嫌われた大賢者と未来の竜王 ~「あれ、お前の鱗って金色だったっけ?」隠居した森で見つけたドラゴンの子供が成長しすぎて怖いです~

陽好

文字の大きさ
36 / 37
第1章 王国編

第36話 情報収集

しおりを挟む
 走っているとすぐにバウスさんの声は聞えなくなり、何かしらの施設の壁だらけだった景色は段々と閑静な住宅街のような感じに変わってきた。

「ねえどこ行くの?」

「ん~、もうすぐ着くよ」

「ふ~ん」

 ドレイクは珍しく言葉通りにすぐに止まった。何をするのかと思えば石壁に向かって杖を向け何かしらの呪文を唱えていた。
 ドレイクの呪文が終わると、石壁はガチンゴチンと音を立てながら変形し、少しすると目の前にはアーチが出来ていた。アーチの向こうには小さな鉄の門があり、その向こうには木で出来た扉があった。
 ドレイクは悪そうな顔でにやりと笑うと

「カミラの家へようこそ」

 とそう言った。

「……許可もらったの?」

「……いや、まだもらってない」

「……殺されない?」

「…………き、綺麗に使えば問題無いんじゃないか?」

 ドレイクはそう言うと下手くそな口笛を吹きながらアーチをくぐっていった。


*****


「やっぱりこうなったなぁ~」

 ドレイクはカミラさんのソファに寝転がり、おいてあった干し肉を囓っている。

「さっきは中将の居場所を探して手紙を渡すって言ってたけどさ、どうやって探すつもりなの? なんか知ってるの?」

「いぃや、なんにもわからん」

「じゃあどうするの?」

「覚えとけ、大体の大きな街には情報屋ってのがいるんだよ。そいつらならその街の事なら大抵何かしらは知ってる。だからとりあえず情報屋に聞いて回るところから始めよう」

「オッケー」


――翌朝

「じゃあそろそろ行くか」

「どこ行くの?」

「そんなもん決まってんだろ、スラムだよ」

「スラムってあのスラム? そんなとこに何しに行くの?」

「ガキンチョに仕事をしてもらうんだよ」

「?」

「まあ俺だけでも大丈夫だからここにいてもいいぞ?」

「いや、行くよ。一人でいてもつまんないし……けど一個訊いていい?」

「ん? なんだ?」

「それってどこにあるの?」

「門の外だな。俺たちが入ってきた門とは別の門の外に広がってる」

「そこにはどうやって行くの?」

「どうやってって、そんなもん歩いてに決まってんだろ?」

「いや歩いて行くのは分かるけどさ、僕たちって昨日脱獄したわけじゃん?」

「そうだな」

「そしたら普通は探されてる訳じゃん?」

「うん」

「むりじゃん」

「まあ地上は見張られてるかもなぁ」

「……地上はってことは地上以外から行くつもりって事?」

「ご名答」

 ドレイクはニヤッと笑うと玄関を開けた。
 何をしに行くのかはよく分からなかったし、どうやって行くのか見当もつかなかったが、兎に角ドレイクについて行った。
 
 玄関の前に出たドレイクは、昨日カミラさんの家に入るときにしたように、今度は玄関の前の地面に向かって呪文を唱えていた。
 ドレイクが呪文を唱え終わり立ち上がると、地面からマンホールのような形をした物がせり上がってきた。
 蓋を開けるとそこにはそのまんまマンホールの中のような空間が広がっていたが、側面は何もついていないただのツルツルの壁で、しかしその穴はそこが見えないほどに深かった。

「これは……なに?」

「地下通路の入り口だな」

「てことはこれを降りて行くって事だよね?」

「そうだぞ?」

「……え? どうやって?」

「見りゃぁ分かるじゃねえか、飛び降りるんだよ」

「……なぜ?」

「……いや、下の地下通路に行くためだろ」

「いやいやいや、もぉ~、冗談はいい加減にしてよ~。ほんとはそれ以外にも方法あるんでしょ? 知ってんだから」

「いや無いぞ? シンプルに飛び降りるだけだ」

「……なぁんで飛び降り自殺みたいな方法しか用意しないのぉ! 普通こういうのには梯子がついてたりロープがついてたりするでしょうがぁ!! なんで飛び降りなのぁ!!!」

「そんなこと俺に言われてもなぁ、作ったのカミラだしなぁ」

「グッ、……なんでカミラさんに注意しなかったの!!」

「アッハッハッハ、お前横暴過ぎるだろ、アッハァー!」

「いやだってこの高さから飛び降りたら絶対死ぬじゃん! よくて下半身粉々だよ」

「イッヒィー、フゥ。そうだぞ、もし誰かが追いかけてきても墜落して死ぬくらいの高さに掘ったって言ってたからな」

「悪辣すぎるわ!!」

 ドレイクは笑いすぎて苦しそうにもだえていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

処理中です...