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13話 ノラ猫と好奇心
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「ノコノコっていうのは、そ…それは、その…」
「壱さんは人間でありながら、この世界…神の世界に居る…いや、産まれたと先ほどおっしゃりました。その上で神様達にある種認められた存在というのは、私…壱さんという存在に興味が出てきました。あなたは何なのですか?まさか神様と人間の…」
言いよどむ壱を他所に、ミカは情報を照らし合わせて推論を重ねる。殺されそうなほどに執拗な好奇心に駆られた神の世界に迷い込んだノラ猫に、壱は少しため息を吐いた。
「わかった…、話すよ。でも、ココだと追っ手が来る可能性もゼロじゃないし、俺の家に来てよ」
「いいいっ…家に!?」
「え、なに?そんなに驚いて?」
「出会って間もない乙女を早々にホームへ連れ込みアレやコレ…。壱さんを朴念仁かと侮っていましたが、獣の血を引く男の子だったという訳ですか…いや、むしろ神の世界で育ったゆえの無意識下での傲慢さの現れ…。はたまたペットが居るんだ的な言葉で油断を誘い、部屋へ引き込む慣れた男の穢れた手法…」
身体の前に円を描くように大仰に両手を回している。バリアなのか未完成のカンフーなのかわからないが、目だけは妙に真剣で、壱は思わず吹き出した。
「なっ!?なんですか、その笑いは?まさか私の推理が的確すぎて、動揺を隠すための…ブラフッ!」
「いやぁ、単純に頭おかしいなって思って…」
「頭がおかしいですって?失礼ですね!そんなセリフ言われるのは、人生で2540回くらいですよ」
「多いなっ!」
「はい、もはや最近では挨拶代わりなのではと思っています」
そんな話を繰り広げながら、壱が足を踏み出すと大人しくミカは後ろをついてくる。壱に対して多少の警戒心は抱いているが、従う意思はあるらしく安堵を覚える壱だった。
(でも…確かに会ったばかりの人間の女の子を家に招くなんて、大丈夫かなぁ…)
悩みつつもハラを決めているとは、知らぬが仏…ミカは壱の数歩後ろを大股で歩いている。彼女のペースに合わせる為に少しだけスピードを緩めた。
――十数分ほど林の中をすすむとパッと開けた場所に出た。見上げた空は高く高く広がっており、大きな満月がこちらを覗いている。ちらちらと龍や得体の知れない者が飛び交っており、ここが神の国なのだと教えてくれる。
視線を落とすと木造の古い小さな小屋がある。その周りには猫のひたいほどの小さな畑。
自給自足の田舎暮らしといった様相を呈しており、都会に疲れた若者などがブームに乗って住みたがりそうな空間である。
「ここが俺んちだよ」
「ほう…、これはなかなかボ…趣があって、ボロ…いえ、住み心地良さそうな、ボロ小…、可愛い家ですね」
「そこまで言ったら素直にボロ小屋って言った方が怒りはない…」
レポーターの才能が枯渇しているミカを冷めた目で流し、壱はずいずいと小屋へ進むが、その後ろでミカは居心地悪そうにもじもじしている。
「…どうしたの?」
「いえ…、これから私は連れ込まれて純潔を失うんだ思うと、一歩を踏み出す勇気が…」
「そんな度胸俺にねぇよっ!!」
壱の悲痛な叫びに林の中の鳥達が「うるせぇよ!ノコノコ」とクレームを吐いて飛び立っていった。
「カーッ!なんだい騒がしいねぇ…」
「なんだカラス…勝手に家に入るなよ」
壱の叫びに反応してか、玄関から不機嫌なカラスが現れた。部屋着なのかゆったりとした服装に着替えており、まるで人の家にお邪魔しているとは到底思えない。
「あら、カラスさんもいらっしゃったのですか?それならば私がお邪魔しても私の身の安全を担保して頂けそうですね…と思わせて壱さんのような大柄な方に迫られたら私たちなど一瞬で…」
「カーッ!なんでその女も居るんだよ!返してきなさい、拾ったとこに返してきなさい!」
「…ノラ猫じゃないんだから」
「壱さんは人間でありながら、この世界…神の世界に居る…いや、産まれたと先ほどおっしゃりました。その上で神様達にある種認められた存在というのは、私…壱さんという存在に興味が出てきました。あなたは何なのですか?まさか神様と人間の…」
言いよどむ壱を他所に、ミカは情報を照らし合わせて推論を重ねる。殺されそうなほどに執拗な好奇心に駆られた神の世界に迷い込んだノラ猫に、壱は少しため息を吐いた。
「わかった…、話すよ。でも、ココだと追っ手が来る可能性もゼロじゃないし、俺の家に来てよ」
「いいいっ…家に!?」
「え、なに?そんなに驚いて?」
「出会って間もない乙女を早々にホームへ連れ込みアレやコレ…。壱さんを朴念仁かと侮っていましたが、獣の血を引く男の子だったという訳ですか…いや、むしろ神の世界で育ったゆえの無意識下での傲慢さの現れ…。はたまたペットが居るんだ的な言葉で油断を誘い、部屋へ引き込む慣れた男の穢れた手法…」
身体の前に円を描くように大仰に両手を回している。バリアなのか未完成のカンフーなのかわからないが、目だけは妙に真剣で、壱は思わず吹き出した。
「なっ!?なんですか、その笑いは?まさか私の推理が的確すぎて、動揺を隠すための…ブラフッ!」
「いやぁ、単純に頭おかしいなって思って…」
「頭がおかしいですって?失礼ですね!そんなセリフ言われるのは、人生で2540回くらいですよ」
「多いなっ!」
「はい、もはや最近では挨拶代わりなのではと思っています」
そんな話を繰り広げながら、壱が足を踏み出すと大人しくミカは後ろをついてくる。壱に対して多少の警戒心は抱いているが、従う意思はあるらしく安堵を覚える壱だった。
(でも…確かに会ったばかりの人間の女の子を家に招くなんて、大丈夫かなぁ…)
悩みつつもハラを決めているとは、知らぬが仏…ミカは壱の数歩後ろを大股で歩いている。彼女のペースに合わせる為に少しだけスピードを緩めた。
――十数分ほど林の中をすすむとパッと開けた場所に出た。見上げた空は高く高く広がっており、大きな満月がこちらを覗いている。ちらちらと龍や得体の知れない者が飛び交っており、ここが神の国なのだと教えてくれる。
視線を落とすと木造の古い小さな小屋がある。その周りには猫のひたいほどの小さな畑。
自給自足の田舎暮らしといった様相を呈しており、都会に疲れた若者などがブームに乗って住みたがりそうな空間である。
「ここが俺んちだよ」
「ほう…、これはなかなかボ…趣があって、ボロ…いえ、住み心地良さそうな、ボロ小…、可愛い家ですね」
「そこまで言ったら素直にボロ小屋って言った方が怒りはない…」
レポーターの才能が枯渇しているミカを冷めた目で流し、壱はずいずいと小屋へ進むが、その後ろでミカは居心地悪そうにもじもじしている。
「…どうしたの?」
「いえ…、これから私は連れ込まれて純潔を失うんだ思うと、一歩を踏み出す勇気が…」
「そんな度胸俺にねぇよっ!!」
壱の悲痛な叫びに林の中の鳥達が「うるせぇよ!ノコノコ」とクレームを吐いて飛び立っていった。
「カーッ!なんだい騒がしいねぇ…」
「なんだカラス…勝手に家に入るなよ」
壱の叫びに反応してか、玄関から不機嫌なカラスが現れた。部屋着なのかゆったりとした服装に着替えており、まるで人の家にお邪魔しているとは到底思えない。
「あら、カラスさんもいらっしゃったのですか?それならば私がお邪魔しても私の身の安全を担保して頂けそうですね…と思わせて壱さんのような大柄な方に迫られたら私たちなど一瞬で…」
「カーッ!なんでその女も居るんだよ!返してきなさい、拾ったとこに返してきなさい!」
「…ノラ猫じゃないんだから」
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