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12話 ノコノコってなんですか?
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「こ…、ここは俺が対応するから、ミカさんはそのまま隠れていて」
そう告げると壱は、木陰から飛び出して神たちの前へ躍り出た。身の丈180センチほどの大柄な身体の壱だが、大小さまざまな異形の神を前にするとその差は大きく小柄にも見える。
その中でも一際大きな鼻の頭をした神が、クンクンのご自慢の鼻で壱の存在を確かめる。
「なんでヒトが居る?ここは神の国ぞ?」
「居たくて居る訳じゃない」
「なら何故居るんだ?ヒトはここに居ちゃいけねぇ決まりなんだよ」
壱の言葉に鼻の神は怒りの色を滲ませ威圧的に振舞う。しかし、神に対してはどこか強気で傲慢さすら携えて壱はそれに応じる。
「知ってるさ…。俺はこの国に生まれてから一度も、ココが俺の居場所だなんて思った事はない」
「何を言っている?お前は何ものだぁ?」
「俺は…、俺はノコノコだ!」
ノコノコという単語に周囲の神たちがざわついた。さざ波のようにその単語が広まり「ノコノコだと?」「あいつがあのノコノコか?」「あいつのせいで…」と四方八方で陰口が聞こえた。
チッと舌打ちする壱の背後で、木陰に隠れたミカはその異様な光景をいぶかしんでいた。
「ノコノコォ?お前があのノコノコだってのか?」
「そう言ってるだろ?話も聞けないのか、愚かな神め」
「そんなケンカ腰になるなぁノコノコォ。お前が不憫で哀れなんてことはみーんな知ってる。お前がこの国に居て、いつか朽ち果てようとも誰も気に止めねぇから安心しなぁ」
「ふんっ!ならばもういいだろ。俺に構うな」
いつもなら言い返すところだが、今は後ろに隠れるミカのために半端な挑発には応じず、場をやり過ごす壱。
「ああ、お前には構わねぇさ…でもよぉノコノコォ」
壱の顔の真横まで大きな鼻が近づいてきた。しっとりとした湿度をと熱気を放ち、不快さに壱は顔を歪めた。
「でもよぉ、お前以外のヒトの匂いがすんだぁコイツは見逃せねぇんだよなぁ…そういう決まりなんだ」
鼻の神の言葉に壱の背中には冷たい汗が流れ、即座に踵を返し走り出した。
「ミカさん、逃げよう!」
木陰に隠れていたミカの手を取ると、林の奥へ奥へ駆ける。背後では鼻神の怒声が轟く。幸いにもミカの存在に気付いたのは鼻神だけで、周囲の神はノコノコにさほどの興味もなく散った様子だ。
―――しばらく林の中を走り抜け、祭囃子も遠くに消えた頃。壱は駆けていた足を緩めて、背後を確認する。追っ手はなく暗い闇がどこまでも続いている。
「はぁはぁ」と二人の上がった呼吸だけが静寂な林の中で存在を放っていた。
「ご…ごめん、急に走って…」
「はぁ…い、いえ…、なにやら物々しい雰囲気でしたので…はぁ…、最善だったんだと思います」
背負った荷物のせいなのか女性との体力差のせいなのか、壱以上に苦しそうに息を切らすミカ。
大抵ならば取り乱したり、感情を吐き出してしまいそうなものだが、どこか嬉しそうに楽しんでいる見えるのは彼女の持つ性格ゆえだろうか…。
「アイツが言いふらさなきゃ、ミカさんの存在に気付いたのはアイツだけだし大丈夫そうだけど…」
「その…壱さん。はぁ…はぁ…」
「どうしたの?ってか大丈夫?」
その場にしゃがみ込んで何とか呼吸を整えるミカ。途中、夢中で握っていた手を思い出した壱は慌てて離した。
「ご、ごめん」
「え?いえ…、それより…」
やっと呼吸が落ち着いたのか、ミカは顔を上げて心配そうに眺める壱の目を見つめた。
「ノコノコって何ですか?」
そう告げると壱は、木陰から飛び出して神たちの前へ躍り出た。身の丈180センチほどの大柄な身体の壱だが、大小さまざまな異形の神を前にするとその差は大きく小柄にも見える。
その中でも一際大きな鼻の頭をした神が、クンクンのご自慢の鼻で壱の存在を確かめる。
「なんでヒトが居る?ここは神の国ぞ?」
「居たくて居る訳じゃない」
「なら何故居るんだ?ヒトはここに居ちゃいけねぇ決まりなんだよ」
壱の言葉に鼻の神は怒りの色を滲ませ威圧的に振舞う。しかし、神に対してはどこか強気で傲慢さすら携えて壱はそれに応じる。
「知ってるさ…。俺はこの国に生まれてから一度も、ココが俺の居場所だなんて思った事はない」
「何を言っている?お前は何ものだぁ?」
「俺は…、俺はノコノコだ!」
ノコノコという単語に周囲の神たちがざわついた。さざ波のようにその単語が広まり「ノコノコだと?」「あいつがあのノコノコか?」「あいつのせいで…」と四方八方で陰口が聞こえた。
チッと舌打ちする壱の背後で、木陰に隠れたミカはその異様な光景をいぶかしんでいた。
「ノコノコォ?お前があのノコノコだってのか?」
「そう言ってるだろ?話も聞けないのか、愚かな神め」
「そんなケンカ腰になるなぁノコノコォ。お前が不憫で哀れなんてことはみーんな知ってる。お前がこの国に居て、いつか朽ち果てようとも誰も気に止めねぇから安心しなぁ」
「ふんっ!ならばもういいだろ。俺に構うな」
いつもなら言い返すところだが、今は後ろに隠れるミカのために半端な挑発には応じず、場をやり過ごす壱。
「ああ、お前には構わねぇさ…でもよぉノコノコォ」
壱の顔の真横まで大きな鼻が近づいてきた。しっとりとした湿度をと熱気を放ち、不快さに壱は顔を歪めた。
「でもよぉ、お前以外のヒトの匂いがすんだぁコイツは見逃せねぇんだよなぁ…そういう決まりなんだ」
鼻の神の言葉に壱の背中には冷たい汗が流れ、即座に踵を返し走り出した。
「ミカさん、逃げよう!」
木陰に隠れていたミカの手を取ると、林の奥へ奥へ駆ける。背後では鼻神の怒声が轟く。幸いにもミカの存在に気付いたのは鼻神だけで、周囲の神はノコノコにさほどの興味もなく散った様子だ。
―――しばらく林の中を走り抜け、祭囃子も遠くに消えた頃。壱は駆けていた足を緩めて、背後を確認する。追っ手はなく暗い闇がどこまでも続いている。
「はぁはぁ」と二人の上がった呼吸だけが静寂な林の中で存在を放っていた。
「ご…ごめん、急に走って…」
「はぁ…い、いえ…、なにやら物々しい雰囲気でしたので…はぁ…、最善だったんだと思います」
背負った荷物のせいなのか女性との体力差のせいなのか、壱以上に苦しそうに息を切らすミカ。
大抵ならば取り乱したり、感情を吐き出してしまいそうなものだが、どこか嬉しそうに楽しんでいる見えるのは彼女の持つ性格ゆえだろうか…。
「アイツが言いふらさなきゃ、ミカさんの存在に気付いたのはアイツだけだし大丈夫そうだけど…」
「その…壱さん。はぁ…はぁ…」
「どうしたの?ってか大丈夫?」
その場にしゃがみ込んで何とか呼吸を整えるミカ。途中、夢中で握っていた手を思い出した壱は慌てて離した。
「ご、ごめん」
「え?いえ…、それより…」
やっと呼吸が落ち着いたのか、ミカは顔を上げて心配そうに眺める壱の目を見つめた。
「ノコノコって何ですか?」
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