99 / 184
第2章
第99話 神話生物の体内
しおりを挟む
レヴィアタンの体内に侵入したアイナの前に広がっていたのは、異様に広い空間であった。
確かに巨大な肉体を持つ生物ではあるが、それにしても広すぎるのではないかとアイナは訝しんだ。
外見から推測するに全長は40から50メートルで、現存する最も大きい鯨であるシロナガスクジラの倍近い体躯を持つ。
当然そうなれば、食道や胃袋もその分大きくなる。だがそれでも、体育館を超える広さを持つ筈がない。
「どうなっているの? やけに広いじゃない」
単なる鯨ではなく、神話生物なのだから普通の生き物とは違うと言われればそうだろう。
だが普通に呼吸が可能なレベルで酸素があるのは明らかにおかしい。まるでこの中で生き物が生活出来る様に作られたのかと思わせる空間だ。
それにレヴィアタンの体内には濃い魔術的な要素を感じせている。まるでここも異界の中であるかの様な、違和感をアイナは覚えた。
最初からその様な生物としてデザインされたのではないか。そんな予測が浮かんでも不思議ではないだけの現実が広がっている。
「これじゃ童話の世界じゃない」
鯨の体内に人が過ごせる空間があるなんて、おとぎ話の世界だ。確かに鯨に飲みこまれたダイバーが生還した話もあるにはある。
だがそれはこんな状況からの生還ではなく、もっと過酷な状況だ。真嶋を連れ戻す為に飛び込んだとは言え、これでは流石にアイナも困惑してしまう。
自分が飛び込んだのは本当にレヴィアタンの体内なのか? 自分が今見ているのは夢や幻の類かと、思わずそんな事を考えさせる。
だがそんな彼女の前に真嶋が姿を現すと、即座にアイナは戦闘態勢を取る。驚くべき状況に置かれても、執行者としての意識は消えていない。
「ひひっ……ここまで追い掛けて来ますか」
「これはどういう事かしら? アナタが何かしたの?」
「いひっ! 素晴らしいでしょう!? これこそがレヴィアタンの真実! 世界最強の箱舟!」
銃を向けられていようとも、真嶋は一向に気にしていない。それよりも自分が辿り着いた真相を語る方が、遥かに大事だと言わんばかりに捲し立てる。
レヴィアタンの研究を続けていた真嶋が見つけ出した答え。それは大きな環境の変化や生命が滅ぶ危機が起きた時、一部の生命を守護する箱舟として作られたという事実。
ノアの箱舟と似た存在であったのだと真嶋は語り続ける。同じ様な話は複数の宗教や神話に残っているので、レヴィアタンもそうであったとしても不思議ではない。
強靭な肉体と異界へと移動する能力があるのだから、目的と性能は非常にマッチしている。
「とんでもない話ね。それで、貴方はこの子で何をする気かしら?」
「こ、この力さえあれば私の邪魔は誰も出来ない! ひひっ! 好きなだけ研究が出来る」
「あんな邪悪な研究を続けるって? 認める訳にはいかないわね」
距離を詰めようとしたアイナの前に、レヴィアタンの物と思われる触手が出現する。
どうやって胃の中にまで出現させたのか不明ではあるが、既にこの場所自体が非常識の塊だ。
アイナは銃撃するか一瞬迷い、後方へと飛び退いた。まだレヴィアタンに危害を加えて良いのか、決め切れていなかったのだ。
和解が可能なら平和的に解決する方が良いのはアイナも清志と同じ。それにこんな箱舟としての機能を持つなら、尚更軽率に手出しする事は出来ない。
特にアイナの持つ魔力は、様々な魔術を阻害し破壊する。ここで使うのは非常に不味いと判断した。
「随分と仲良しじゃない? 躾でもしたのかしら? 何か芸とか出来るの?」
「ひひっ! もうレヴィアタンは私の思い通りだ! 誰も私を止められない!」
「……へぇ」
真嶋が手に持ったタブレットを操作した瞬間を、アイナは見逃さなかった。真嶋が操作したと同時に触手による攻撃が始まった。
これまでの発言と行動から、何らかの方法でレヴィアタンを操っているとアイナは判断する。
そうであるならば、レヴィアタンもまた被害者でしかない。真嶋を確保する為とは言っても、大きな怪我を負わせられない。
普段通りの戦闘方法を止め、足技を中心に対処を開始する。二丁の銃は一旦収納し、投擲にも使える大振りなナイフを手に迫り来る触手を退ける。
「もう逃げ場なんて無いのだから、諦めたらどうかしら?」
「ひ、ひひっ! お前をここから叩き出せば良いだけだ!」
「私はそう簡単に負けないわよ?」
神話生物レヴィアタンの体内で、真嶋とアイナの攻防が始まった。
まるで無限であるかの様に出現する触手達を操る真嶋と、その鍛え抜かれた肉体を武器に戦うアイナ。
強烈な蹴りが触手に命中すると、痛覚はあるのか触手達は怯む。大怪我をさせない範囲で反撃し、真嶋を捕えるの非常に困難だ。
しかし突破する為のヒントは既に得ている。どうにかして隙を突いて、真嶋が持つタブレットを破壊する。
そうすれば多少なりとも好転するだろう。射線が通ったその瞬間に、手にしたナイフを投擲する。
その時が来るまで、今は耐え忍ぶ時。焦らず急がず、チャンスの到来を見逃さぬ様にアイナは鋭い視線を向け続けた。
確かに巨大な肉体を持つ生物ではあるが、それにしても広すぎるのではないかとアイナは訝しんだ。
外見から推測するに全長は40から50メートルで、現存する最も大きい鯨であるシロナガスクジラの倍近い体躯を持つ。
当然そうなれば、食道や胃袋もその分大きくなる。だがそれでも、体育館を超える広さを持つ筈がない。
「どうなっているの? やけに広いじゃない」
単なる鯨ではなく、神話生物なのだから普通の生き物とは違うと言われればそうだろう。
だが普通に呼吸が可能なレベルで酸素があるのは明らかにおかしい。まるでこの中で生き物が生活出来る様に作られたのかと思わせる空間だ。
それにレヴィアタンの体内には濃い魔術的な要素を感じせている。まるでここも異界の中であるかの様な、違和感をアイナは覚えた。
最初からその様な生物としてデザインされたのではないか。そんな予測が浮かんでも不思議ではないだけの現実が広がっている。
「これじゃ童話の世界じゃない」
鯨の体内に人が過ごせる空間があるなんて、おとぎ話の世界だ。確かに鯨に飲みこまれたダイバーが生還した話もあるにはある。
だがそれはこんな状況からの生還ではなく、もっと過酷な状況だ。真嶋を連れ戻す為に飛び込んだとは言え、これでは流石にアイナも困惑してしまう。
自分が飛び込んだのは本当にレヴィアタンの体内なのか? 自分が今見ているのは夢や幻の類かと、思わずそんな事を考えさせる。
だがそんな彼女の前に真嶋が姿を現すと、即座にアイナは戦闘態勢を取る。驚くべき状況に置かれても、執行者としての意識は消えていない。
「ひひっ……ここまで追い掛けて来ますか」
「これはどういう事かしら? アナタが何かしたの?」
「いひっ! 素晴らしいでしょう!? これこそがレヴィアタンの真実! 世界最強の箱舟!」
銃を向けられていようとも、真嶋は一向に気にしていない。それよりも自分が辿り着いた真相を語る方が、遥かに大事だと言わんばかりに捲し立てる。
レヴィアタンの研究を続けていた真嶋が見つけ出した答え。それは大きな環境の変化や生命が滅ぶ危機が起きた時、一部の生命を守護する箱舟として作られたという事実。
ノアの箱舟と似た存在であったのだと真嶋は語り続ける。同じ様な話は複数の宗教や神話に残っているので、レヴィアタンもそうであったとしても不思議ではない。
強靭な肉体と異界へと移動する能力があるのだから、目的と性能は非常にマッチしている。
「とんでもない話ね。それで、貴方はこの子で何をする気かしら?」
「こ、この力さえあれば私の邪魔は誰も出来ない! ひひっ! 好きなだけ研究が出来る」
「あんな邪悪な研究を続けるって? 認める訳にはいかないわね」
距離を詰めようとしたアイナの前に、レヴィアタンの物と思われる触手が出現する。
どうやって胃の中にまで出現させたのか不明ではあるが、既にこの場所自体が非常識の塊だ。
アイナは銃撃するか一瞬迷い、後方へと飛び退いた。まだレヴィアタンに危害を加えて良いのか、決め切れていなかったのだ。
和解が可能なら平和的に解決する方が良いのはアイナも清志と同じ。それにこんな箱舟としての機能を持つなら、尚更軽率に手出しする事は出来ない。
特にアイナの持つ魔力は、様々な魔術を阻害し破壊する。ここで使うのは非常に不味いと判断した。
「随分と仲良しじゃない? 躾でもしたのかしら? 何か芸とか出来るの?」
「ひひっ! もうレヴィアタンは私の思い通りだ! 誰も私を止められない!」
「……へぇ」
真嶋が手に持ったタブレットを操作した瞬間を、アイナは見逃さなかった。真嶋が操作したと同時に触手による攻撃が始まった。
これまでの発言と行動から、何らかの方法でレヴィアタンを操っているとアイナは判断する。
そうであるならば、レヴィアタンもまた被害者でしかない。真嶋を確保する為とは言っても、大きな怪我を負わせられない。
普段通りの戦闘方法を止め、足技を中心に対処を開始する。二丁の銃は一旦収納し、投擲にも使える大振りなナイフを手に迫り来る触手を退ける。
「もう逃げ場なんて無いのだから、諦めたらどうかしら?」
「ひ、ひひっ! お前をここから叩き出せば良いだけだ!」
「私はそう簡単に負けないわよ?」
神話生物レヴィアタンの体内で、真嶋とアイナの攻防が始まった。
まるで無限であるかの様に出現する触手達を操る真嶋と、その鍛え抜かれた肉体を武器に戦うアイナ。
強烈な蹴りが触手に命中すると、痛覚はあるのか触手達は怯む。大怪我をさせない範囲で反撃し、真嶋を捕えるの非常に困難だ。
しかし突破する為のヒントは既に得ている。どうにかして隙を突いて、真嶋が持つタブレットを破壊する。
そうすれば多少なりとも好転するだろう。射線が通ったその瞬間に、手にしたナイフを投擲する。
その時が来るまで、今は耐え忍ぶ時。焦らず急がず、チャンスの到来を見逃さぬ様にアイナは鋭い視線を向け続けた。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活
シン
ファンタジー
世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。
大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。
GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。
そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。
探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。
そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。
たまに有り得ない方向に話が飛びます。
一話短めです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる