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第1章
第3話 パートナー
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「はぁ!? ちょっと待てよ義姉さん!?」
「これは決定事項だ。魔導協会の認定も受けている」
龍脈が多数通る為、魔術師を育成する環境に向いている全国有数の土地京都。その中でも愛宕山に集う龍脈の密集地。
その麓に作られた魔術師専門の高等学校、嵯峨学園の理事長室で2人の男女が会話していた。
片や学園の男子生徒でSランク魔術師、神に選ばれし神子の神坂清志。そしてもう片方はAランク魔術師で学園の理事長を務めるバリキャリ女性、高嶋玲央奈だ。
今学園長室では、学園で唯一のSランク魔術師にパートナーが存在しなかった事に関する問題が議題に上がっていた。本来魔術師は、2人ペアのコンビを組むのが普通だった。
お互いの短所を補い合う事で、凶悪な犯罪者に対抗して来た。基本的に2の倍数でチームを組むのが魔術師の常識だ。
しかし、残念ながらこれまで清志に釣り合う魔術師が学園には居なかった。龍脈に恵まれた京都の魔術学園には、日本全国どころか海外からの留学希望者が後を絶たない。それにも関わらず、未だ現れなかったパートナーがアメリカから留学して来ると言う。その話し合いが現在、家族でありながら学園長と生徒と言う立場の2人の前に転がっていた。
「お前に釣り合うパートナーは他に居ない」
「そんなの今更言われても」
「独りじゃ限界がある。それをお前は良く知っているな?」
義姉から義弟への忠告、それを一番良く分かっているのは清志本人だった。独りでは何も守れず、全てを失う経験をしたから。
だから、その言い分を無視する事は彼には出来なかった。そこに何らかの意思が介在しているのは察知出来ても、言い返す丁度いい材料が無かったから。
「アイナ・クラーク・三島。それが明日からのお前のパートナーだ」
「……そいつ、ちゃんと戦えるんだろうな?」
「アメリカ海軍少将の娘で、本人も軍属。そしてSランクの錬金術師だが何が不満だ?」
「……特には」
初等部からソロだった清志にしてみれば、今更パートナーなんて用意されても困る。そんな反骨精神が働いた結果、義姉への反発心を拗らせてしまった。
その返答は1ミリも反論する余地の無い、す完璧な切り返しだった。この肩書で拒否出来る者など、余程の手練れでなければ不可能だ。
年収1000万の人間が年収2000万の家庭を嗤う様なものだ。そんな真似を恥ずかしげも無く出来る人間は中々居ないだろう。
「で、そいつは何の神子なんだ?」
「神子じゃない」
「……は? 今なんて?」
「現在唯一、神に仕えて居ないSランクだ」
「……………………は?」
清志の反応は何もおかしくない。神に選ばれし神子だけがSランク魔術師を名乗れる。どれだけ優秀でも、神に選ばれなければAランク止まり。
それが現在の魔術師の認識だ。では何故神に選ばれて居ない人間がSランクなのか? その理由は必ずある筈だ。Sランク魔術師は、各地に散らばる魔導協会支部の支部長より権限が高い。それは神に認められているからだ。
そうではないのに、Sランク魔術師だと言うのだ。そんなおかしな話は早々無いだろう。嘘を付くならもう少しまともな嘘を付け。そんな風に怒る人が大半では無いだろうか。
「いや、あり得ないだろうそれは」
「有り得てしまったんだよ、彼女だけはな」
「何だよそれ!? 説明になってないぞ」
これについては清志のリアクションが正しいだろう。そんな前代未聞の存在を、急に認めろと言われても困る。
少なくとも今日まで、清志はそんな話を聞いた事が無かった。Sランク魔術師と言う立場にありながら、知り得なかったのは通常では有り得ない。
どんなSランクが居るのかは、ある程度公開されている。もちろん秘匿されているSランクも少なくはない。だが、そんな特例中の特例が居ようとは誰も思わない。
「仕方ないだろう。アメリカ支部の秘蔵っ子だ。日本への留学だって最初は渋っていたからな」
「だったら、何でわざわざ俺に?」
「相性の問題だな。現状お前が一番パートナー適正がある」
魔術師がペアを組む際に、最も重要なのは相性だ。近接戦が得意な2人をペアにすれば、遠距離戦が得意な相手と戦う時に不利だ。
バランスの良い組み合わせが一番無難な選択だ。ただ、必ずしも全ての魔術師に適用される訳では無い。諜報が得意なペアや、支援を得意とするペアと言った組み合わせもある。
バランス重視はあくまでも、メインが戦闘になる魔術師に限った話だ。生産系などの技術者タイプは似た者同士で組む事が多い。
戦場に立たない魔術師は、バランスが片寄ってもあまり支障が出ないからだ。それが命取りになる事はないから。とは言っても、片寄ったのが原因でスランプに陥ったりする事もままあるのだが。
「お前はオールラウンダーで、彼女も同じタイプだ」
「だからって、何で女子なんだよ」
「何だ? 女だと嫌か?」
「そうじゃないけど……」
清志が気にしているのは、思春期特有の悩みだ。何となく異性よりも同性の方が気楽で居られる。人は大人になって行く過程で、性差を理解し上手く関係性を築ける様になっていく。
だが彼は、まだ高校生だ。初等部から知っている異性であれば、気兼ねなく友人として接する事が出来る。しかしそれが初めて接する異性で、外国籍の人物となれば精神的ハードルが高い。性差だけでなく、文化の違いまであるのだから。
「今の時代に何を気にしているんだ」
「いやまあ、そうなんだけど」
「安心しろ、人柄に問題はない。事前に面接ぐらいしている」
「…………まあ、それなら」
神坂清志と言う男子生徒は、異性から距離を置かれるタイプではない。むしろ女子生徒からの覚えは良い方だ。容姿に優れ、日本有数の名家に生まれた男子。
Sランクと言う魔術師として最高峰の地位におり、結婚するとなればこれ以上無い優良物件だ。彼のパートナーになりたいAランク女子はかなり多い。
男女パートナーは、そのまま結婚するパターンが多い。玉の輿確定の空席だ、座りたい者が他校にすら居る。
ただし、彼本人はあまり恋愛に興味がない。それよりも己の使命が大切だったから。義姉や仕える神から、血を絶やしてはならないと頻繁に言われてはいる。
しかし彼はあまり興味が無かった。義姉となった従姉と自分、ただ2人だけになってしまった己の血脈に然程興味を持て無かったから。お家再興など、今時の若者には大した価値を感じられないから。
「良いか、ちゃんと仲良くするんだぞ」
「子供扱いは辞めてくれって!」
こうして、世界最高の死神と神を持たぬ錬金術師は出会う事になる。これから先の人生で、常に隣に居る相棒と。
「これは決定事項だ。魔導協会の認定も受けている」
龍脈が多数通る為、魔術師を育成する環境に向いている全国有数の土地京都。その中でも愛宕山に集う龍脈の密集地。
その麓に作られた魔術師専門の高等学校、嵯峨学園の理事長室で2人の男女が会話していた。
片や学園の男子生徒でSランク魔術師、神に選ばれし神子の神坂清志。そしてもう片方はAランク魔術師で学園の理事長を務めるバリキャリ女性、高嶋玲央奈だ。
今学園長室では、学園で唯一のSランク魔術師にパートナーが存在しなかった事に関する問題が議題に上がっていた。本来魔術師は、2人ペアのコンビを組むのが普通だった。
お互いの短所を補い合う事で、凶悪な犯罪者に対抗して来た。基本的に2の倍数でチームを組むのが魔術師の常識だ。
しかし、残念ながらこれまで清志に釣り合う魔術師が学園には居なかった。龍脈に恵まれた京都の魔術学園には、日本全国どころか海外からの留学希望者が後を絶たない。それにも関わらず、未だ現れなかったパートナーがアメリカから留学して来ると言う。その話し合いが現在、家族でありながら学園長と生徒と言う立場の2人の前に転がっていた。
「お前に釣り合うパートナーは他に居ない」
「そんなの今更言われても」
「独りじゃ限界がある。それをお前は良く知っているな?」
義姉から義弟への忠告、それを一番良く分かっているのは清志本人だった。独りでは何も守れず、全てを失う経験をしたから。
だから、その言い分を無視する事は彼には出来なかった。そこに何らかの意思が介在しているのは察知出来ても、言い返す丁度いい材料が無かったから。
「アイナ・クラーク・三島。それが明日からのお前のパートナーだ」
「……そいつ、ちゃんと戦えるんだろうな?」
「アメリカ海軍少将の娘で、本人も軍属。そしてSランクの錬金術師だが何が不満だ?」
「……特には」
初等部からソロだった清志にしてみれば、今更パートナーなんて用意されても困る。そんな反骨精神が働いた結果、義姉への反発心を拗らせてしまった。
その返答は1ミリも反論する余地の無い、す完璧な切り返しだった。この肩書で拒否出来る者など、余程の手練れでなければ不可能だ。
年収1000万の人間が年収2000万の家庭を嗤う様なものだ。そんな真似を恥ずかしげも無く出来る人間は中々居ないだろう。
「で、そいつは何の神子なんだ?」
「神子じゃない」
「……は? 今なんて?」
「現在唯一、神に仕えて居ないSランクだ」
「……………………は?」
清志の反応は何もおかしくない。神に選ばれし神子だけがSランク魔術師を名乗れる。どれだけ優秀でも、神に選ばれなければAランク止まり。
それが現在の魔術師の認識だ。では何故神に選ばれて居ない人間がSランクなのか? その理由は必ずある筈だ。Sランク魔術師は、各地に散らばる魔導協会支部の支部長より権限が高い。それは神に認められているからだ。
そうではないのに、Sランク魔術師だと言うのだ。そんなおかしな話は早々無いだろう。嘘を付くならもう少しまともな嘘を付け。そんな風に怒る人が大半では無いだろうか。
「いや、あり得ないだろうそれは」
「有り得てしまったんだよ、彼女だけはな」
「何だよそれ!? 説明になってないぞ」
これについては清志のリアクションが正しいだろう。そんな前代未聞の存在を、急に認めろと言われても困る。
少なくとも今日まで、清志はそんな話を聞いた事が無かった。Sランク魔術師と言う立場にありながら、知り得なかったのは通常では有り得ない。
どんなSランクが居るのかは、ある程度公開されている。もちろん秘匿されているSランクも少なくはない。だが、そんな特例中の特例が居ようとは誰も思わない。
「仕方ないだろう。アメリカ支部の秘蔵っ子だ。日本への留学だって最初は渋っていたからな」
「だったら、何でわざわざ俺に?」
「相性の問題だな。現状お前が一番パートナー適正がある」
魔術師がペアを組む際に、最も重要なのは相性だ。近接戦が得意な2人をペアにすれば、遠距離戦が得意な相手と戦う時に不利だ。
バランスの良い組み合わせが一番無難な選択だ。ただ、必ずしも全ての魔術師に適用される訳では無い。諜報が得意なペアや、支援を得意とするペアと言った組み合わせもある。
バランス重視はあくまでも、メインが戦闘になる魔術師に限った話だ。生産系などの技術者タイプは似た者同士で組む事が多い。
戦場に立たない魔術師は、バランスが片寄ってもあまり支障が出ないからだ。それが命取りになる事はないから。とは言っても、片寄ったのが原因でスランプに陥ったりする事もままあるのだが。
「お前はオールラウンダーで、彼女も同じタイプだ」
「だからって、何で女子なんだよ」
「何だ? 女だと嫌か?」
「そうじゃないけど……」
清志が気にしているのは、思春期特有の悩みだ。何となく異性よりも同性の方が気楽で居られる。人は大人になって行く過程で、性差を理解し上手く関係性を築ける様になっていく。
だが彼は、まだ高校生だ。初等部から知っている異性であれば、気兼ねなく友人として接する事が出来る。しかしそれが初めて接する異性で、外国籍の人物となれば精神的ハードルが高い。性差だけでなく、文化の違いまであるのだから。
「今の時代に何を気にしているんだ」
「いやまあ、そうなんだけど」
「安心しろ、人柄に問題はない。事前に面接ぐらいしている」
「…………まあ、それなら」
神坂清志と言う男子生徒は、異性から距離を置かれるタイプではない。むしろ女子生徒からの覚えは良い方だ。容姿に優れ、日本有数の名家に生まれた男子。
Sランクと言う魔術師として最高峰の地位におり、結婚するとなればこれ以上無い優良物件だ。彼のパートナーになりたいAランク女子はかなり多い。
男女パートナーは、そのまま結婚するパターンが多い。玉の輿確定の空席だ、座りたい者が他校にすら居る。
ただし、彼本人はあまり恋愛に興味がない。それよりも己の使命が大切だったから。義姉や仕える神から、血を絶やしてはならないと頻繁に言われてはいる。
しかし彼はあまり興味が無かった。義姉となった従姉と自分、ただ2人だけになってしまった己の血脈に然程興味を持て無かったから。お家再興など、今時の若者には大した価値を感じられないから。
「良いか、ちゃんと仲良くするんだぞ」
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