追放王子の流刑地脱出劇!〜背に腹はかえられないので罪人をパーティに入れようと思います!〜

天海二色

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第四章 王城が大変なことになっているんだが?

第三十四話 オーウェンの禁術

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「つまり」

 オーウェンの話を一通り聞いたヴィクトールは、自分から目を逸らし冷や汗をかいている彼を冷ややかな目で見下ろす。

「貴殿は古代魔法を元にして作った『傀儡化』の禁術を大臣に盗用され? 製造者本人である貴殿の魂がペンダントに封じられたと?」
「さ、左様で……」

 ドンッ!
 ステッキが絨毯越しに床に叩き付けられる。

「愚か者! 精神操作が禁術に指定されているのだ、魂を操る魔法も禁忌と容易にわかるだろう!?」
「た、た、正しく古代魔法を読み解けたかっ! 証明をしたくなりまして……っ!」
「証明したいからと着手をするでないっ! これだから研究者肌の人間は……っ!」
「禁術になってしまうのは自覚しておりました! なので完成を見届けた後、わたくしは使用した魔法資料を自ら焚書し、痕跡を残すことはしませんでした!」
「痕跡を残していないのならば、なぜ大臣が貴殿を封じ込めることができたのだ!?」

 オーウェンはその問いに言葉を詰まらせ、目を泳がせながらも答える。

「おっ、恐らくわたくしの研究室に忍び込み、資料を目にしたのかと……。大臣は魔塔のスペアキーを所持しておりますので……」

 オーウェンの私室は王城の一室に用意されているのだが、彼は大臣からの出動命令が来ない間は魔塔に入り浸り、魔塔の所長室を自室とし帰ることがないのだという。
 魔塔は関係者以外、何人たりとも入ることができない規則がある。魔法研究の漏洩に厳しく、機密性を高くする為だ。しかしオーウェンの直属の上司の立場である大臣は関係者として入ることができる。魔法資料を閲覧することも可能。
 つまりオーウェンは魔塔自体の機密性に胡座をかき、杜撰な管理をしていたことになる。

「貴様それでも魔塔の主か……?」
ごめんなさいかにな! 昔がら片付けとろけるのは苦手で……っ!」

 鋭い目で見下ろしてくる、ヴィクトールの圧倒的な威圧に押し潰されそうになり、オーウェンは思わず訛りを出しながら更に深く頭を垂れた。

「あ、あの~。オーウェン殿?」

 助け舟という訳ではないが、今にも雷を落としそうなヴィクトールがクールダウンをする時間を作る為、レオナルトがおずおずといった様子で話に入る。

「そのオーウェン殿の魂を込めることに成功した、という大事なペンダントが、どうして闇市の雑貨店に……?」

 レオナルトがロケットペンダントをオーウェンに触れさせたら、オーウェンは正気に戻った。
 そのことから、魂を本人に接触させるのが魔法を解くトリガーなのだとわかる。ならばロケットペンダントを触れさせないよう、金庫にでも仕舞えばレオナルトの手に渡ることもなく、大臣のクーデターは成功していたかもしれない。しかし大臣はそうしなかった。レオナルトはそれが引っかかっていたのだ。

「あ、あぁ。それは魂……今回はペンダントですね。それが体の近くにあると、触れることがなくともその内、戻ってしまうのですよ。また、ペンダントを壊した場合も、魔法陣に傷がつくので魂が解放され戻ってきます」

 大臣の住居がある貴族街や王城周辺にロケットペンダントを置けば、そのうちオーウェンの魂が戻る。だからと大臣はその立場から、王都から気軽に出ることはできない。精々、視察という体で貧困街へ出かける程度だ。
 そこで雑貨店に目を付け、クーデターが終わるまで保管させようと、まどろっこしい手を打った。間違っても貴族街に流れないよう、非売品の装飾とするよう頼んだのだが……物見遊山でやってきたレオナルトに目を付けられてしまったのが、大臣の運の尽きと言えよう。

「ペンダントが玉座の間に持ってこられた時は、大いに焦ったでしょうね。なので更に遠ざけようと、アスタロス島までペンダントごとレオナルト王子を転送したのです」
「マジでペンダントで追放されたのか……」

 話を聞いていたグレンがぼそりと呟く。

「やっと信じてくれたかグレンっ!」
「あぁ。王子ってのはまだ飲み込めてねぇけどな」
「んえっ!? それこそペンダント以上に信じて欲しいのだが!?」

 ともあれ、オーウェンという最凶の魔法使いを手にした大臣は、今まで空想に留めていたクーデターを実行へ移し、今日の騒動が起きたという訳である。
 ヴィクトールは両腕を組み、深いため息を吐いた。

「王城の被害を確認した後は、魔塔の精査をせねばならぬな……。オーウェンの処罰はその後、考える」
「あ、兄上。オーウェン殿は被害者ですし、どうかご温情を……」
「レオナルトよ、そもそもこやつが禁術に着手したのが原因だぞ? がアスタロス島へ転送されてしまったのも……」
「そっ、それでも! 彼の研究心が王国にもたらした貢献は大きいのですからっ!」

 必死に訴えるレオナルトの目には、熱意がこもっていた。
 魔法を愛し、魔塔入所を夢として掲げるレオナルトにとって、オーウェンは憧れの対象。禁術を作れてしまうのも、卓越した才能があってこそ。

「たった一度の誤りで失脚させてしまうのは、王国の損失ではないでしょうか!?」
「一度……」

 レオナルトのその言葉を聞いたヴィクトールは、ちらりとオーウェンへ視線を向けた。
 するとオーウェンがサッと顔を逸らす。この反応からして、禁術に着手したのは一度や二度でないことが察せられた。

「……彼がどれほど有用な存在であっても、処罰は免れん」
「兄上っ!」
「だが、だ。処罰をどうするかは父上……国王陛下が決めることだ。オーウェンはの効果を知る研究をした。その研究を大臣に盗用された、という旨は、私から伝えておこう」

 嘘ではない。禁術にまで昇華した、と言っていないだけで。
 これだけで大分、処罰が軽減される。レオナルトはパァッと明るい表情を浮かべると、

「ありがとうございます、兄上!」

 頭を下げ、感謝の意を示した。

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