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11. 婚約
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あれから半月が過ぎた休日、私は公爵夫妻である両親と王宮に来ていた。
正式に婚約を結ぶために。
今はアルバート殿下と国王夫妻と向かい合っていて、今後についての話し合いを終えたばかりで、お茶会に似たことをしている。
そんな時、アルバート殿下が立ち上がり、こんなことを口にした。
「レシアと2人きりで話してきてもいいですか?」
頷くお父様とお母様。陛下も王妃様も同じように頷いていて、あとは私の返事待ちという状況になっていた。
差し出される手を取る私。
それから、歩幅を合わせてくれるアルバート様と並んで歩いて、本来は王族しか入ることが許されない庭園に辿り着いた。
そしてその真ん中辺りに来ると、彼は手を止めて、何かを取り出した。
「レシア、手を」
そう言われ、左手を差し出す私。
すると、アルバート様は私の手をとって、煌めくものを指に嵌めてくれた。
「婚約の証として用意したんだ。気に入ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます」
雲ひとつない青空の下、私もアルバート様も心からの笑顔を浮かべていた。
* * *
アルバート様と婚約を結んでから2日、休日が明けて授業がある日になった。
「お嬢様、殿下がいらっしゃいました」
「分かったわ」
朝、学院に向かう準備を終えた私は侍女の呼びかけにそう返すと、屋敷の玄関へと向かった。
玄関に着くと、中までアルバート様が来てくれていて、馬車までは彼にエスコートされて向かった。
乗る時も転んだりしないように手を貸してくれて、うちの使用人が少し困った顔をしていた。仕事が減ってしまったからかしら?
私達が乗り終わると、馬車が動き出した。
「殿下、今日の昼食なのですけど……」
早速、今日の学院での予定を訪ねる私。
すると、彼は不満そうにこう口にした。
「アルバートだ」
「アルバート殿下。これでいいですか?」
「殿下呼びはやめて欲しいな。愛称で呼んでくれてもいいんだよ?」
どうやら彼は愛称で呼ばれたいご様子。
確か王妃様が「アル」って呼んでいたから、それでいいのかしら……?
でも、いきなりそれはハードルが高すぎるわ。
「アルバート様だから、アルで良かったですか……?」
「うん。なんなら、2人きりの時は敬語もやめて欲しいかな」
「分かりましたわ」
そこまで言って、これも敬語だと気付いた。
「……分かったわ」
婚約者同士なら敬語を使わないのは当たり前だし、名前か愛称で呼び合うのも当たり前。
早く慣れないといけない。そんな風に思った。
それから他愛無い雑談を交わしていると、あっという間に学院にたどり着いた。
そして教室に入ると、こんな声がかけられた。
「アルバート殿下、レシア様。ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
笑顔でお礼を言う私達。
この後、セラフィ以外の同じクラスの方からお祝いの言葉を言われて、雑談をする間も無く教授が入ってきた。
ちなみに、セラフィは今日も学院に来ていない。
階段で転んだ時の怪我が酷く、まだ起き上がれない状態だから。
それでもあと1ヶ月もすれば治るそうで、また嫌がらせをされるのではと心配していた。
でも、廊下を並んで歩いている時のアルバート様のこんな言葉で、杞憂に終わりそうだった。
「次にあの女がレシアに手を出したら、社交界にすら出られなくするから安心して。もちろん、怪我をしたりしないように出来るだけ側にいるよ」
「そこまでしなくても大丈夫よ?」
「離れてたら心配だから、そうしたいんだ。レシアは僕の大切な人だから」
そんな言葉と共に抱きしめられて、突然のことに私は逃げようとしてしまった。
でも、後ろにあったのは壁で逃げることは叶わない。
「急に脅かさないでよ……」
「ダメだった?」
見える範囲には誰もいなくて、誰にも見られていないのは分かりきっている。
それなのに、胸の鼓動が治る気配はなくて。
それでも、こうして大切に思われているのが嬉しくて。
私も、彼を抱きしめた。
正式に婚約を結ぶために。
今はアルバート殿下と国王夫妻と向かい合っていて、今後についての話し合いを終えたばかりで、お茶会に似たことをしている。
そんな時、アルバート殿下が立ち上がり、こんなことを口にした。
「レシアと2人きりで話してきてもいいですか?」
頷くお父様とお母様。陛下も王妃様も同じように頷いていて、あとは私の返事待ちという状況になっていた。
差し出される手を取る私。
それから、歩幅を合わせてくれるアルバート様と並んで歩いて、本来は王族しか入ることが許されない庭園に辿り着いた。
そしてその真ん中辺りに来ると、彼は手を止めて、何かを取り出した。
「レシア、手を」
そう言われ、左手を差し出す私。
すると、アルバート様は私の手をとって、煌めくものを指に嵌めてくれた。
「婚約の証として用意したんだ。気に入ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます」
雲ひとつない青空の下、私もアルバート様も心からの笑顔を浮かべていた。
* * *
アルバート様と婚約を結んでから2日、休日が明けて授業がある日になった。
「お嬢様、殿下がいらっしゃいました」
「分かったわ」
朝、学院に向かう準備を終えた私は侍女の呼びかけにそう返すと、屋敷の玄関へと向かった。
玄関に着くと、中までアルバート様が来てくれていて、馬車までは彼にエスコートされて向かった。
乗る時も転んだりしないように手を貸してくれて、うちの使用人が少し困った顔をしていた。仕事が減ってしまったからかしら?
私達が乗り終わると、馬車が動き出した。
「殿下、今日の昼食なのですけど……」
早速、今日の学院での予定を訪ねる私。
すると、彼は不満そうにこう口にした。
「アルバートだ」
「アルバート殿下。これでいいですか?」
「殿下呼びはやめて欲しいな。愛称で呼んでくれてもいいんだよ?」
どうやら彼は愛称で呼ばれたいご様子。
確か王妃様が「アル」って呼んでいたから、それでいいのかしら……?
でも、いきなりそれはハードルが高すぎるわ。
「アルバート様だから、アルで良かったですか……?」
「うん。なんなら、2人きりの時は敬語もやめて欲しいかな」
「分かりましたわ」
そこまで言って、これも敬語だと気付いた。
「……分かったわ」
婚約者同士なら敬語を使わないのは当たり前だし、名前か愛称で呼び合うのも当たり前。
早く慣れないといけない。そんな風に思った。
それから他愛無い雑談を交わしていると、あっという間に学院にたどり着いた。
そして教室に入ると、こんな声がかけられた。
「アルバート殿下、レシア様。ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
笑顔でお礼を言う私達。
この後、セラフィ以外の同じクラスの方からお祝いの言葉を言われて、雑談をする間も無く教授が入ってきた。
ちなみに、セラフィは今日も学院に来ていない。
階段で転んだ時の怪我が酷く、まだ起き上がれない状態だから。
それでもあと1ヶ月もすれば治るそうで、また嫌がらせをされるのではと心配していた。
でも、廊下を並んで歩いている時のアルバート様のこんな言葉で、杞憂に終わりそうだった。
「次にあの女がレシアに手を出したら、社交界にすら出られなくするから安心して。もちろん、怪我をしたりしないように出来るだけ側にいるよ」
「そこまでしなくても大丈夫よ?」
「離れてたら心配だから、そうしたいんだ。レシアは僕の大切な人だから」
そんな言葉と共に抱きしめられて、突然のことに私は逃げようとしてしまった。
でも、後ろにあったのは壁で逃げることは叶わない。
「急に脅かさないでよ……」
「ダメだった?」
見える範囲には誰もいなくて、誰にも見られていないのは分かりきっている。
それなのに、胸の鼓動が治る気配はなくて。
それでも、こうして大切に思われているのが嬉しくて。
私も、彼を抱きしめた。
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