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16. side アーシャ 邪魔者を排除しますわ!

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 エル様がアーシャ以外の令嬢に興味がある。
 そんな話が彼女の持つ情報網から入ってきて、何も起こらないはずがなかった。

「許せませんわ……許せませんわ……! レシアとかいう女、どれだけわたくしに喧嘩を売ったら気が済みますの⁉︎」

 そんな声と共に壁に叩きつけられるティーカップ。当然、壁に当たると同時に割れて散らばった。

「お嬢様、落ち着いてください! まだ負けたわけじゃありませんよ!」
「まだですって? まるでわたくしが負けるみたいじゃない! あんたなんかクビよ、クビ!」

 侍女がなんとか止めようとするが、この通り、なんの効果も成していなかった。
 

「その女を手にかける、というのはいかがでしょうか?」
「なら、あなたが手にかけなさい!」

 騒ぎを聞いて駆けつけたお庭番にそう口にするアーシャ。
 もう滅茶苦茶だった。

 だが、そのお庭番の男性はあることを提案した。

「では、我々と作戦会議をいたしましょう。相手は侯爵令嬢、簡単にはいきませんから」
「分かったわ。わたくしが協力するのだから、失敗は許さないわよ!」

 そうして、わがまま令嬢とお庭番の作戦会議が始まった。

 ちなみに、お庭番は本気でレシアを襲おうとはしていない。襲ったが最後、自分の首が飛ぶだけだから。
 誰だって自分が可愛いのだ。危険な道は渡りたくない。



「おそらく、次の外出はお嬢様も参加される王女殿下主宰パーティーの日でしょう」
「その日に襲いますのね。パーティーの前に襲えば、他の貴族に見られる可能性も低いわね」

 パーティーの後は参加者が一斉に家路につくため、目撃者が増えかねない。
 パーティーの前なら、参加者がバラバラに会場に向かうから目撃されにくいと考えたのだ。
 そして、アーシャがいつも通り早めに会場に現れればアリバイも作れる。

 完璧な作戦ねーーアーシャは内心そう思っていた。

 だが、お庭番はアーシャの作戦を否定した。

「お嬢様、それでは平民に見られてしまいます。よく考えてください、パーティーが終わるのは日が暮れてからですよ。貴族にも平民にも見られずに事を起こせます」
「そうでしたわね、流石ですわ。わたくしの考えが甘かったわね」

 アーシャはただのわがまま令嬢ではない。こういうことにはしっかり頭を使えるのだ。
 レシアを襲った後のことが分かっていないあたりは馬鹿としか言いようがないが……。

 ちなみに、お庭番はこう考えていた。

 会場入り前に襲うと言ってしまえば、レシアが会場にいることで作戦を遂行しなかったことがバレてしまう。
 だから、アーシャにバレるのを遅らせて、その間に雇い主の公爵家当主に頼んで姿を眩ませようとしているのだ。

 もちろん、そのことをアーシャが知るわけが無い。

「あなたの作戦でいきますわよ!」

 自信満々にアーシャはそう口にするのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


※お庭番

 諜報活動を行う隠密のことです。
 レノクス公爵家では普通の使用人としても働いています。当主の方針でアーシャ以外の命令で動きます。
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