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ボコる決意をする二人
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「つっっかれたーーー!」
村へ着いたカオリはぐったりと地面に腰を下ろす。
馬が逃げていたため、カオリが馬車を引いてきたのだ。
あれだけの荷物と人間が乗っていたのだ、さぞ重かったろう。
「助かったよ。カオリ」
「せやろ? もっと褒めていいのよ」
「流石、最高、出来る嫁をもって幸せだ」
俺がべた褒めすると、カオリは次第に顔を絡め始める。
首を左右に傾げながらニヤニヤし始めた。
「ち、ちょっと照れるな~」
ちょっとどころじゃないだろ。
結構照れ屋なんだよな。
「えぇとその、お忙しいところお邪魔して申し訳ないのですが……」
いちゃついていると、ツェルトが声をかけてきた。
「ありがとうございました。ユキトさんたちが来てくれねばどうなっていたか……」
「いや気にすんな。俺はただ布団カバーが早くほしかっただけだしな」
「……そのように気を使われて、恐縮です」
残念ながら事実なのだ。
実際ここに来たのもただの偶然&暇つぶしである。
そんなに感謝されるとその、困る。
「ところでそちらの美しい女性はユキトさんのお連れの方ですか?」
「あぁ、妻のカオリだ」
「なんと! 奥様でしたか! 道理でお美しい」
「いやー照れるにゃー」
カオリはツェルトのヨイショで、また顔を赤くしていた。
おーい、帰ってこーい。
社交辞令だぞー。
「それにすさまじい戦闘力。御見それしました」
「ふふーん、ユキトくんも同じくらいすごいんだよ!」
「おお! やはりそうなのですか?」
「そんな事ないんだが……」
カオリの奴、俺のハードルまで上げるなよ。
俺の能力はお前の足元にも及ばんわ。
「謙遜してるのよ」
「やはりそうですか!」
全然違うんだが、まぁいいや。
否定するのも面倒である。
「しかしふむ、やはりそうなのか……」
ツェルトはぶつぶつ言いながら、何か考え込んでいる。
一体何なのだろうかとカオリと顔を見合わせていると、おもむろに頭を下げてきた。
「お願いします! ユキトさん、カオリさん。よろしければ我々の護衛をしていただけませんか!?」
ツェルトの言葉に、俺とカオリはまた顔を見合わせるのだった。
――――曰く、最近あの辺りには魔族が住み着いたらしい。
行商を襲い、金品を強奪する野盗じみた連中。
ただの野盗であればそう苦戦もしないのだが、腐っても相手は魔族である。
被害は増え続け、何度も討伐隊が出動したのだが本拠地どころか道中で返り討ちにされたらしい。
事を重く見たツェルトは今回10人もの腕利き傭兵を雇ったのだ。
ただの魔族であればそれでも逃げ切るくらいは出来るはず……だがその見通しは外れてしまった。
どうやらかなり上位の魔族らしく、あっという間の瞬殺劇だったそうだ。
「あの道は我ら行商が長い時間をかけて切り開いたもの……あれがなくては物資の流通が止まってしまいます! 是非、お力を」
「ふむ……」
少し考え込む。
確かに物資の流通が滞るのは問題だ。
何せこの村にはまともな道具がないのだ。
俺たちの生活を現代日本生活よろしく、より快適にするには、物資の流通が不可欠。
あまり目立ちたくないではあるが、もうツェルトさんの前で思い切り戦ってしまったからなぁ。
仕方ない事ではあったが、想定通り面倒ごとに巻き込まれてしまった。
まぁ深く考える事もはやめておこう。
本当に嫌な事ならば断ればいい。俺はノーと言える日本人だ。
「おっけー。問題は何とかしよう」
「本当ですか!?」
「あぁ、だが護衛としてじゃあない。元凶たる魔族を追っ払ってくればいいんだろう」
「なんと、そのような事が可能なのですか!?」
俺の言葉にツェルトさんは目を丸くしている。
そこまで言われると少し不安になってくるが……まぁなんとかなるだろう。
どうしても勝てそうになかったら逃げればいいしな。
「まぁやってみるさ」
「おお、なんと心強い……」
実際問題として、防衛するよりはこちらから攻撃した方が難易度は低い。
だってまぁその、言っちゃ悪いが彼らは足手まといだろうから。
「ところで布団カバーはどうなった?」
「実は申し上げにくいのですが、連中の攻撃で……」
馬車の中から出てきたのは、ボロボロになった布袋である。
肌触りはすべすべで、硬すぎもせず柔らかすぎもせず、丁度いい布団具合だ。
これに羽毛を敷き詰めて寝たらさぞかし気持ちよかろう。
間違いない。絶対にそうだと確信を持てる品物だ。
そう思えば思う程、カバーを握る手に力がこもる。
「ゆ、ユキトさん? どうなされたのですか」
「……そう」
「えっ? なんですって?」
「殺そう。あいつらを殺そう」
気づけばそう、呟いていた。
寝具で殺意を抱けるなんて、我ながらヤバいな。
「ユキトくん怖すぎワロタ」
「へへっ、照れるぜ」
「いやーシャレにならないっす」
カオリは冗談めかして言ってるが、ツェルトはガチで引いている。
すまない。正直自分でも引いている。
「まぁ任せておいてくれよ。ツェルトさん」
「た、頼もしい限りです……ははは」
そんなわけで街道のお掃除大作戦が始まったのだった。
俺の快適な暮らしを邪魔する奴は、魔族だろうとなんだろうとぶっ潰す。
村へ着いたカオリはぐったりと地面に腰を下ろす。
馬が逃げていたため、カオリが馬車を引いてきたのだ。
あれだけの荷物と人間が乗っていたのだ、さぞ重かったろう。
「助かったよ。カオリ」
「せやろ? もっと褒めていいのよ」
「流石、最高、出来る嫁をもって幸せだ」
俺がべた褒めすると、カオリは次第に顔を絡め始める。
首を左右に傾げながらニヤニヤし始めた。
「ち、ちょっと照れるな~」
ちょっとどころじゃないだろ。
結構照れ屋なんだよな。
「えぇとその、お忙しいところお邪魔して申し訳ないのですが……」
いちゃついていると、ツェルトが声をかけてきた。
「ありがとうございました。ユキトさんたちが来てくれねばどうなっていたか……」
「いや気にすんな。俺はただ布団カバーが早くほしかっただけだしな」
「……そのように気を使われて、恐縮です」
残念ながら事実なのだ。
実際ここに来たのもただの偶然&暇つぶしである。
そんなに感謝されるとその、困る。
「ところでそちらの美しい女性はユキトさんのお連れの方ですか?」
「あぁ、妻のカオリだ」
「なんと! 奥様でしたか! 道理でお美しい」
「いやー照れるにゃー」
カオリはツェルトのヨイショで、また顔を赤くしていた。
おーい、帰ってこーい。
社交辞令だぞー。
「それにすさまじい戦闘力。御見それしました」
「ふふーん、ユキトくんも同じくらいすごいんだよ!」
「おお! やはりそうなのですか?」
「そんな事ないんだが……」
カオリの奴、俺のハードルまで上げるなよ。
俺の能力はお前の足元にも及ばんわ。
「謙遜してるのよ」
「やはりそうですか!」
全然違うんだが、まぁいいや。
否定するのも面倒である。
「しかしふむ、やはりそうなのか……」
ツェルトはぶつぶつ言いながら、何か考え込んでいる。
一体何なのだろうかとカオリと顔を見合わせていると、おもむろに頭を下げてきた。
「お願いします! ユキトさん、カオリさん。よろしければ我々の護衛をしていただけませんか!?」
ツェルトの言葉に、俺とカオリはまた顔を見合わせるのだった。
――――曰く、最近あの辺りには魔族が住み着いたらしい。
行商を襲い、金品を強奪する野盗じみた連中。
ただの野盗であればそう苦戦もしないのだが、腐っても相手は魔族である。
被害は増え続け、何度も討伐隊が出動したのだが本拠地どころか道中で返り討ちにされたらしい。
事を重く見たツェルトは今回10人もの腕利き傭兵を雇ったのだ。
ただの魔族であればそれでも逃げ切るくらいは出来るはず……だがその見通しは外れてしまった。
どうやらかなり上位の魔族らしく、あっという間の瞬殺劇だったそうだ。
「あの道は我ら行商が長い時間をかけて切り開いたもの……あれがなくては物資の流通が止まってしまいます! 是非、お力を」
「ふむ……」
少し考え込む。
確かに物資の流通が滞るのは問題だ。
何せこの村にはまともな道具がないのだ。
俺たちの生活を現代日本生活よろしく、より快適にするには、物資の流通が不可欠。
あまり目立ちたくないではあるが、もうツェルトさんの前で思い切り戦ってしまったからなぁ。
仕方ない事ではあったが、想定通り面倒ごとに巻き込まれてしまった。
まぁ深く考える事もはやめておこう。
本当に嫌な事ならば断ればいい。俺はノーと言える日本人だ。
「おっけー。問題は何とかしよう」
「本当ですか!?」
「あぁ、だが護衛としてじゃあない。元凶たる魔族を追っ払ってくればいいんだろう」
「なんと、そのような事が可能なのですか!?」
俺の言葉にツェルトさんは目を丸くしている。
そこまで言われると少し不安になってくるが……まぁなんとかなるだろう。
どうしても勝てそうになかったら逃げればいいしな。
「まぁやってみるさ」
「おお、なんと心強い……」
実際問題として、防衛するよりはこちらから攻撃した方が難易度は低い。
だってまぁその、言っちゃ悪いが彼らは足手まといだろうから。
「ところで布団カバーはどうなった?」
「実は申し上げにくいのですが、連中の攻撃で……」
馬車の中から出てきたのは、ボロボロになった布袋である。
肌触りはすべすべで、硬すぎもせず柔らかすぎもせず、丁度いい布団具合だ。
これに羽毛を敷き詰めて寝たらさぞかし気持ちよかろう。
間違いない。絶対にそうだと確信を持てる品物だ。
そう思えば思う程、カバーを握る手に力がこもる。
「ゆ、ユキトさん? どうなされたのですか」
「……そう」
「えっ? なんですって?」
「殺そう。あいつらを殺そう」
気づけばそう、呟いていた。
寝具で殺意を抱けるなんて、我ながらヤバいな。
「ユキトくん怖すぎワロタ」
「へへっ、照れるぜ」
「いやーシャレにならないっす」
カオリは冗談めかして言ってるが、ツェルトはガチで引いている。
すまない。正直自分でも引いている。
「まぁ任せておいてくれよ。ツェルトさん」
「た、頼もしい限りです……ははは」
そんなわけで街道のお掃除大作戦が始まったのだった。
俺の快適な暮らしを邪魔する奴は、魔族だろうとなんだろうとぶっ潰す。
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