婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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98. 裁判②

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「貴女が使用した薬は通称、淫魔の雫ということが分かっています。間違いありませんか?」

「私はそんなもの使っていませんわ」


 そう否定するレイラ。淫魔の雫は成分が普通の媚薬と似ているから、罪が重くなるのを逃れようとしているのかしら?


「残念ながら、殿下には淫魔の雫の症状が出ております。淫魔の雫は通常の媚薬と成分が似ていますが、媚薬には無い症状が現れます。状況から見ても間違いは無いと思われます」

「そんなこと知りませんわ! 婚約破棄をされたくなかったあの女が盛ったのだと思いますわ」


 また私のせいにしようとするのね……。
 このまま言われるのは嫌だから、少し言い返したくなってきた。


「裁判長、発言を許していただけませんか?」

「構いません」

「貴女は何故私が殿下に薬を盛ったと思ったのですか? 当然、そう言える根拠があるのですよね?」


 裁判長から発言の許可をもらった私はレイラにそう問いかけてみた。


「そんなの、貴女が殿下のそばにいて婚約破棄されそうだったからに決まっていますわ」

「私、精神を操るのなら魔法で十分なのですけど……何故わざわざ薬を使う必要があるのか教えていただけませんか?」


 一応、殿下は対精神系魔法の対策をする魔導具を持っているけど、少し頑張れば突破できるものだった。
 ちなみに、精神系の魔法は相手が5メートル以内にいて向かい合っていないと効果が出ない。


「精神系の魔法を起動する条件が揃わなかったからに決まっていますわ!」

「そうでしょうか? 婚約破棄の2日前に唇を求められたのですけど……」

「えっ……?」


 私の言葉に驚いた表情をしているレイラ。
 私はそれを好機と見て言葉を続けた。


「私は結婚まで清いままでいようと決めていましたから丁重にお断りしましたけど、殿下の気持ちが私に向いていたのは確かですわ。薬や魔法に頼る必要が無いくらいに……。
 罪が重くなるのが嫌なら、分かりやすい嘘はかない方がいいですわよ?」

「そんな……。仲が良く無いって噂はなんだったのよ……?」

「私が殿下の求める行為を毎回断っていたからだと思いますわ。
 それと……これ以上私を侮辱する発言をされた時は、名誉毀損で個人的に訴えさせていただきますね」


 ああ……恥ずかしいわ。なんでこんなところで堂々と恥ずかしいことを言わなきゃいけないのよ? 私のせいだけど、恥ずかしすぎるわ!

 軽くレイラを脅した私は「以上です」と口にして席に座った。
 すると、裁判長がレイラにこう問いかけた。


「本当は淫魔の雫を使ったんですか?」

「いいえ。薬を買った男が普通の媚薬だと言っていたので普通の媚薬だと思っていましたの……」


 それからは、レイラの嘘が暴かれて裁判が終わった。

 法廷を出る時のレイラは泣いていたけど、可哀想とは思わなかった。
 それどころか、怒りが湧いてしまった。

 絶対に私の人生を壊そうとしたレイラは許さないわ……!
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