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9話 中間管理カラスさん
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主の気持ちを熱心に感じ取って元気に高鳴る鼓動を収めるためか、壱はブルーシートから離れて木に寄りかかって遠くの盆明かりを眺めている。
哀愁漂う彼の背中に気付いたミカは心配そうにカラスに視線を流した。
「壱さんはどうかされたのでしょうか?もしご気分が優れないようなら、すぐにでも私が介抱をしてあげたいのですが…、大丈夫ですよ、こう見えて私はボーイスカウトという存在を見聞きしたことがありますし…」
「にわか知識の生兵法ってレベルでもないど素人じゃないカーッ!」
何故か妙にやる気に満ちて、壱の元へ行きそうなミカの手を引いて押さえ込むカラス。そんなカラスの姿をまじまじと見つめたミカが小首を傾げた。
「あの…カラスさんつかぬ事をお聞きしますが?」
「無駄無意味に言葉をろうさないなら答えてあげるよ…」
「はてさて…、無駄無意味とはどういう点を指しているのでしょう?私は全ての言葉に敬意と責任を込めて、自分のなかで吟味に吟味を重ねた上で言の葉に乗せて世界へ届けてみたいと常日頃考えているのですよ。ええ…あくまで目標として」
「そういうとこだよっ!質問があるならさっさとしてくれ!」
荒れるカラスの語気を意に返さず、ミカはゆっくりとした口調で応じる。
「カラスさんの背中からまるで羽のようなものが生えて見えるのですが、それはコスプレですか?飾りですか?ちぎってもいいですか?」
「ちぎんなっ!これは正真正銘ボクの背から生えてる立派な羽なんだよ」
「…羽が、生えてる?まさかこんな立派な羽が生えてるなんて…カラスさんは何者なのですか?ちなみに本当にちぎっちゃダメですか?」
「お前のその加虐精神はなんなんだよっ!?…ボクはこう見えて神の一人さ。本来ならキミみたいな子とは出会うことも話すこともないんだよ」
「…神?本当に神様なのですか?」
カラスの一言にさすがのミカも戸惑いを見せる。やっと優位に立てたのだと、カラスの表情も得意気に色合いを変えて、それっぽく振舞う。
「そう、神だよ。少しは敬意を持って接してほしいね」
「で…では、あの…お願いをしてもいいでしょう神様?」
「しょう神様って言うな…。一応、聞くだけは聞いてあげるよ」
「この出会いに乾杯しましょう。このブレンド水で」
「こんなクソ不味水を捧げんなっ!」
カラスは叫び、そのまま大きく息を吐いた。
「カーッ、もう疲れたよ」
「なるほど、神ともなると日々のお仕事の疲れがあるのですね?しかし…神様の仕事ってなんでしょう?人を殺すとか?ギリシャ神話なんかでは悪魔よりよっぽど神のほうが人を殺してるようですし…。なんてクソなんだ神って、許せませんよね?」
「お前の相手に疲れたんだよ…」
カラスの声から生気が薄れ、とぼとぼと壱の元へと進んだ。
「もうボクはあいつが何者でもいい…一旦、帰ろうよ」
カラスの言葉に壱はギョっと目を見開く。
「か…カラスよ、それは困るぞ。俺としてはせっかく出会えた人間ともっと交流を深めたい…」
「だったらキミが勝手にやってくれよ…ボクにはもう手が付けれらない」
「いや…そうしたいのはやまやまだが、彼女を前にするとどうも言葉が出ないというか…妙に心臓の辺りに痛みが走るのだ…原因不明の病気だろうか?」
(あ、こいつ…童貞こじらせてる上に、長年積み重ねたコミュ障っぷりが覚醒してる…)
暗い林の中、デカイ図体を木陰に隠してもじもじする様は異様を通り越して恐怖である。カラスは頭を乱暴に掻き毟って呆れるが、壱はそれどころではない。
「頼む、もう少し彼女と交流して人となりを探ってくれないか…その上でさり気なく俺の存在をアピールして、違和感なくとと…友達になれるように場を仕立てて欲しい」
「お前も面倒くせぇなっ!!」
哀愁漂う彼の背中に気付いたミカは心配そうにカラスに視線を流した。
「壱さんはどうかされたのでしょうか?もしご気分が優れないようなら、すぐにでも私が介抱をしてあげたいのですが…、大丈夫ですよ、こう見えて私はボーイスカウトという存在を見聞きしたことがありますし…」
「にわか知識の生兵法ってレベルでもないど素人じゃないカーッ!」
何故か妙にやる気に満ちて、壱の元へ行きそうなミカの手を引いて押さえ込むカラス。そんなカラスの姿をまじまじと見つめたミカが小首を傾げた。
「あの…カラスさんつかぬ事をお聞きしますが?」
「無駄無意味に言葉をろうさないなら答えてあげるよ…」
「はてさて…、無駄無意味とはどういう点を指しているのでしょう?私は全ての言葉に敬意と責任を込めて、自分のなかで吟味に吟味を重ねた上で言の葉に乗せて世界へ届けてみたいと常日頃考えているのですよ。ええ…あくまで目標として」
「そういうとこだよっ!質問があるならさっさとしてくれ!」
荒れるカラスの語気を意に返さず、ミカはゆっくりとした口調で応じる。
「カラスさんの背中からまるで羽のようなものが生えて見えるのですが、それはコスプレですか?飾りですか?ちぎってもいいですか?」
「ちぎんなっ!これは正真正銘ボクの背から生えてる立派な羽なんだよ」
「…羽が、生えてる?まさかこんな立派な羽が生えてるなんて…カラスさんは何者なのですか?ちなみに本当にちぎっちゃダメですか?」
「お前のその加虐精神はなんなんだよっ!?…ボクはこう見えて神の一人さ。本来ならキミみたいな子とは出会うことも話すこともないんだよ」
「…神?本当に神様なのですか?」
カラスの一言にさすがのミカも戸惑いを見せる。やっと優位に立てたのだと、カラスの表情も得意気に色合いを変えて、それっぽく振舞う。
「そう、神だよ。少しは敬意を持って接してほしいね」
「で…では、あの…お願いをしてもいいでしょう神様?」
「しょう神様って言うな…。一応、聞くだけは聞いてあげるよ」
「この出会いに乾杯しましょう。このブレンド水で」
「こんなクソ不味水を捧げんなっ!」
カラスは叫び、そのまま大きく息を吐いた。
「カーッ、もう疲れたよ」
「なるほど、神ともなると日々のお仕事の疲れがあるのですね?しかし…神様の仕事ってなんでしょう?人を殺すとか?ギリシャ神話なんかでは悪魔よりよっぽど神のほうが人を殺してるようですし…。なんてクソなんだ神って、許せませんよね?」
「お前の相手に疲れたんだよ…」
カラスの声から生気が薄れ、とぼとぼと壱の元へと進んだ。
「もうボクはあいつが何者でもいい…一旦、帰ろうよ」
カラスの言葉に壱はギョっと目を見開く。
「か…カラスよ、それは困るぞ。俺としてはせっかく出会えた人間ともっと交流を深めたい…」
「だったらキミが勝手にやってくれよ…ボクにはもう手が付けれらない」
「いや…そうしたいのはやまやまだが、彼女を前にするとどうも言葉が出ないというか…妙に心臓の辺りに痛みが走るのだ…原因不明の病気だろうか?」
(あ、こいつ…童貞こじらせてる上に、長年積み重ねたコミュ障っぷりが覚醒してる…)
暗い林の中、デカイ図体を木陰に隠してもじもじする様は異様を通り越して恐怖である。カラスは頭を乱暴に掻き毟って呆れるが、壱はそれどころではない。
「頼む、もう少し彼女と交流して人となりを探ってくれないか…その上でさり気なく俺の存在をアピールして、違和感なくとと…友達になれるように場を仕立てて欲しい」
「お前も面倒くせぇなっ!!」
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