量産型英雄伝

止まり木

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25話 緊急!援助物資をゲットせよ!

 僕達は、レグオン帝国首都へと向かって旅に出ていた。
 先頭をセリアさんの乗ったダロスが歩き、その後ろにフォニアさんの乗った竜車が、その左右に護衛のダロスが二機、さらに後ろに空荷の竜車が三台、殿として僕がザムに乗って街道を進んでいる。
 さすがにスベン公国の幹部が全員いなくなる事は問題なので、ガルロックさんは、カルナートにお留守番。その間、新生スベン公国軍は、僕とセリアさんガルロックさんが考えた訓練メニューをこなし、着々と力を付けさせている最中だ。


 スベン公国の復興はまだ進んでなく。本来なら国のトップが離れるのは論外だ。
 なのだが、背に腹は変えられない事態が起きたのだ。文字通り背に腹は変えられない問題が。
 
 スベン公国軍の再編を開始してから1ヶ月ちょいの時間が過ぎた。開発中の通信指揮システムは、試行錯誤を重ねながら、着実にその成果を上げていった。
 あれからさらにザム・イーワックとトブタイは4セット増やし、3交代制で24時間最低一機は飛んでいるようにした。普通のザムも量産され、現在は33機運用している(初回召喚枠で召喚したザムを含まず)。
 30日以上経過しているのに37機しかザムを運用していないのは単純に、資材ポイントと人材(パイロット、オペ子共に)が足りないからだ。
 既にカルナートにある資源ポイントになりそうなスクラップは全てポイントに返還し、ハイレルゲンから脱出した際に破壊されたダロスを回収してまでポイントを稼いだが、ザム以外の弾丸などの補給物資の事を考えるとこれが限界だった。これ以上の軍備拡張するには、どうしても資材ポイントと人材育成の時間が足りない。
 さらに、食料が心許なくなって来ていた。そもそも、僕と一緒に運ばれてきた補給物資の殆どが分解輸送されていたダロスで、食料はあまり多くは無かった。何故ならハイレルゲンには多くの備蓄があったからだ。しかし、ハイレルゲンが落ちた事により食糧事情は一気に悪化した。カルナートにも備蓄はあったが、ハイレルゲンから命からがら身一つで逃げてきた避難民が増えた事により、消費が増えたのだ
 食料の増産は急務で、作業用ザムを召喚してカルナートの周りに農地を作った位だ。
 とはいえ、畑を作ったからと言って種を巻いてすぐに収穫が出来るわけじゃない。どうしてもそれまでの繋ぎの食料が必要になる。

 その二つの問題を解決する為に、今帝国首都レグオンへと向かっているのだ。
 レグオン帝国から、公王の継承の報告と追加の支援物資要求に関する返事が来たのだ。

 僕がその事を聞いたのは、レグオン帝国に出発する一週間前。フォニアさん達と取っていた朝食の席だった。
 食事事情の悪さは、城の中まで押し寄せていた。食卓の上に乗っているのは乾燥野菜と豆のスープに、子供の拳くらいの黒パンが二つに酢漬の野菜。はっきりって育ち盛り且つ、毎日出撃している僕には物足りない。でもカルナートでは戦時は、どんなに偉い人でも普通の人達と同じものを食べる事になっているのだから文句は言えない。
 もはや都市国家と言う規模にまで弱体化したスベン公国には、たとえ国家のトップラスの要人とは言え、この程度の食事にまでランクを落とさねば、国家運営すらまま為らない状態だった。お陰で少し痩せた。
「へぇ返事が来たんだ。で、なんて言って来てるんです?」
 パンを千切って口に運びつつ聞いた。
「帝国は、我々が欲しいと思う物は全て援助をして下さるそうですよ」
「へぇ。太っ腹だねぇ。併合されろとは言って来なかったんだ?」
 一緒に食事を取っていたセリアさんが不思議そうに言った。国力が激減し都市レベルまで減っているスベン公国を手に入れるのには、千載一遇のチャンスだからだ。
 実際共和国に送った方には、迂遠に我が国に併合されたほうが良いのでは無いかと書かれていた。
 一気に戦争して攻め落とすという手もあるが、人類同盟が人類国家同士の戦争を禁止しているので出来ない。なので現状領土を増やそうとするには他国からの要請で併合するしかなかないのだ。
 ちなみに王国は、国境が接していないので、公王死去のお悔やみと王位継承の追認、そして援助物資を送ったと書かれていた。

「ええ、そんな事は書かれていなかったわ。けど…」
「どうかしたのですかな?」
 ガルロックさん聞いた。
「現在帝国では、人手不足で、竜車も護衛も出せないから、こちらで用意してきてくれって…」
「首都が落とされ兵力が落ちているという事は分かりきってるだろうにねぇ。最大限と言いつつ。碌に物資も渡さないつもりじゃないか!」
 セリアさんが呆れたように言った。現在カルナートにある竜車は、元々このカルナートにあった物と、避難してきた人達が乗ってきた物、そして、輸送隊として帝国に行って帰ってきた物の三種類だ。竜車の数としてはかなりあるが問題はその護衛だ。現在ザムを33機運用しているが、護衛する竜車の数が増えれば当然護衛するのに必要なザムの数も増える。今のカルナートに、それを捻出できる余裕は無い。

「ええ、本当に良かったです。今が対アポリオンの戦時で…」
 フォニアさんの内心では、はらわたが煮えくり返っているのだろう。そもそも、レグオン帝国がスベン公国にまわす人類同盟からの物資を渋ったせいでこの状況に陥ったと言ってもいい。もっと支援が厚ければハイレルゲンが落ちる事は無かったと思っているようだった。
「でも、こちらとしては都合が良いじゃないですか。こちらが輸送手段を用意すれば。それに満載出来る分の物資を用意してくれるんでしょう?」
「舐めているのなら結構。その輸送費も帝国に出してもらいましょう」
 フォニアさんは、顔は微笑んではいたがゾッとさせる声で言った。他の面々もそれに同意するように悪い笑みを浮かべている。当然僕もだ。もらえる物は全て貰っていこう。それが相手の倉庫を空にしようとも…。
 それから僕達は、レグオン帝国行きを決めたのだ。

「へぇあれが帝都か、立派な街ですね」
 ザムのコックピットから見る帝都は、ざっと見ただけでもカルナートの三倍ぐらいの規模があるんじゃないだろうか?それも城壁に囲まれ、中は整然と区画整理されているらしく、ここから見ても大体何の区画か分かるくらいだ。
『もう見えたんですか?』
 先行する竜車のに乗っているフォニアさんからの通信が届く。
 フォニアさんには、コレクションしていたMRヘッドセットの一つを渡している。MRヘッドセットはそれだけでも、短距離であれば通信出来るのだ。
「ええ、凄いですね」
『そうですね。栄えあるレグオン帝国の首都ですからね。私も以前一度来た事がありますがハイレルゲンと違ってびっくりしました』
「おっ?帝国さんのフォルスがこっちを見っけたようです。慌てた様子でこっちに来ます」
『そうですか。変ですね。今日付く事は連絡しておいたはずなんですが…』
 念のために、ザムが盾になるように一番前に移動しする。10機ほどのフォルスがこちらに駆けつけてきた。
『アレは、最新型フォルスのカニンガムね』
 同じようにMRヘッドセットを渡していたセリアさんが乗ったダロスから通信が入った。
 カニンガムと呼ばれたフォルスはダロスと比べるととてもスマートだった。ドワーフ体系から、より人間に近い形へと姿だ。新品らしく装甲には傷一つ無い。
「強いんですか?」
「…アレがハイレルゲンに配備されていたらきっと私達が到着するまでハイレルゲンは落ちる事は無かったと思うわ」
 あの時の事を思い出したのか、その声には悔しさを滲ませていた。

 現れたフォルスは、車列の前に陣取ると剣をを抜いた。
「止れ!貴様ら何者だ!」
 武器を向けられれば、こちらも銃を向けるしかない。こちらも、75mmマシンガンをフォルスに向ける。一連射もすれば、容易に倒す事は出来る。そんな事には為らないだろうが念のためだ。
「貴様ら一体誰に武器を向けている!貴様らが武器を向けているのはスベン公国の新たなる公王フォニア様の御座す竜車!不敬であろう!何時からレグオン帝国の一兵卒が国家の代表より偉くなったのだ!」
 ザムの足元にいたセリア機から怒鳴り声が上がる。
「そんな事は聞いていない!」
「職務怠慢ね。今日私達が到着する事は、連絡したはずよ。帝国の兵の質も落ちたものね」
「貴様!貧乏国家の騎士風情が!レグオン帝国の騎士を馬鹿にするか!」
 殺気立つ、カニンガムに乗った者達。
 コレ撃っていいですかね?いや、ダメだって事は分かってるんですけどね。
「双方待った!!」
 その時、僕のザムと帝国のフォルスとの間に走竜に乗った騎士が一人駆け込でで叫んだ。
 そして、走竜から下りるとこちらに向かって頭を下げた。
「スベン公国の方々失礼した。私は、レグオン帝国軍、帝都守護騎士団団長ガレリオ・ウェッソン。部下の非礼をお詫びする!」
「団長!何故そんな…」
 それを見たカニンガムに乗っていた騎士達が呻くように言った。
「馬鹿者がぁ!レグオン帝国の顔に泥を塗り負って!ザッコタ上級騎士!貴様後で覚悟して置け!」
「ですが、正体不明機の接近の際にはっ!」
 反論するが、ガレリオ団長が耳を塞ぎたくなるような大声で一喝した。
「デアフレムデ殿の機体は未確認機では無いわ!今朝のミーティングで例外機の資料が申し送り事項として渡されただろうが!目を通していなかったのかっ!」
「えっあっ」
「…チッお前らはとっとと帰還しろ!この方々は俺がお連れする。これは命令だ!ザッコタ上級騎士!復唱!」
「ハッ!直ちに帰還いたします!おい!行くぞ!」
 悔しげにザッコタと呼ばれた騎士は、来た道を引き返していった。それを仁王立ちで見送ると、ガレリオ団長がこちらのほうを向いた。
「改めて申し訳ない。あの者らには後で厳罰を下しておく。デアフレムデ殿も銃を下ろしてもらえないだろうか?」
「失礼した」
 僕は慌ててマシンガンを下ろした。
「ありがとう。では、これからは私が帝都までご案内します。ようこそ帝都レグオンへ」
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