楽街へ続く道中。お喋りカラスの鳴き声に辟易しつつ、壱は周囲に目配せをしている。
しかし、お目当ての物が見つからないのか壱の歩みは止まらない。日は沈みかけ林道に差していた光もまばらになり、不安という感情が背中を走りそうな雰囲気に辺りは包まれた。
二つの足音とホラが林の中に静かに溶けていく。
―――やがて、二人に耳に祭囃子の音色がかすかに届き、歓楽街の熱気がそよそよと肌を撫でた。
「このままだと歓楽街に着いてしまうよ。キミはここが嫌いじゃなかったっけ?」
「ああ、ここは神どもが跋扈しているから気分が悪いからな…」
「そんなに毛嫌いしなくてもいいじゃないか。ここは神の国だが、キミの故郷でもあるのだし…」
「好きで産まれ落ちた訳じゃない」
言い捨てる壱を見やり、カラスは小さく嘆息した。
「なぁ、カラスよ…神隠しってのはどういう時に起こるんだ?」
「…神隠し?なんだい藪から棒に?それでもキミがせっかく与えてくれた問題だし、お答えするとしよう…」
焦らすように大仰な前置きをし、
「人間が神域に踏み込んでしまった時だね。でも…だがしかし言うほど簡単な事柄じゃないんだよ。まず第一に神の国に入国できるだけの清い心。その上で神域から続く迷路を越えなきゃならない」
「迷路?…そんなのがあるのか?」
「ああ。」とカラスは得意気に黒い羽を広げる。
「迷路というのは比喩だけど、暗い森の中を灯りも持たず彷徨うようなものさ。案内人でもいないと決してたどり着くなんて出来やしないんだよ」
「案内人というのはお前達の事か?…神よ?」
壱の問い掛けに一瞬驚いた表情を覗かせ、ニヤリと口角を上げた。
「さぁね…神の悪戯じゃないかな?」
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