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47話 人類同盟の中の悪意と善意
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ふーすっきりした。言いたい事を言うって気持ちいいね。中々言えないけど。
言われた人類同盟側は、若造が好き放題言いおって!って顔をして憮然としていた。
デヴェロア総長も同じであったがすぐに表情を笑顔に戻し、両手を挙げてオーバーリアクションで言った。
「すっすばらしいですね。アマタ様!どうか人類同盟の私の代わりに総長になってくださいませんか!私どもが間違っていました!人類同盟の至らなさに恥じ入るばかり!デアフレムデであるアマタ様なら人類同盟を正し、あるべき未来へと導いてくださると確信しました!」
ここまで言われているのに、それでも何とか僕を勧誘するのか。でもまぁ。
「え?嫌です」
断るけどね。
「何故だ!」
「いやだって人類同盟って長い歴史を持った組織ですよね?」
「ええ。前回のアポリオン襲来の後、また同じことがあった場合を想定して作られ、その後ずっとアポリオンに備えてきた組織です。それが?」
デヴェロア総長が、胸を張って言う。
ああ、一応そのあたりは誇れるとは思ってるんだ。
「という事は、派閥やら面倒くさいしきたりやら、暗黙の了解やらがあるんでしょう?」
知らない事によるちょっとした失敗でも、え~そんなことも知らないのープークスクスとか笑われたり田舎者だとか、所詮は若造だって馬鹿にされるのが落ちだ。そんなのやってられるか。
「ご安心ください。ならば私がそばに付き、組織の運営についてお教えしましょう!」
にこやかにデヴェロア総長が言うが、我が意を得たり!といった感じでうれしそうだ。元々僕の教育係に付くつもりだったのだろう。
「なおさら嫌ですよ」
「何?」
「思いっきり僕を傀儡にしようとするでしょう?それに組織のトップという事は、最高責任者という事でもあります。僕は人類同盟を信じていません。信用していない人達の責任者になんてなりたいと思いますか?いずれ適当な責任押し付けられてトップを下ろされ、結局はザムの召還装置扱いされそうです」
そう言った瞬間デヴェロア総長の口の端がヒク付いた。図星だったのだろう。
まぁ面と向かって言うには失礼すぎるけど、ここで人類同盟に対して一片の信頼がない事を明言しておく事で今後付きまとわれない様にしておきたいのだ。無理かもしれないけど…。
「そう…ですか」
どうあっても、僕が人類同盟に行かないことを悟ったデヴェロア総長の顔から胡散臭い笑顔が消えた。
「私どもとましては穏便に済ませたかったのですか、しょうがないですな。現在スベン公国には、強制査察のために人類同盟軍の大隊と有志の義勇軍部隊を差し向けています!査察団は昨日、スベン公国に到着しているはずです。我々が問題ありと判断した場合、人類同盟規約にのっとり政府権限を取り上げ、人類同盟の管理下に入っていただきます」
デヴェロア総長の突然の宣言に大使達がざわめく。
同盟の管理下に置かれるという事は、国を乗っ取られるという事。もはや国としては終わりを意味するからだ。
何が”我々が判断”だ。僕らが気に入らない答えを言えば、国を乗っ取ってやると言っているようなもの。ふざけるなって話だ。
人類同盟は、僕らの説得をあきらめ、公国の人達を人質に、彼らを救いたければ人類同盟に恭順しろと脅迫しているのだ。
「強制査察?我が国には査察を受けるいわれはありませんが?」
フォニアさん声が怒りで震えている。
「貴国のハルバ伯爵より、スベン公国の民が王の治世により苦しんでいると告発があったのです。ですが、フォニア陛下の様子ですと、我々の管理下に入る可能性が高そうですな」
「ハルバ伯爵?…ああ、アポリオンが来ると知ったら、公金を横領し、一族を連れて国から逃げ出した、あの我が国の面汚しですか」
ベール越しにフォニアさんの顔が苦々しくゆがんだのが分かる。でも情報どおりだ。
「認識に違いがあるようですな。ハルバ伯爵は、先王よりスベン公国が滅びた際の民の避難先を作る為の先触れとして来たのですよ」
「そんな話はありません。あなた方の言うハルバ伯爵は、先王の命によりすでに貴族位を剥奪されただのハルバ…いえ、公金横領の罪がありますので罪人ハルバですね。彼の一族および付き従った者たちも連座により、罪人となっています。保護しているのなら罪人の引渡しを我が国は人類同盟に求めます!」
フォニアさんの口調はきつく、聞く者にハルバと呼ばれた貴族に対する憎悪をありありと感じさせる。
「ハルバ伯爵は、現在告発者として人類同盟に保護されております。よってスベン公国へ引き渡す事は出来ません」
正面に座っていた人類同盟の高官の一人が立ち上がって言った。表情はにや付いており非常にむかつく。
「そうですか。人類同盟が、我が国を苦しめた犯罪者を匿うとは真に遺憾であり。抗議させていただきます」
フォニアさんは、そこまで言うと今までの毅然とした表情から打って変わって笑みを浮かべた。
「そして我々からもひとつお知らせすることがあります」
「ふん。何ですかな?」
「現在我が国は全領土奪還作戦の最終段階に入っています。なので、余計な混乱を避ける為、現在国境を封鎖しております。たとえ人類同盟軍であっても我が国には入る事は出来ませんわ」
「人類同盟軍の精鋭の大隊を送り込んでいるのだぞ!それに全領土奪還作戦とやらでカルナートの戦力は払底していよう。相手になると思っているのか!」
侮辱されたと思った人類同盟軍の高官が怒鳴るが、フォニアさんは、それを鼻で笑う。
「それでは無理でしょう。国境警備にはザムが10機、同数のトブタイと共に付いています。それを相手にするのは、フォルスの大隊程度では、無理ですわ」
あれが十機とつぶやきながら青ざめる人類同盟のお歴々。さらには各国の大使の中にも何人か青ざめた表情をしているものがいる。
僕感覚で言えば、ザム一機で神霊機三機を相手にするようなもの。勝ち目など…絶対にない。
「貴様らっ!」
軍高官が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「でも、ご安心ください。今朝本国と連絡を取った時には、人類同盟が査察に来たという話は聞いておりませんわ」
「今朝、今朝だと?一体ここからスベン公国まで一体どれほど離れて…まさか…」
「ええ、アマタ様のザムには、遠くのに居る別のザムとまるで隣に居るかのように話す事が出来る力がありますの」
そこでばさりとフォニアさんは扇子を広げ、口元を隠す。
「…ああ、そういえば昨日、人類同盟からの援軍と証した部隊が来ましたが、支援物資を置いて帰ってもらいましたわ。そうそう人類同盟軍以外にもカガン王国、ニル商連合、大センムル帝王国の旗を掲げた部隊も居たそうですわねぇ」
フォニアさんがうれしそうにそう言った瞬間、名前を挙げられた国々の大使らしき人達の表情が一瞬固まる。
さすがに大使だけあって、表立って動揺はしないか。
とはいえ、現場にいなければ分からない情報を言っているので、フォニアさんが言ったことがハッタリではないのは伝わっただろう。
「支援物資を置いて…ですか?」
「ええ、ただおかしな事に、支援物資の中には、ダロスはともかくゼロスのパーツすら殆どなく、変わりに何故か我が国では運用されていないカニンガムのパーツばかりだったそうですわ。支援物資については人類同盟に配慮してくださっても良かったのでは?」
あれ?予定では、追い返すだけだったはずで、支援物資を貰うって話はは無かったはずだが、現場の人たちが取れると判断したのかな?まぁいいか。
「ぐっぬ!?」
デヴェロア総長を含め、人類同盟の高官達が歯噛みする。よほど自信のあった策だったらしい。
まぁ。ここまで完璧に人類同盟の悪巧みに対処できたのは、この悪巧みを知らせてくれた人が居たからなんだけどね。もし、知らせてくれなかったら、カルナートの城内を占拠されガルロックさん達を人質に取られて。奴らの思い通りになっていた可能性すらある。この悪巧みを知らせてくれたあの商人様様だね。
僕はあの商人が現れた時の事を思い出した。
人類同盟から呼び出しを受けた次の日の事だ。
僕は、ラガツへ行くための準備で忙しかったのだが、フォニアさんの執務室へと突然呼び出された呼び出された。
今忙しいのに!と思いつつもに僕は執務室へと向かった。
執務室の扉をノックして、自分が来た事を伝える。
「どうぞ」
返事を確認して僕は扉を開けた。するとそこには、いつもの黒いドレスを着たフォニアさんとガルロックさんの他に、旅装と思われる服を着た見知らぬ男が立っていた。
年は、僕とフォニアさんより年上で、ガルロックさんより年下と言った感じの人で、アングロサクソン系のガッチリとした体型で顔は日に焼けていせいなのか赤ら顔で面長な人だ。
誰だろうと疑問に思いつつ、部屋の中に入り、扉を閉める。
ここは、外向けの方の態度が良いな。
「ヒデユキ・アマタ。お呼びにより参上いたしました」
丁寧な口調で到着を告げ、習ったお辞儀をする。
「ご苦労様です。アマタ様。でも何時もの口調で構いません」
「ですが…」
ちらりと見知らぬ人の見る。
「彼は、父の頃より良くしてもらっている方ですので問題ありません」
「お初にお目にかかりますデアフレムデ様。私、ドンターク商会の会長をしております、ドミニク・ドンタークと申します。よろしくお願いします」
僕がちらりと旅装の人を見るとそれを察したその男性が、胸に手を当てて丁寧に自己紹介した。
意外と若そうな人だな…30歳くらいかな?
「…そうですか。ではいつも通りにさせてもらいます。それで至急の用とは一体なんですか?」
「人類同盟軍が我が国に強制査察に入り、私達スベン公国政府から統治権を奪おうとしている事が分かりました」
僕は、その言葉を聞いて一瞬思考が止った。
「はぃ?何で?ってか僕ら人類同盟に呼び出し受けてるよね?何で強制査察?」
悪いことなんて何もしてないし、そもそも碌に連絡員すらよこさない人類同盟が何を言ってるんだ?
「名目としては、ハルバ伯爵により、スベン公国の民が我ら公国政府による圧政に苦しんでいると報告があり、それの事実調査の為だそうです」
そう言ったのは、ドミニクさんだった。
「圧政って、僕が最初にカルナートに来た時より、生活は楽になっているはずですが?」
「人類同盟の上層部は多少強引にでも、あなたを手に入れたいのですよ。今の機会を逃したら、もうほとんど無理でしょうから」
僕か…。だけどここまでやるのか?こんなことされたら意地でも人類同盟に力を貸したくないな。
ドミニクさんは続ける。
「彼らは、自棄になったスベン公国がアポリオンに対して無謀な攻勢に出てたと思っていたんです。で、それが失敗したら、それ見たことかと乗り出してきて、デアフレムデ殿を回収するつもりだった。しかし、そんな彼らの予想に反して、攻勢は成功しハイレルゲンの奪還された。されてしまった。彼らは焦ったんですよ。このままスベン公国が全土を奪還されてしまえば、自分達は何を言えなくなるって。それで全土を奪還される前に大慌てで、市民救出の名目でデアフレムデ殿を確保しようとしてるんです。…あのクソ爺共が考えそうな事ですね」
どうしよう。最後の一言だけ妙に殺意が篭ってる。人類同盟の上層部と知り合いなんだろうか?
「それでその告発したハルバ伯爵って誰?」
「以前、国の資金を持って逃げた貴族が居たという話をした事がありましたでしょう?それがハルバ伯爵なのです。そのハルバ伯爵がスベン公国上層部の暴走を止めてくれと嘆願したそうです。あの売国奴が…」
フォニアさんが女王にあるまじき表情で吐き捨てるように言った。
「うわぁ」
「とにかく我が国は、人類同盟を警戒しつつ領土の掃除をしなければなりません。この忙しい時に!」
ドンと机にフォニアさんの華奢に見える拳が叩きつけられた。
「敵の数は分かっているんですか?」
僕はドミニクさんに聞いた。
「私が、貰った情報には、そこまでの事は書かれていませんでした。ですが、奴らの事です。非最前線国家にトブタイとか言う飛行機械の利権をチラつかせて義勇軍を出させるつもりでしょうね。主力は、それになると思います。ですから、どれ位の戦力がスベン公国に攻め込んでくるかは分かりません。人類同盟の交渉力次第ですね。ただ人類同盟も見栄がありますから、大隊位は出すかもしれません」
ドミニクさんは顎に手を当てて考えながら答えた。
「では、我々も何時奴らが来ても対処できるように準備しておきませんとな」
ガルロックさんが軽く言う。彼にも分かっているのだ。今のスベン公国軍に勝てるのは、アポリオンか勇者位なものなのだと。
「ドミニク殿、助かりました。事前に対処対処する事が出来ます」
深呼吸して冷静になったフォニアさんが礼を言う。
「いえ…」
「もういっそ人類同盟をぶっ潰したくなりますね」
つい僕の口から碌な支援もせず偉そうに邪魔してくる人類同盟に悪態がでた。
「それはいけません!デアフレムデ様!東側の平穏は人類同盟によって保たれているのですから!」
僕の悪態を真に受けたドミニクさんが慌てたようにまくし立てた。それを補足するようにフォニアさんも口を開く。
「正確に言えば、人類同盟加入国が遵守しなければならない規約によってですね。加盟国はアポリオンの襲来時に他国にとの戦争を禁止したり、最前線国家に対して、非最前線国家は、公正な取引をしなければない事などを義務付けられています。なのでなくなると東側が大変混沌とした状況になるので潰すのはいけません」
それなら確かに潰しちゃまずいな。
「…もしかして、人類同盟で唯一まともに働いてるのって、昔に作られた規約ぐらいなのでは?」
思わず僕は言う。
「…否定はしません。ですが、この情報を伝えてくれたのは人類同盟内部の者。フォニア陛下。デアフレムデ様。今の人類同盟は腐っていますが、人類同盟発足時の使命を忘れず、全うしようとしている人間がごく少数ではありますが居るのです。私としましては、彼らを中心にかつての人類同盟に戻ってほしいと思っています。あつかましいことですが、デアフレムデ様。人類同盟の正常化に協力してはくださいませんか?」
ドミニクさんは悲しそうだ。
「だからって人類同盟に協力はしたくないなぁ」
正直、そんなの知ったこっちゃないとは思うが、ドミニクさんからの情報がなければ、この国はひどい目にあった可能性が高い。その恩に対しては報いたいとは思うけど、人類同盟を正常化させるって…出来るか?そんな事。
「…では、こういうのはどうでしょうか?」
少し悩んだ様子のフォニアさんがあっなるほど!と思うような案を提示した。
言われた人類同盟側は、若造が好き放題言いおって!って顔をして憮然としていた。
デヴェロア総長も同じであったがすぐに表情を笑顔に戻し、両手を挙げてオーバーリアクションで言った。
「すっすばらしいですね。アマタ様!どうか人類同盟の私の代わりに総長になってくださいませんか!私どもが間違っていました!人類同盟の至らなさに恥じ入るばかり!デアフレムデであるアマタ様なら人類同盟を正し、あるべき未来へと導いてくださると確信しました!」
ここまで言われているのに、それでも何とか僕を勧誘するのか。でもまぁ。
「え?嫌です」
断るけどね。
「何故だ!」
「いやだって人類同盟って長い歴史を持った組織ですよね?」
「ええ。前回のアポリオン襲来の後、また同じことがあった場合を想定して作られ、その後ずっとアポリオンに備えてきた組織です。それが?」
デヴェロア総長が、胸を張って言う。
ああ、一応そのあたりは誇れるとは思ってるんだ。
「という事は、派閥やら面倒くさいしきたりやら、暗黙の了解やらがあるんでしょう?」
知らない事によるちょっとした失敗でも、え~そんなことも知らないのープークスクスとか笑われたり田舎者だとか、所詮は若造だって馬鹿にされるのが落ちだ。そんなのやってられるか。
「ご安心ください。ならば私がそばに付き、組織の運営についてお教えしましょう!」
にこやかにデヴェロア総長が言うが、我が意を得たり!といった感じでうれしそうだ。元々僕の教育係に付くつもりだったのだろう。
「なおさら嫌ですよ」
「何?」
「思いっきり僕を傀儡にしようとするでしょう?それに組織のトップという事は、最高責任者という事でもあります。僕は人類同盟を信じていません。信用していない人達の責任者になんてなりたいと思いますか?いずれ適当な責任押し付けられてトップを下ろされ、結局はザムの召還装置扱いされそうです」
そう言った瞬間デヴェロア総長の口の端がヒク付いた。図星だったのだろう。
まぁ面と向かって言うには失礼すぎるけど、ここで人類同盟に対して一片の信頼がない事を明言しておく事で今後付きまとわれない様にしておきたいのだ。無理かもしれないけど…。
「そう…ですか」
どうあっても、僕が人類同盟に行かないことを悟ったデヴェロア総長の顔から胡散臭い笑顔が消えた。
「私どもとましては穏便に済ませたかったのですか、しょうがないですな。現在スベン公国には、強制査察のために人類同盟軍の大隊と有志の義勇軍部隊を差し向けています!査察団は昨日、スベン公国に到着しているはずです。我々が問題ありと判断した場合、人類同盟規約にのっとり政府権限を取り上げ、人類同盟の管理下に入っていただきます」
デヴェロア総長の突然の宣言に大使達がざわめく。
同盟の管理下に置かれるという事は、国を乗っ取られるという事。もはや国としては終わりを意味するからだ。
何が”我々が判断”だ。僕らが気に入らない答えを言えば、国を乗っ取ってやると言っているようなもの。ふざけるなって話だ。
人類同盟は、僕らの説得をあきらめ、公国の人達を人質に、彼らを救いたければ人類同盟に恭順しろと脅迫しているのだ。
「強制査察?我が国には査察を受けるいわれはありませんが?」
フォニアさん声が怒りで震えている。
「貴国のハルバ伯爵より、スベン公国の民が王の治世により苦しんでいると告発があったのです。ですが、フォニア陛下の様子ですと、我々の管理下に入る可能性が高そうですな」
「ハルバ伯爵?…ああ、アポリオンが来ると知ったら、公金を横領し、一族を連れて国から逃げ出した、あの我が国の面汚しですか」
ベール越しにフォニアさんの顔が苦々しくゆがんだのが分かる。でも情報どおりだ。
「認識に違いがあるようですな。ハルバ伯爵は、先王よりスベン公国が滅びた際の民の避難先を作る為の先触れとして来たのですよ」
「そんな話はありません。あなた方の言うハルバ伯爵は、先王の命によりすでに貴族位を剥奪されただのハルバ…いえ、公金横領の罪がありますので罪人ハルバですね。彼の一族および付き従った者たちも連座により、罪人となっています。保護しているのなら罪人の引渡しを我が国は人類同盟に求めます!」
フォニアさんの口調はきつく、聞く者にハルバと呼ばれた貴族に対する憎悪をありありと感じさせる。
「ハルバ伯爵は、現在告発者として人類同盟に保護されております。よってスベン公国へ引き渡す事は出来ません」
正面に座っていた人類同盟の高官の一人が立ち上がって言った。表情はにや付いており非常にむかつく。
「そうですか。人類同盟が、我が国を苦しめた犯罪者を匿うとは真に遺憾であり。抗議させていただきます」
フォニアさんは、そこまで言うと今までの毅然とした表情から打って変わって笑みを浮かべた。
「そして我々からもひとつお知らせすることがあります」
「ふん。何ですかな?」
「現在我が国は全領土奪還作戦の最終段階に入っています。なので、余計な混乱を避ける為、現在国境を封鎖しております。たとえ人類同盟軍であっても我が国には入る事は出来ませんわ」
「人類同盟軍の精鋭の大隊を送り込んでいるのだぞ!それに全領土奪還作戦とやらでカルナートの戦力は払底していよう。相手になると思っているのか!」
侮辱されたと思った人類同盟軍の高官が怒鳴るが、フォニアさんは、それを鼻で笑う。
「それでは無理でしょう。国境警備にはザムが10機、同数のトブタイと共に付いています。それを相手にするのは、フォルスの大隊程度では、無理ですわ」
あれが十機とつぶやきながら青ざめる人類同盟のお歴々。さらには各国の大使の中にも何人か青ざめた表情をしているものがいる。
僕感覚で言えば、ザム一機で神霊機三機を相手にするようなもの。勝ち目など…絶対にない。
「貴様らっ!」
軍高官が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「でも、ご安心ください。今朝本国と連絡を取った時には、人類同盟が査察に来たという話は聞いておりませんわ」
「今朝、今朝だと?一体ここからスベン公国まで一体どれほど離れて…まさか…」
「ええ、アマタ様のザムには、遠くのに居る別のザムとまるで隣に居るかのように話す事が出来る力がありますの」
そこでばさりとフォニアさんは扇子を広げ、口元を隠す。
「…ああ、そういえば昨日、人類同盟からの援軍と証した部隊が来ましたが、支援物資を置いて帰ってもらいましたわ。そうそう人類同盟軍以外にもカガン王国、ニル商連合、大センムル帝王国の旗を掲げた部隊も居たそうですわねぇ」
フォニアさんがうれしそうにそう言った瞬間、名前を挙げられた国々の大使らしき人達の表情が一瞬固まる。
さすがに大使だけあって、表立って動揺はしないか。
とはいえ、現場にいなければ分からない情報を言っているので、フォニアさんが言ったことがハッタリではないのは伝わっただろう。
「支援物資を置いて…ですか?」
「ええ、ただおかしな事に、支援物資の中には、ダロスはともかくゼロスのパーツすら殆どなく、変わりに何故か我が国では運用されていないカニンガムのパーツばかりだったそうですわ。支援物資については人類同盟に配慮してくださっても良かったのでは?」
あれ?予定では、追い返すだけだったはずで、支援物資を貰うって話はは無かったはずだが、現場の人たちが取れると判断したのかな?まぁいいか。
「ぐっぬ!?」
デヴェロア総長を含め、人類同盟の高官達が歯噛みする。よほど自信のあった策だったらしい。
まぁ。ここまで完璧に人類同盟の悪巧みに対処できたのは、この悪巧みを知らせてくれた人が居たからなんだけどね。もし、知らせてくれなかったら、カルナートの城内を占拠されガルロックさん達を人質に取られて。奴らの思い通りになっていた可能性すらある。この悪巧みを知らせてくれたあの商人様様だね。
僕はあの商人が現れた時の事を思い出した。
人類同盟から呼び出しを受けた次の日の事だ。
僕は、ラガツへ行くための準備で忙しかったのだが、フォニアさんの執務室へと突然呼び出された呼び出された。
今忙しいのに!と思いつつもに僕は執務室へと向かった。
執務室の扉をノックして、自分が来た事を伝える。
「どうぞ」
返事を確認して僕は扉を開けた。するとそこには、いつもの黒いドレスを着たフォニアさんとガルロックさんの他に、旅装と思われる服を着た見知らぬ男が立っていた。
年は、僕とフォニアさんより年上で、ガルロックさんより年下と言った感じの人で、アングロサクソン系のガッチリとした体型で顔は日に焼けていせいなのか赤ら顔で面長な人だ。
誰だろうと疑問に思いつつ、部屋の中に入り、扉を閉める。
ここは、外向けの方の態度が良いな。
「ヒデユキ・アマタ。お呼びにより参上いたしました」
丁寧な口調で到着を告げ、習ったお辞儀をする。
「ご苦労様です。アマタ様。でも何時もの口調で構いません」
「ですが…」
ちらりと見知らぬ人の見る。
「彼は、父の頃より良くしてもらっている方ですので問題ありません」
「お初にお目にかかりますデアフレムデ様。私、ドンターク商会の会長をしております、ドミニク・ドンタークと申します。よろしくお願いします」
僕がちらりと旅装の人を見るとそれを察したその男性が、胸に手を当てて丁寧に自己紹介した。
意外と若そうな人だな…30歳くらいかな?
「…そうですか。ではいつも通りにさせてもらいます。それで至急の用とは一体なんですか?」
「人類同盟軍が我が国に強制査察に入り、私達スベン公国政府から統治権を奪おうとしている事が分かりました」
僕は、その言葉を聞いて一瞬思考が止った。
「はぃ?何で?ってか僕ら人類同盟に呼び出し受けてるよね?何で強制査察?」
悪いことなんて何もしてないし、そもそも碌に連絡員すらよこさない人類同盟が何を言ってるんだ?
「名目としては、ハルバ伯爵により、スベン公国の民が我ら公国政府による圧政に苦しんでいると報告があり、それの事実調査の為だそうです」
そう言ったのは、ドミニクさんだった。
「圧政って、僕が最初にカルナートに来た時より、生活は楽になっているはずですが?」
「人類同盟の上層部は多少強引にでも、あなたを手に入れたいのですよ。今の機会を逃したら、もうほとんど無理でしょうから」
僕か…。だけどここまでやるのか?こんなことされたら意地でも人類同盟に力を貸したくないな。
ドミニクさんは続ける。
「彼らは、自棄になったスベン公国がアポリオンに対して無謀な攻勢に出てたと思っていたんです。で、それが失敗したら、それ見たことかと乗り出してきて、デアフレムデ殿を回収するつもりだった。しかし、そんな彼らの予想に反して、攻勢は成功しハイレルゲンの奪還された。されてしまった。彼らは焦ったんですよ。このままスベン公国が全土を奪還されてしまえば、自分達は何を言えなくなるって。それで全土を奪還される前に大慌てで、市民救出の名目でデアフレムデ殿を確保しようとしてるんです。…あのクソ爺共が考えそうな事ですね」
どうしよう。最後の一言だけ妙に殺意が篭ってる。人類同盟の上層部と知り合いなんだろうか?
「それでその告発したハルバ伯爵って誰?」
「以前、国の資金を持って逃げた貴族が居たという話をした事がありましたでしょう?それがハルバ伯爵なのです。そのハルバ伯爵がスベン公国上層部の暴走を止めてくれと嘆願したそうです。あの売国奴が…」
フォニアさんが女王にあるまじき表情で吐き捨てるように言った。
「うわぁ」
「とにかく我が国は、人類同盟を警戒しつつ領土の掃除をしなければなりません。この忙しい時に!」
ドンと机にフォニアさんの華奢に見える拳が叩きつけられた。
「敵の数は分かっているんですか?」
僕はドミニクさんに聞いた。
「私が、貰った情報には、そこまでの事は書かれていませんでした。ですが、奴らの事です。非最前線国家にトブタイとか言う飛行機械の利権をチラつかせて義勇軍を出させるつもりでしょうね。主力は、それになると思います。ですから、どれ位の戦力がスベン公国に攻め込んでくるかは分かりません。人類同盟の交渉力次第ですね。ただ人類同盟も見栄がありますから、大隊位は出すかもしれません」
ドミニクさんは顎に手を当てて考えながら答えた。
「では、我々も何時奴らが来ても対処できるように準備しておきませんとな」
ガルロックさんが軽く言う。彼にも分かっているのだ。今のスベン公国軍に勝てるのは、アポリオンか勇者位なものなのだと。
「ドミニク殿、助かりました。事前に対処対処する事が出来ます」
深呼吸して冷静になったフォニアさんが礼を言う。
「いえ…」
「もういっそ人類同盟をぶっ潰したくなりますね」
つい僕の口から碌な支援もせず偉そうに邪魔してくる人類同盟に悪態がでた。
「それはいけません!デアフレムデ様!東側の平穏は人類同盟によって保たれているのですから!」
僕の悪態を真に受けたドミニクさんが慌てたようにまくし立てた。それを補足するようにフォニアさんも口を開く。
「正確に言えば、人類同盟加入国が遵守しなければならない規約によってですね。加盟国はアポリオンの襲来時に他国にとの戦争を禁止したり、最前線国家に対して、非最前線国家は、公正な取引をしなければない事などを義務付けられています。なのでなくなると東側が大変混沌とした状況になるので潰すのはいけません」
それなら確かに潰しちゃまずいな。
「…もしかして、人類同盟で唯一まともに働いてるのって、昔に作られた規約ぐらいなのでは?」
思わず僕は言う。
「…否定はしません。ですが、この情報を伝えてくれたのは人類同盟内部の者。フォニア陛下。デアフレムデ様。今の人類同盟は腐っていますが、人類同盟発足時の使命を忘れず、全うしようとしている人間がごく少数ではありますが居るのです。私としましては、彼らを中心にかつての人類同盟に戻ってほしいと思っています。あつかましいことですが、デアフレムデ様。人類同盟の正常化に協力してはくださいませんか?」
ドミニクさんは悲しそうだ。
「だからって人類同盟に協力はしたくないなぁ」
正直、そんなの知ったこっちゃないとは思うが、ドミニクさんからの情報がなければ、この国はひどい目にあった可能性が高い。その恩に対しては報いたいとは思うけど、人類同盟を正常化させるって…出来るか?そんな事。
「…では、こういうのはどうでしょうか?」
少し悩んだ様子のフォニアさんがあっなるほど!と思うような案を提示した。
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