量産型英雄伝

止まり木

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54話 出発!先遣隊

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 何とかフォニアさんを説得し、メリナさん+護衛部隊を常に引き連れる事、それに、新型機のテストを行い、それが終わったら引継ぎをしてすぐに本国に帰還する事を条件に何とか了承してもらった。

 部屋に戻り荷造りのを済ませる。済ませると言っても、一緒に戻ったメリナさんが、部屋付きのメイドに指示して荷造りをさせる。僕は見ているしかない。メリナさん本人がやらないのは、彼女が僕の護衛だからだ。メイドの格好なのは、常に僕のそばに居ても違和感が無いという事と、偉い人との会合で護衛の同伴は許さないがメイドのならOKという場合があるらしい。その時護衛として連れて行けるようにとの事だ。

 城内は慌しい。救援部隊の派遣が決まるとそれはすぐに各所へと伝えられ、その準備に大わらわだ。
 僕自身も、僕が居ない間の為に、ザムは召還できないが、ザムのエネルギーペレットや武器や弾薬などを急遽召還しておく。

 救援部隊の内訳は、僕の専用ザムが一機、僕の護衛用に三機、実際の救援用に三機にザムイーワック三機の合計10機。
 これは、先遣隊なので後から現場の状況を見て増援が来ることになっている。場合によっては現場で僕が召還する。

 トブタイはザムにそれぞれに一機ずつ+物資を積んだ3機の計13機。その13機に人員を詰め込めるだけ詰め込んで飛ぶ。

 積まれた物資の中には、一定の大きさに組まれた柵や、壁が多く積み込まれている。
 これから大陸西部へと進出していく僕らは、早急な陣地設営能力が要求される。それはただ塀や壁で囲った場所を用意すればいいという話ではなく、オペメイドが常駐し、本国と常に連絡が取れる簡易司令部も作らなければならない。だけど現在僕らにはそのノウハウが無い。一応、どうやって作るかのマニュアルのような物を作ってはいるが、実際に行ったことは無い。今回の救援部隊遠征は、野営陣地設営の実験も行う。
 スベン公国は今回の救援をして、一石二鳥だけでなく三鳥四鳥と、取れるものはどんどん取るつもりだ。

 先遣隊の出発準備が整ったのは夜明けだった。その連絡を受けると僕はカルナートの外にある駐機場へと向かった。
 先遣隊の目的は、救援部隊の陣地の確保及び現地調査だ。もしハヌマ王国が受け入れを拒否した場合は即座に撤退。
 
 駐機場には、先遣隊員として集められた人々が、台の前に整列している。これから出発前の訓示を行うのだ。
 整列している人々の5割が兵士で、残りの三割がオペメイドさん、最後の二割がハヌマ王国との交渉や調整を行う文官の人達だ。
 
 最初に台に上がったのは、シーバ子爵だ。彼はこういう場に慣れているのか堂々とした物だ。
「既に皆聞き及んでいると思うが、水の勇者殿から直々に、そう直々に我がスベン公国に対して救援の要請がされたっ!現在水の勇者殿がおられるハヌマ王国の王都ハマヌムは、津波と呼ばれる天災に見舞われ壊滅状態との事だ!これに対し我が国は、ハヌマ王国に対し救援を決定した!我々の仕事は、海と呼ばれる巨大な泉に流された行方不明者の捜索と、ハヌマ王国内の物資の迅速な輸送!諸君らは、先遣隊として現地の情報収集と、我々の使用する宿営地の確保が主任務となる!勇者殿の期待に答え!生まれ変わった我らの力をハヌマ王国の民に見せ付けてやろうではないか!なお、救援部隊にはデアフレムデであるアマタ様が参加される!一同気を引き締めろ!」
「「「おおお!」」」
「では、最後にアマタ様より一言いただく!全員傾注!」
 そういうとシーバ子爵は、台から降りる。
 入れ替わるように台に上がり、集まった人々を見る。そこからキラキラした目や、涙ぐんでいる人が見えた。まるでアイドルを見る人の目だ。
 そんな目で僕を見ないでくれ!
 集まった人達がこんな目で僕を見るのには訳がある。
 あのラガツでの演説だ。
 ラガツに行ったザムのパイロットの中に、あの演説を態々録画していたパイロットが居たのだ。そのデータを帰ってから上司に提出、セイラン王国からの義勇兵だった本人は、その時の様子を、帰還後酒場で盛大に熱く語ったそうだ。それを聞いたほかのセイラン王国からの元義勇兵達が上司に掛け合い映像の公開を嘆願し、それが許可された。そのせいで一気にあの演説が軍内に広まってしまったのだ。
 それ以来、廊下でただ横を通り過ぎただけで、年上の人達からピシッと背筋がまっすぐ伸びた最敬礼をされるようになった。もちろんそれは新たに仲間に加わった元セイラン王国の兵士達も同様だ。
 恥ずかしいってレベルじゃねぇ!でもやるしかない。
 僕は息を吸うと声を張り上げた。長い演説は苦手だ短く行こう。
「こんな夜遅くに、突然の召集。ご苦労様です!今人類はアポリオンとの再襲来という未曾有の大災害により軍とは、アポリオンと戦う者達と思われています。しかし、軍の本来の目的は、人々を救い守る事。皆さんは本来の姿に立ち返り、人々を救うのです。今回は、他国の人間ですが、この経験は必ずや、我らの国の人間を救う糧となるでしょう。新生スベン公国軍救援部隊出撃!」
「「「はっ!」」」
「総員、割り振られた機体に搭乗せよ!時間は無いぞ!急げ!急げ!急げ!」
 僕の副官となったアランさんが、声を張り上げた。
 アランさんは、ハイレルゲン奪還作戦の後、スベン公国に残っていたアポリオンの掃討で活躍した結果、彼もまた昇進した。
 今では、中隊規模をまとめる地位にまで来ているが、今回は僕の副官をやってもらっている。
 
 その声にはじかれるように部隊員達が駆け足で行動を始めた。
「では我々も参りましょう」
「ええ」
 僕も自身のザムへと乗り込んで、起動する。
 視界の中に現れたウィンドウに、異世界の文字が高速で流れる。そしてウィンドウが閉じたと思えば、新たにウィンドウがいくつも開かれ同じように文字が流れる。
 もはや慣れた動作だ。だけどこの瞬間が今だにたまらない!

 そうしていると、通信が入った。
 あれ、このチャンネルは…。
「こちら天田。フォニアさんどうかしましたか?」
『アマタ様お忙しいところを申し訳ありません』
 フォニアさんの方はザムに乗っていないので音だけだが、彼女の方には、僕の姿が映っているはずだ。
「今は起動のチェックですから、問題ありません。それで如何しましたか?」
 実際起動チェックは、コンピュータが判断した結果がOKである事を確認するだけだ。余裕はある。
『いえ、出発前のご挨拶をと。ですが、私がアマタ様の出撃に反対なのは今も変わりません』
「それは、十分に話し合ったじゃないですか…」
『アマタ様の出撃が国益に即すというのは、私も理解しています。ですから許可しましたが、大きな賭けである事は変わりません。ならばアマタ様に対して貸し一つという案件だと思うのですが?』
 何が"ならば"なのか理解できない!
「ちょっとそれは違うんじゃないかなぁ」
 そこへさらにアランさんから通信が入った。
『アマタ様。地上要員の退避を確認。全機発進準備整いました。発進の合図を』
『ではお帰りをお待ちしていますね。ご主人様。では失礼します』
 それが聞こえていたのか、わざとなのかフォニアさんが早口でまくし立てると通信を切った。
「えっあっちょ!」
 最後の"ご主人様"が、不安を誘う。
 僕は一体何をさせられるんだろう?
『どうかしましたかアマタ殿?』
「いや…なんでも無い」
 周りを見渡せば、出撃準備を整えたトブタイが、エンジンを吹かし、砂埃を巻き上げている。
 とりあえず出発するとしよう。今は一刻を争う事態なんだから。
「全機発進」
『了解!全機発進!一番ロッテ上がれ!』
『一番ロッテ、上がります!』
 すると、ザムとザムイーワックを乗せたトブタイが一機ずつ、空へと舞い上がった。
 ザムの乗ったトブタイが、先行し、ザムイーワックのトブタイかその斜め左後ろへと付いて浮上していく。

 ロッテとは、僕のニワカ知識によってスベン公国軍の中に広まった名称の一つだ。たしか、ドイツ空軍で考案された二機一編隊の名称だったはず。その事をポロッとトブタイの運用の仕方を決める会議で言ったら、即効採用されたのだ。この使い方が正しいか分からない。というか十中八九間違ってるだろう。
『続いて、二番ロッテ!三番ロッテ!上がれ!』
『二番ロッテ、上がりますぜ!』
『三番ロッテ、上がる!!』
『グローリーガード上がるぞ!』
 三つのロッテが空に上がると、ザムがのったトブタイが三機上がる。アランさんはこの編隊だ。
『グローリーガード。準備良し!アマタ様。何時上がられても大丈夫です』
「了解。グローリー上がる!」
 ここでようやく僕が居る編隊が上がる。僕の編隊は、僕のほかには、補給物資を満載したトブタイが三機。つまり護衛対象だ。

 グローリー編隊が所定の高度へと達すると先に上がっていたほかの編隊が集まり、大きな編隊を組む。
 僕の乗ったザムを先頭に三機の物資を積んだトブタイがダイアモンド陣形を取り、グローリーガード編隊の三機が僕らを取り囲むように大きな三角形を作る。最初に空に上がったロッテ三編隊が、それらのさらに取り囲むように離れた場所に三角形を作る。

 既に進路は南、ハヌマ王国王都方面へと向けている。
 下を見れば、しばらくは見納めとなるスベン公国の風景が朝日に照らされていた。

 そこへ、僕のザムが乗るトブタイのパイロットから通信が入った。
『アマタ様。上空に着きましたので操作を替わります。しばらく、お休みくださいませ』
 言われてほぼ徹夜で先遣隊の準備をしていたのを思い出し、ここに来て眠気がどっと押し寄せてくる。
「ふぁあ。そうさせてもらいます。ユーハブコントロール」
『アイハブコントロール。それではお休みなさいませ』
 僕は、自身で持っていたトブタイのコントロールを、トブタイのパイロットにに引き渡す。これでもう乗っているザムはただの貨物となる。

 コントロールレバーから手を離し、脱力する。これから十数時間は空の旅だ。
 僕は、ザムを休憩モードに設定し、コクピットシートをリクライニングさせると、仰向けになる。完全に仰向けになるわけじゃないけど、しないよりはマシだ。
 きっと、向うでも忙しくなるんだろうな。
 そう思いつつ僕は浅い眠りに付いた。
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