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23. 空気が変わりました
サウディス公爵家の事情を知らされてから2日。今日は休日なのでウィリアム様とテラスでお茶をしている時でした。
「報告いたします! サウディス公爵閣下が側室に刺され、重篤な状態に陥りました!
懸命に治療が行われていますが、助かるかどうかは分からないそうです」
焦った様子の騎士団の方がそんなことを口にしました。
一瞬、治癒魔法があれば治せるのに……なんて思ってしまいましたが、そんなに都合のいい話はありません。
怪我が酷ければ、治癒魔法でも治し切れないのです。
「サウディス公爵が刺されただと……?」
「意識を失う直前、身体中の力を抜かれたと公爵様が言っていたそうです。れでも反撃していて、側室も死の淵を彷徨っているとのことですが」
「そうか……。
公爵の治療を最優先にするように。禁術を使った側室は死んでも構わない」
一気に身体中の力が抜ける……。
正直言って恐ろしいですが、そういう効果の呪いも存在しています。
「分かりました。では、失礼します」
扉を閉める音が聞こえても、何かを話そうとは思えませんでした。
でも、ウィリアム様はこんなことを呟きました。
「公爵が助かれば……だけど、これが解決への近道なのかもしれないね」
「そうですわね……」
何にせよ、サウディス公爵様の側室は極刑に処されるはずです。
だから、今の私達の仕事は……。
「気を紛らわすためにも、この書類を片付けようか」
「分かりましたわ」
一体何枚あるのでしょうか?
大量の書類が私の目の前に置かれました。
◇
あれから1週間。
無事にサウディス公爵様が回復して、王宮内はいつも通りの様子に──戻りませんでした。
というのも、騎士団のトップである兵部卿にサウディス公爵家の本当の長男様が就いてから、少しだけ雰囲気が明るくなったからです。
噂によれば「前の兵部卿は仕事を押し付けてきたが新しい兵部卿様は厳しくても理不尽ではない」と人気になっているようです。
おまけに立場が低い人が相手でも模擬戦に立ち会っていたりしていて、騎士団の人気者になっているそうです。
それを見た公爵様は、長男に爵位を譲る決意をしたと噂されています。
そんな良いことが起きている王宮内ですが、今いる部屋には重い空気が漂っています。
これから行われる裁判で、サウディス公爵家から勘当され平民となったエドガーと対面することになるからです。
私をエドガーに会わせたくないウィリアム様と、会いたくない私の思惑は一致。2人で必死になって顔を合わせない方法を考えています。
でも……。
「もう仮面を被るしか……」
「やっぱり、それしかないですわよね……」
何を考えているか分からない男に素顔は晒せません。何度も見られていたとしても、です。
「しかし、仮面となると……」
「殿下、これはいかがでしょうか?」
ふと、私の後ろに控えていた女性の騎士様がそんなことを口にしながら、頭……じゃなくて、顔まで完全に覆える兜を私達の間に差し出してきました。
「確かにこれなら中身がシルフィとは分からないし、声が籠るから証言もできる。シルフィ、女性の騎士に変装してから参加するというのはどうだろうか?」
「視線を逸らしても分からなさそうですし、それでお願いしますわ」
「そうと決まれば早速試してみよう」
ウィリアム様はそう口にすると、私の体格に合う騎士の装備一式を持ってくるように指示を出しました。
それを待つ間、装備の付け方を教わったり、騎士様の挨拶の仕方などを教わります。
これ自体は普通のマナーに似ていたので簡単に覚えられました。
「お待たせしました。こちらになります」
「一旦、ドレスから着替えた方が良さそうだね」
「ええ、そうしますわ」
裁判まではあと1時間。
少し急がないといけませんね。
「報告いたします! サウディス公爵閣下が側室に刺され、重篤な状態に陥りました!
懸命に治療が行われていますが、助かるかどうかは分からないそうです」
焦った様子の騎士団の方がそんなことを口にしました。
一瞬、治癒魔法があれば治せるのに……なんて思ってしまいましたが、そんなに都合のいい話はありません。
怪我が酷ければ、治癒魔法でも治し切れないのです。
「サウディス公爵が刺されただと……?」
「意識を失う直前、身体中の力を抜かれたと公爵様が言っていたそうです。れでも反撃していて、側室も死の淵を彷徨っているとのことですが」
「そうか……。
公爵の治療を最優先にするように。禁術を使った側室は死んでも構わない」
一気に身体中の力が抜ける……。
正直言って恐ろしいですが、そういう効果の呪いも存在しています。
「分かりました。では、失礼します」
扉を閉める音が聞こえても、何かを話そうとは思えませんでした。
でも、ウィリアム様はこんなことを呟きました。
「公爵が助かれば……だけど、これが解決への近道なのかもしれないね」
「そうですわね……」
何にせよ、サウディス公爵様の側室は極刑に処されるはずです。
だから、今の私達の仕事は……。
「気を紛らわすためにも、この書類を片付けようか」
「分かりましたわ」
一体何枚あるのでしょうか?
大量の書類が私の目の前に置かれました。
◇
あれから1週間。
無事にサウディス公爵様が回復して、王宮内はいつも通りの様子に──戻りませんでした。
というのも、騎士団のトップである兵部卿にサウディス公爵家の本当の長男様が就いてから、少しだけ雰囲気が明るくなったからです。
噂によれば「前の兵部卿は仕事を押し付けてきたが新しい兵部卿様は厳しくても理不尽ではない」と人気になっているようです。
おまけに立場が低い人が相手でも模擬戦に立ち会っていたりしていて、騎士団の人気者になっているそうです。
それを見た公爵様は、長男に爵位を譲る決意をしたと噂されています。
そんな良いことが起きている王宮内ですが、今いる部屋には重い空気が漂っています。
これから行われる裁判で、サウディス公爵家から勘当され平民となったエドガーと対面することになるからです。
私をエドガーに会わせたくないウィリアム様と、会いたくない私の思惑は一致。2人で必死になって顔を合わせない方法を考えています。
でも……。
「もう仮面を被るしか……」
「やっぱり、それしかないですわよね……」
何を考えているか分からない男に素顔は晒せません。何度も見られていたとしても、です。
「しかし、仮面となると……」
「殿下、これはいかがでしょうか?」
ふと、私の後ろに控えていた女性の騎士様がそんなことを口にしながら、頭……じゃなくて、顔まで完全に覆える兜を私達の間に差し出してきました。
「確かにこれなら中身がシルフィとは分からないし、声が籠るから証言もできる。シルフィ、女性の騎士に変装してから参加するというのはどうだろうか?」
「視線を逸らしても分からなさそうですし、それでお願いしますわ」
「そうと決まれば早速試してみよう」
ウィリアム様はそう口にすると、私の体格に合う騎士の装備一式を持ってくるように指示を出しました。
それを待つ間、装備の付け方を教わったり、騎士様の挨拶の仕方などを教わります。
これ自体は普通のマナーに似ていたので簡単に覚えられました。
「お待たせしました。こちらになります」
「一旦、ドレスから着替えた方が良さそうだね」
「ええ、そうしますわ」
裁判まではあと1時間。
少し急がないといけませんね。
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