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連載
302 ゴーストシップ②
しおりを挟む(な、なんだこいつらは……)
セシルは困惑していた。
五天魔であるイエラと匹敵する程の魔導を放つゼフ。
高レベルの魔物を、何やら奇妙な剣術で圧倒するクロード。
異常な回避力、全く攻撃の当たる気配のないレディア。
その戦闘力は強兵揃いの白鷹の旅団においても、比較にならない程だ。
(無名ギルドにも関わらず、外の世界の調査という重大任務についているだけはある……か)
スケルトンパイレーツと斬り結びながらセシルは考える。
もしかしたら私よりも……いや、それはありえないだろうが、近い実力はあるかもしれない。
「カァァァア!」
「……ふん」
スケルトンパイレーツの斬撃を軽くいなし、その頭部を真っ二つに斬り割るセシル。
当然、セシルは精鋭揃いのギルドである白鷹の旅団、そのギルドマスターとしての実力も持ち合わせている。
実際その剣技はクロードに優るとも劣らない。
「もう一発……!」
不意に、真横で放たれる強烈な閃光。
ゼフの放ったプラチナムブレイクが、ゴーストシップの船体を焼く。
凄まじい光の奔流に、セシルは思わず目を覆った。
(何という馬鹿げた火力だ……が、しかし)
ニヤリ、と笑みが零れるのを隠す。
セシルはゼフのプラチナムブレイク、その弱点に気づいていたのだ。
――――それは非常にタメが長い事。
魔導を剣に込め、更にそれを振るう事で放たれる一撃は確かに脅威。
だが余程集中しなければ出せないのだろう、一連の動作中ゼフは完全に無防備である。
それゆえ、仲間たちが魔物から守っているのだろうが。
(これは使える……とはいえ万が一にも私が邪魔をするのが彼女たちに見られるのはマズい。何とか機会を見計らって集めた魔物を押し付ければ……ふふふ)
ほくそえみながら、セシルは群がる骨共を相手取る。
二体、三体……わざと倒さぬよう、出来るだけ自然に交戦する相手を増やし押し込まれていく。そう見せる。
一歩、一歩と下がっていき、ゼフのすぐ後ろまで下がったセシルは出来るだけ不自然にならぬよう、よろめいた。
(よし、このままバランスを崩すふりをして……っ!)
スケルトンパイレーツの斬撃を、躱そうとした瞬間である。
レディアの長斧がセシルの前にいたスケルトンパイレーツを全て、薙ぎ払う。
バラバラに弾き飛ばされたスケルトンパイレーツの残骸が、海に散らばってしまった。
「な……っ!?」
「大丈夫っ!? セシるん!」
「せ、セシるん……?」
溜めておいたはずのスケルトンパイレーツの群れも気づけば残らず倒されている。
消えゆく骨の中心に見えるのは、金色の髪をなびかせ剣を鞘に納めるクロードの姿。
そのどこか危うい美しさにセシルは思わず目を奪われる。
「ふふ……ちゃあんと一体に攻撃を集中して、確実に倒していかないとダメですよ……一体ずつ、一体ずつ……ね」
「んなっ……!」
思わず言い返そうとして、口を噤む。
(そんなものは戦闘の初歩の初歩! わかっていてやったに決まっているだろうがっ!)
などと言える筈もあるまい。
セシルは歯噛みをしながらも、二人に頭を下げた。
「あ、ありがとう……助かったよ二人共……」
「どういたしまして~」
「……まだまだ来ます、気を付けてください。……それと周りにもう少し気を配った方がいいですよ?」
そう言って薄く笑うクロードに、セシルは背筋が寒くなる思いがした。
もしかして私の考えを……? いや、流石にそれはあるまい。
セシルは自身の考えを無理矢理打ち消して、次の作戦を考え始める。
(だがただ魔物を少々集めた程度では、ぶつける暇もなく倒されてしまう……やはりボスか最低でも中ボスクラスの魔物が来なければ……)
ちらりとゴーストシップの方を見ると、またもゼフの放った白金の閃光がそのどてっぱらを直撃している。
イエラと二人、交互に放たれるブラックゼロとプラチナムブレイクは、ゴーストシップの魔力値を確実に削っていた。
光が薄れていくと共に、ゴーストシップの船体がボロボロと崩れ落ちていく。
「……来るぞ」
ゼフの言葉の直後、崩れゆく外殻の中からあらわれたのは、骨を接ぎ合わせたような船体。そしてそこから何本もの霊体のような手を何本も蠢めかせるゴーストシップであった。
船体の中心部に埋め込まれた大きな髑髏の瞳が、真っ赤に光る。
発狂モード、魔力値が一定以下になるとボスクラスの魔物はその姿を変貌させ、大幅に強化されるのだ。
「ふん、それがどうした――――ブラックゼロ」
直後、放たれるイエラのブラックゼロ。だがしかし、ゴーストシップはその青白い手で甲板にいたスケルトンパイレーツを掴み、ブラックゼロへと投げつけてきた。
「なんじゃとっ!?」
風の刃はスケルトンパイレーツに直撃し、その威力を殺されてしまったのだ。
愚鈍な相手故、大技の連発で削っていたイエラとゼフであったが、これからは同じようにはいくまい。
戸惑う彼らに構わず、ゴーストシップは更に船上のスケルトンパイレーツを掴み、エイジャス号へと投げつけてくる。
「わわっ! ちょっ! 危ないってばっ!」
慌てて避けるレディア。
他の者たちも相当混乱しているようだ。
縦横無尽に投げ入れられる魔物により、陣形はどんどん乱れていく。
すぐに甲板の上は乱戦状態になってしまった。
(これはチャンスだ!)
セシルは考える。
ゼフの周りにぴったりとくっついていたクロードもレディアも、魔物に囲まれ手一杯のようで、すぐには駆けつけられない。
それに運よく、セシルはゼフと比較的近い位置にいる。
(この大混乱、何が起こっても不思議ではない……!)
雪辱を晴らすことが出来る、いい機会である。
ニヤリと笑いながら、セシルは目の前の魔物と対峙しつつ、復讐の機会を窺うのであった。
「ちっ、癪な攻撃をしてくるではないか……!」
発狂モードとなったゴーストシップ、その攻撃手段は魔物を投げつけてくるというものであった。
大味だがその戦法は十分効果的な様で、ワシらはあっさりと陣形を崩されてしまった。
スケルトンパイレーツの攻撃を義手で受け止めつつ、ホワイトクラッシュで破壊する。
クロードもレディアも、こちらに近づきたいようだが魔物に囲まれて動きが取れないようで、こんな状態ではプラチナムブレイクは使えない。
ボスを倒してしまわねば幾らでも魔物を投げつけてくるというのに……くそっ。
ミリィたちも念話で呼んではいるが、恐らく船外への出口が狭くそこで足止めされているのだろう。
しかも二日酔いを喰らっているしな……増援はあまり期待できそうにない。
(まずは周囲の魔物を排除し陣形を組み直す。でなければ攻撃のしようがないからな)
とはいえ広範囲の魔導は、この乱戦状態では仲間まで巻き込んでしまう恐れがある。
エイジャス号にダメージを与えても危険だし――――そうだ、アレを使ってみるとするか。
だがこれまた隙がデカいんだよな。
近くにいるのは……セシルか。まぁいないよりはマシだろう。
「セシルっ! 少し時間を稼いでもらえるか!」
「っ! ま、任せてくれたまえ!」
……何だか妙に嬉しそうな顔をしている。
よくわからんがやる気があるのはいい事だ。
この戦闘で恐らくワシらの事を見直したのであろう。
目論見通りだな。
くっくっ、と笑いながらワシは魔力を集中させていくのだった。
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