神隠し ノコノコ ~迷い込んだ好奇心の化け物編~

みくたま

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17話 純粋な情報とは?

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 ミカの真っ直ぐな思いに当てられ、壱はその場で固まってしまった。ミカは呆ける壱の手を取り握り締める、突然の出来事に慌てる壱を他所に告げた。


「私は信じていたのです!」

「し…信じてた!?」

「はい、神隠しも神の国の事も!絶対に存在するって」

「ななっ…なんでっ!」

「それはですねぇ…」

「ちょいとストップ。お前の思いは分かったから、一旦…壱から離れてくれ」


 ミカと壱の間に割って入り、カラスは興奮冷めやらぬミカを制した。


「あらら?申し訳ありません。私としたことが少し興奮してしまいました」

「お前はだいたいいつも興奮してるんだよ。悪い意味でね」


 パッと握っていた手を離し、顔の前で両手をすりすりして五段座布団の定位置に戻った。壱は彼女の猛接近に戸惑いカラスの後ろで萎れていた。
 黒い羽で壱を守りながら、カラスは話の続きを催促する。


「神隠しはないって証拠ばかり見つかったんだろ?だったら、なぜボクらの…神の存在を信じるなんて選択ができたというんだよ?」

「そう…ですね。…そもそも神隠しというのは科学技術が未発達だった時代に多く起こっていました。それはつまり当時では解明できない事柄を、神や超常現象のせいにしてたからだと思っています」

「人ってのは信じられない事が起きた時、心の安寧の為に神を使うからね」


 カラスの…神の言葉にコクリと肯くミカ。


「はい、科学の発展した現在では【神隠し】なんてものは誰も信じてはいません。すっごく浪漫があって私の琴線に触れて離さないというのに…実に嘆かわしい。…科学なんて滅んでしまえと神に何度祈ったか…」

「お前の危険思想は必要ないから話を続けるんだよ…」

「カラスさんは神様なのに願いを聞き届けてもくれないなんて、酷い話ですね。改宗しちゃいますよ?」

「芸能人に対するファンだったのに残念ですぅ。みたいな変な脅しはやめろ!うっとうしい」


 やれやれといった様子で肩をすくめるミカ。座布団に座り、上から目線の願いなど例えカラスでなくとも叶えたい気持ちにはならないだろう。


「私くらいピュアな神隠し信者になるとですね」

「そんな特殊な信者初めて聞いたよ」

「今作りました、会員募集中です。…とにかく私くらいになると、ノイズは全て排除したいと考える訳ですよ。調べに調べつくして、捜査網を掻い潜った純粋な神隠しの情報が欲しいのです」

「…純粋な情報?」

「ヒャッ!?急に羽に触らないでくれよ!エッチ!?」


 カラスの黒い羽を掻き分けて、顔を覗かせる壱を叱責する。そんな二人のやり取りを「ほほう」と興味深そうに眺めるミカ。彼女の琴線がどこに触れるかは彼女しかわからない。


「なるほど、壱さんはエッチ…と」

「そんな事メモに取らなくていいんじゃないカーッ?」

「お…俺はエッチなのではない!」


 壱の否定も空しく、ミカのメモには既に貴重な情報として刻まれた様子だ。


「それで純粋な情報ってなんなの?」

「そうだね、ボクも気になるな」

「神隠しに関する情報を手当たり次第に集めて、その全てを精査するのです。疑わしいものや既に事件として解決したものなどの不純物になる情報をそぎ落として…そぎ落として、残されたものが真実にほど近い純粋な情報として手元に残るわけです」

「それは確かに純粋な情報かも…」

「カーッ!気長な話だねぇ。人間のそういうところにはボクも尊敬を覚えるよ」

「えっへん!」


 ミカはカラスの言葉に鼻を伸ばしてなだらかな膨らみを持った胸を張った。


「お前単品では褒めてないんだよ…」

「それで…純粋な情報って何があったの?」

「えっと…三本足の神社ですね」


 答えを聞いた瞬間、カラスが身を震わせ、ミカを激しく睨みつけた。


「人間…訂正するよ。ボクがお前たちに抱く感情は尊敬じゃない…恐怖だよ」
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