毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜 

天海二色

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第十五章 平和が終わる日

第323話 シティボーイ

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 都会に上京し寮に入って、早3ヶ月。
 医大での大学生活は……すっげぇ居心地が悪かった。
 普通に通学していた同級生の連中はグループができあがっている後だし、何とか輪に入ろうにも辺鄙な田舎出身な俺とじゃ、話題が合わなくて会話が続かないし、そもそも俺が年下だからかやっかんできたりガキ扱いしてきたりで、まともに接触できねぇ……。
 すっかり忘れてたけど飛び級してたんだった、俺。
 地元じゃ年齢バラバラの子が同じ教室で授業するとか(教科書とか先生の指導は対象の子によって変わるけど)当たり前だったから、年上年下とか気にした事なかったなぁ。
 これが卒業まで、つまりあと2年続くのか。ゆ、憂鬱……。

「……クララ、元気してっかなぁ」

 俺はベッドと勉強机、あとクローゼットしかない寮の自室で哀愁に浸る。
 一人部屋なんだから当たり前なんだろうけど、都会の部屋めっちゃ狭い。実家は大の大人5人くらい平気で雑魚寝できるような部屋で過ごしてたから、息苦しい。
 空も曇っている時が多くて、しかも背の高いビルが所狭しと建ってて、それでいて夜になっても街灯で明るくって、クララの言う通り星見には向かない。
 そのビルの中には屋上に天文台があったり、プラネタリウムもあるみたいだけど、そんなのを利用するより、故郷で夜空を見た方がよっぽど楽しめる。

 けど今は12月! もう少ししたら冬期休暇に入るから、帰省ができる!
 だから耐えろ、俺。

(……。集中力切れたっぽいから、勉強はとりあえず切り上げて、外の空気を吸うかぁ)

 俺は参考書とノートを勉強机に置いたまま席から立ち上がって、最低限の貴重品だけ持って、自室に鍵をかけると寮の外に出た。
 クリスマスシーズンが近付いているから、街の装飾はクリスマスの飾り付けでギラギラしている。今は昼間だけど、これが夜になったらイルミネーションの灯でド派手になるんだろうなぁ。
 なんて考えながら、俺はひっきりなしに車が行き交う車道の脇、人が蟻んこみたく列をなして歩いている狭い歩道を歩く。……ここも息苦しいな。早いとこ公園行くか。

「やっ。シティボーイくん」

 そんで公園に向かう途中、聞き慣れた声が真後ろから聞こえてきて、俺はギョッとした。
 そんなまさか。って思いながら振り返ると、キャラメル色の髪をハーフアップにまとめた幼馴染、クララがそこにいた。

「クララ!?」
「あは」

 よく俺がここ歩いているのわかったな!? いやそれより、何でクララがここに!? 連絡もなしに!
 するとクララは、俺が訊く前にここにいる理由を答えてくれた。

「家出してきちゃった」
「家出ってお前……!」
「ね、来たら案内してくれるんだよね? シティボーイくん?」

 ズイと顔を至近距離まで近付けてきて、俺は大袈裟に仰け反る。

「わっ、わかったわかった! あんまり立ち止まってちゃ他の通行人の邪魔になるし、移動もかねて案内してやるよ!」

 俺は大声を出しちまった事で通行人達から注目を集めているのを感じつつ、クララの手を引いて早々にその場から離れた。
 そんで公園に駆け込んで、空いてたベンチにクララを座らせ、自販機で買ったカフェラテをやる。それから、俺もベンチに座ってじっくり話をした。

「何で家出しちゃったんだよ。おじさんと喧嘩でもしたのか?」
「そんな所~」

 クララはカフェラテを飲みながら、ちょっと不機嫌そうに肯定する。

「うちのクソ親父が紹介してきた婿候補、くっそ年上のおっさんでさ~。ないないって断ったら怒鳴られちゃって」
「えっ!? 婿候補!? おっさん!?」
「何でもそいつ、小金持ちって奴らしくてさ。金が入るから結婚させたかったんだろうけど、流石にアレはないわ~。で、あたしも怒って飛び出してきちゃった」
「こっ、行動力あるなぁ」

 地元からここまで、新幹線を経由しても5時間はかかるってのに。
 それにしても婿……。いつかこの話は来ると思っていたけど、いざ聞くとちょっと、いや大分、落ち着かない。

「で、どうするんだよ。俺が入っている寮は男子寮だから、お前入れらねぇんだけど」
「おっ。さり気なく女子を連れ込もうなんて、大胆だねぇ」
「そっ、そういう意味じゃなくてだな! 俺の所に来たって事は頼りに来たって事だろ!? そもそもガキの頃から何度一緒に寝てると思って……!」

 あ、やべ。公共の場で誤解を招きそうな発言しちまった。
 にやにや笑うのやめてくれクララ……!

「あは。わかってるよ、心配してくれてるの。だいじょーぶ、夕方には帰るよ。その頃にはうちのクソ親父折れてくれるだろうし」
「そうなのか?」
「うちの親の扱いはあたしが一番わかっているからね~」

 そう話すクララには悲壮感がないから、本当なんだろうな。

「それなら、案内に戻るけど……。え~っと、あ、そうだ! 近くのショッピングモールに入らねぇか? まずは腹拵えしよう、腹拵え!」
「おお、シティボーイらしい振る舞いだね~」

 こんなに早くクララが来るとは思っていなかったけど、約束の日が来た時に備えて、ちゃんと下調べしてたんだぜ?
 俺は早速、クララを連れショッピングモールの中に移動すると、女の子におすすめって雑誌に載ってた小洒落たカフェに入店した。
 俺は無難にガレットを注文したけど、クララは飯じゃなくてアプフェルシュトゥルーデル(※りんごのケーキ)を頼んでテーブルに運んで貰ってた。粉砂糖がたっぷりまぶしてあって、でっかいバニラアイスが添えられる、めちゃくちゃ甘そうなやつ。

「わ~、大きなケーキにアイス! これが映えって奴?」
「た、多分?」

 自分の目の前に置かれたケーキを見て、クララは目を輝かせ携帯端末で写真撮ってるし、これでいい、のか?
 満足するまで写真を撮ったら丁寧に切り分けて食べ始め……いや食べるの早いな!? すげぇ、なかなかデカかったのにペロっといった! そんだけお腹空いていたのか、それとも甘い物は別腹ってやつか。

「美味しい。ありがとね、シティボーイくん」
「お、おう」

 何にせよ、口に合ったんならよかった。
 腹拵えが終わったら遊びだ、遊び! 俺もここのところ勉強詰めで、リフレッシュしたかったら丁度いい! ずっと行きたかったけど行けなかった、ゲームセンターデビューだ!
 カフェを出た俺はクララを連れてショッピングモールの上の階にある、ゲームセンターの区域へ向かった。
 そんで話に聞いていた卵型機器カプセルシミュレーターの前に立った。

「どうだクララ! これが話題のシミュレーターだぞ!」
「自分の物じゃないのに我が物しててウケる」
「そりゃ村じゃ絶対見られねぇ代物なんだ、興奮もするだろ! カーレースとか体験できるし、クララもやってみようぜ!」
「えぇ~。車はあんまり興味ないかなぁ」
「え? そ、そうか? 車以外だと洞窟探険とか射撃とか、ホラーゲームとか?」
「おっ、ホラーゲームいいねぇ! 臨場感あって楽しそう。やってみようよ」
「……マジ?」

 その後、俺はシミュレーターの中でクララに引っ張られて(てか引きずられて?)、半透明のゴーストがうろつく洋館の中を一時間くらい冒険するハメになった。
 クララはゴーストが脅かしてきてもけらけら笑って楽しそうだったが、俺は口から魂が抜けるかと思ったんだけど? くそぅ、カッコいい所見せたかったのに……!
 次! 次にプレイする時は頼れる大人の男になってやるんだからな!?
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