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27話 マッチなポンプ
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「昔はね…神と人はもっと身近な関係だったんだよ。自然の中に神は息づいていて、人間側も例えその存在が見えなくても肌で感じていて、頭のどこかで理解し共存していたんだ」
小上がりに腰掛ける壱の背中に体重を預け、カラスは懐かしむように目を閉じる。柔らかな羽毛のぬくもりと少しの重みが壱にはなんだか心地よかった。
「今は…違うのか?」
「そうだね…いつからか人間は神の力を超えはじめたのさ…。空を飛べるようになった…世界の裏側の人と離れたまま話せるようになった…自然災害も自分達の力で乗り越えられるようになった…。ボクらに手を合わせる時代はもう終わってしまったんだよ…。」
「…私も人間が作った文化や文明の恩恵の上に育って来ました。今さら取り上げられてしまったら、おそらく生活もままなりませんよ。しかし、それが神と人間を遠ざけているというのは口惜しいです」
人間側の意見に静かに耳を傾け、カラスは心を開示し始める。
「ボクは人間と話すのが好きだったんだよ。神の国からひっそり出掛けて、森を抜けると小さな村があってさ…。そこの悪ガキどもと遊んでやるんだよ。羽を見せたら目を丸くして喜ぶんだよ…。神様なんて呼ばれるほど偉そうなことは何もしてないけど、成長していくアイツラを見てるのは好きだったんだ」
「カラスらしいな…」
「そうですね…いつものカラスさんらしい行動だと思います」
「いや、お前はボクらしさなんてわからないだろ?知ったかぶるなよな…」
「え、この空気でそこをツッコミますか?私だって仲間に入れてくださいよ」
カラスは壱の背中から身を跳ね起こしミカを睨みつける。
「まぁ、そんな神がボク以外にも結構居てさ。そいつらが仲良くなった人間を神の国へ連れてきてたりしてたってワケだよ」
「ああ、では…青く愚かでどうしようもない悪戯神様ってのは、カラスさんの自己紹介でしたか?」
「どうしようもなくとは言ってなくない?確かに悪いことしたのは事実だけどさ!」
「事実なら黙ってください。犯罪者めっ!」
言い訳するカラスに言葉をピシャッと遮断し、顔をしかめて鋭い眼光で睨みつけるミカ。自分が何かされた訳でもないのにこの顔が出来るのは特殊な才能かもしれない。
「言っとくけど神隠しにだってルールはあるんだよ!ルールは!?」
「ルール、そんなのあるののか?ルールだの掟だの神の国は意外とうるさいんだな…」
「そうですよ。ルールがあるならルールに則って私を神隠ししてくださいよ。こんなボロ小屋…おっと失礼!に連れ込んで尋問なんかではなく、観光をしたいんですよ私は!」
「お前なんかに観光させる訳ないんだよ!今すぐにでも熨斗つけて着払いで返したいんだよ!」
「酷いじゃないですか!私の気持ちも身体もさんざん弄んで、用が済んだらポイなんてあんまりですよ壱さん!!」
「えっ、俺っすか!?」
予想外の角度から斬りつけられた壱は、カラスの後頭部に鼻水を噴き出した。
「ああぁぁっ!なにするんだよ壱ぃぃっ!」
「わっ…悪い!でも俺のせいじゃっ!」
「まぁ、壱さん汚らしいですね…エンガチョです。近づかないでください!」
「えぇぇっ…」
「もし今後の付き合いをぎくしゃくにしたくないのなら是非私の味方になって弁護をしてください」
「おい、このクソ女!この一瞬でとんでもないマッチポンプしてるんだよ!」
「ああっ!カラスさんそんなにフワフワの羽毛で叩かないでください…暖かくて眠りを誘いますから」
救いようのない邪悪な人間を追い払うようにカラスはバシバシと容赦なく叩くが、攻撃力皆無の黒い羽では効果が薄いどころか逆効果のようで、口では嫌がりながらも両手を広げて全身で堪能する恍惚の表情のミカが居た。
「この女おかしいんだよっ!」
「はい、昔からみなさんにそういった評価を受けています!」
小上がりに腰掛ける壱の背中に体重を預け、カラスは懐かしむように目を閉じる。柔らかな羽毛のぬくもりと少しの重みが壱にはなんだか心地よかった。
「今は…違うのか?」
「そうだね…いつからか人間は神の力を超えはじめたのさ…。空を飛べるようになった…世界の裏側の人と離れたまま話せるようになった…自然災害も自分達の力で乗り越えられるようになった…。ボクらに手を合わせる時代はもう終わってしまったんだよ…。」
「…私も人間が作った文化や文明の恩恵の上に育って来ました。今さら取り上げられてしまったら、おそらく生活もままなりませんよ。しかし、それが神と人間を遠ざけているというのは口惜しいです」
人間側の意見に静かに耳を傾け、カラスは心を開示し始める。
「ボクは人間と話すのが好きだったんだよ。神の国からひっそり出掛けて、森を抜けると小さな村があってさ…。そこの悪ガキどもと遊んでやるんだよ。羽を見せたら目を丸くして喜ぶんだよ…。神様なんて呼ばれるほど偉そうなことは何もしてないけど、成長していくアイツラを見てるのは好きだったんだ」
「カラスらしいな…」
「そうですね…いつものカラスさんらしい行動だと思います」
「いや、お前はボクらしさなんてわからないだろ?知ったかぶるなよな…」
「え、この空気でそこをツッコミますか?私だって仲間に入れてくださいよ」
カラスは壱の背中から身を跳ね起こしミカを睨みつける。
「まぁ、そんな神がボク以外にも結構居てさ。そいつらが仲良くなった人間を神の国へ連れてきてたりしてたってワケだよ」
「ああ、では…青く愚かでどうしようもない悪戯神様ってのは、カラスさんの自己紹介でしたか?」
「どうしようもなくとは言ってなくない?確かに悪いことしたのは事実だけどさ!」
「事実なら黙ってください。犯罪者めっ!」
言い訳するカラスに言葉をピシャッと遮断し、顔をしかめて鋭い眼光で睨みつけるミカ。自分が何かされた訳でもないのにこの顔が出来るのは特殊な才能かもしれない。
「言っとくけど神隠しにだってルールはあるんだよ!ルールは!?」
「ルール、そんなのあるののか?ルールだの掟だの神の国は意外とうるさいんだな…」
「そうですよ。ルールがあるならルールに則って私を神隠ししてくださいよ。こんなボロ小屋…おっと失礼!に連れ込んで尋問なんかではなく、観光をしたいんですよ私は!」
「お前なんかに観光させる訳ないんだよ!今すぐにでも熨斗つけて着払いで返したいんだよ!」
「酷いじゃないですか!私の気持ちも身体もさんざん弄んで、用が済んだらポイなんてあんまりですよ壱さん!!」
「えっ、俺っすか!?」
予想外の角度から斬りつけられた壱は、カラスの後頭部に鼻水を噴き出した。
「ああぁぁっ!なにするんだよ壱ぃぃっ!」
「わっ…悪い!でも俺のせいじゃっ!」
「まぁ、壱さん汚らしいですね…エンガチョです。近づかないでください!」
「えぇぇっ…」
「もし今後の付き合いをぎくしゃくにしたくないのなら是非私の味方になって弁護をしてください」
「おい、このクソ女!この一瞬でとんでもないマッチポンプしてるんだよ!」
「ああっ!カラスさんそんなにフワフワの羽毛で叩かないでください…暖かくて眠りを誘いますから」
救いようのない邪悪な人間を追い払うようにカラスはバシバシと容赦なく叩くが、攻撃力皆無の黒い羽では効果が薄いどころか逆効果のようで、口では嫌がりながらも両手を広げて全身で堪能する恍惚の表情のミカが居た。
「この女おかしいんだよっ!」
「はい、昔からみなさんにそういった評価を受けています!」
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