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71. 理由
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「……飛空艇に乗ってからは、お姉様が知っている通りですわ」
「あの瘴気と戦ってたのね……。大変さが想像出来ないから、なんて返せばいいのか分からないわ」
私の身に起きていたことを話し終えると、そんな言葉が返ってきた。
大変なこともあったけど、お母様に虐められていた時よりは楽だったし、楽しかったのよね……。
「お姉様が思っているよりは大変じゃなかったから、大丈夫ですわ。それよりも、家で何が起きたのか知りたいですわ」
「分かったわ。まず、レティシアがいなくなってすぐに、お母様が怒られたわ。あんなに怖いお父様を見るのは初めてだったから、私まで震えてしまったのよね。その日から、お母様は侍女に最低限の指示しかできないようにされたのだけど、レティシアのことを恨むようなことを毎日言っていたわ。お父様に、自業自得だって言われるまでね。
それと、お母様がレティシアに宛てた手紙を引き抜いていたことも明らかになったわね。でも、瘴気が出てくるまではそれくらいしか目立った出来事は無かったわ」
申し訳なさそうに口にするお姉様。私は頷いて、先を促した。
「瘴気が出てきてからは、みんなで結界を作ることになって、魔力も私達が入れることになったわ。だから、初日は起き上がれないくらい魔力を使ったの。でも、結界はそれだけで十分だったわ。
食事も大変で、食材が使えないからパンと豆だけの生活になったけど、これも料理人さんのおかげで何とかなったわ。あとは、この飛空艇のための魔法陣を作ったり、魔力を注いだりしたくらいね。
それからはレティシアを助けに向かって、あとは貴女が知る通りよ」
うん、お姉様もかなり大変だったみたいね……。
それに、私が知らない魔術の技術……魔導技術が2つも。
これを聞いて驚かないはずが無かった。
「こんな魔導技術がありましたのね……」
「私も驚いたわ。どれも失われた技術だもの」
そんな話をしていると、王宮のある方向から風切り音が響いてきた。
よく見ると、馬車とは比べ物にならない速さで飛空艇が迫ってきている。
飛空艇は速さを保ったまま地面に降りてきて……土煙を上げながらこちらに迫ってきた。
でも、私達に突っ込んでくる……なんてことは無くて、少し離れた場所に止まった。
「お姉様、どうして真っすぐ降りないのか知っていますか?」
「真っすぐ降りていると、途中で魔力が尽きてしまうの。だから、羽の力をギリギリまで使っているそうよ」
「そういうことでしたのね」
そんなことを話していると、今度はお父様に声をかけられた。
「車輪が直ったから、先に乗ってほしい」
「「分かりましたわ」」
頷いて、飛空艇に向かう私達。
馬車のような段差があるから、お兄様の手を借りながら乗った。
すると、縛られているお母様が私を睨んできた。
「あれはどうして……?」
「忌み子を乗せる必要は無いって大暴れしたからよ」
「そうなのですね……」
帰ってきた答えに引き気味の私。でも、直後に他の方々が乗り始めたから、喋るのをやめた。
「では、街の近くまで移動します。移動中は揺れますので、しっかりおつかまりください」
そう口にするお父様。
すぐに飛空艇が動き始めて、激しい揺れが始まってしまった。
ただ、ここに降りてきた時よりは穏やかで、口の中を噛むことはなかった。
でも……。
(お尻が痛いわ……)
(大丈夫?)
(うん……)
椅子にクッションが入っていないから、激しい揺れで腰のあたりが少し痛くなってしまった。
それから数時間、私達は侯爵家の領地にある屋敷に来ていた。
今この中にいるのは、私達侯爵家一家と王族の方々だけ。他の方々は、無駄に広くて豪華な離れの中で過ごしている。
ちなみにだけど、ここの離れは先代の時に国中の貴族様が宿泊する時に建てられたものらしくて、それが役に立っていた。
こまめな掃除はしていなかったから、大慌てで使用人さん達が掃除することになったのがさっきのこと。
今は、この人数の食事を作るために、使用人さん達が食材の確保に向かっているらしい。
私達はというと、説教をしているお父様と説教を受けているお母様以外はお茶をしながら過ごしている。
「あの瘴気と戦ってたのね……。大変さが想像出来ないから、なんて返せばいいのか分からないわ」
私の身に起きていたことを話し終えると、そんな言葉が返ってきた。
大変なこともあったけど、お母様に虐められていた時よりは楽だったし、楽しかったのよね……。
「お姉様が思っているよりは大変じゃなかったから、大丈夫ですわ。それよりも、家で何が起きたのか知りたいですわ」
「分かったわ。まず、レティシアがいなくなってすぐに、お母様が怒られたわ。あんなに怖いお父様を見るのは初めてだったから、私まで震えてしまったのよね。その日から、お母様は侍女に最低限の指示しかできないようにされたのだけど、レティシアのことを恨むようなことを毎日言っていたわ。お父様に、自業自得だって言われるまでね。
それと、お母様がレティシアに宛てた手紙を引き抜いていたことも明らかになったわね。でも、瘴気が出てくるまではそれくらいしか目立った出来事は無かったわ」
申し訳なさそうに口にするお姉様。私は頷いて、先を促した。
「瘴気が出てきてからは、みんなで結界を作ることになって、魔力も私達が入れることになったわ。だから、初日は起き上がれないくらい魔力を使ったの。でも、結界はそれだけで十分だったわ。
食事も大変で、食材が使えないからパンと豆だけの生活になったけど、これも料理人さんのおかげで何とかなったわ。あとは、この飛空艇のための魔法陣を作ったり、魔力を注いだりしたくらいね。
それからはレティシアを助けに向かって、あとは貴女が知る通りよ」
うん、お姉様もかなり大変だったみたいね……。
それに、私が知らない魔術の技術……魔導技術が2つも。
これを聞いて驚かないはずが無かった。
「こんな魔導技術がありましたのね……」
「私も驚いたわ。どれも失われた技術だもの」
そんな話をしていると、王宮のある方向から風切り音が響いてきた。
よく見ると、馬車とは比べ物にならない速さで飛空艇が迫ってきている。
飛空艇は速さを保ったまま地面に降りてきて……土煙を上げながらこちらに迫ってきた。
でも、私達に突っ込んでくる……なんてことは無くて、少し離れた場所に止まった。
「お姉様、どうして真っすぐ降りないのか知っていますか?」
「真っすぐ降りていると、途中で魔力が尽きてしまうの。だから、羽の力をギリギリまで使っているそうよ」
「そういうことでしたのね」
そんなことを話していると、今度はお父様に声をかけられた。
「車輪が直ったから、先に乗ってほしい」
「「分かりましたわ」」
頷いて、飛空艇に向かう私達。
馬車のような段差があるから、お兄様の手を借りながら乗った。
すると、縛られているお母様が私を睨んできた。
「あれはどうして……?」
「忌み子を乗せる必要は無いって大暴れしたからよ」
「そうなのですね……」
帰ってきた答えに引き気味の私。でも、直後に他の方々が乗り始めたから、喋るのをやめた。
「では、街の近くまで移動します。移動中は揺れますので、しっかりおつかまりください」
そう口にするお父様。
すぐに飛空艇が動き始めて、激しい揺れが始まってしまった。
ただ、ここに降りてきた時よりは穏やかで、口の中を噛むことはなかった。
でも……。
(お尻が痛いわ……)
(大丈夫?)
(うん……)
椅子にクッションが入っていないから、激しい揺れで腰のあたりが少し痛くなってしまった。
それから数時間、私達は侯爵家の領地にある屋敷に来ていた。
今この中にいるのは、私達侯爵家一家と王族の方々だけ。他の方々は、無駄に広くて豪華な離れの中で過ごしている。
ちなみにだけど、ここの離れは先代の時に国中の貴族様が宿泊する時に建てられたものらしくて、それが役に立っていた。
こまめな掃除はしていなかったから、大慌てで使用人さん達が掃除することになったのがさっきのこと。
今は、この人数の食事を作るために、使用人さん達が食材の確保に向かっているらしい。
私達はというと、説教をしているお父様と説教を受けているお母様以外はお茶をしながら過ごしている。
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