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番外編:Halloween
しおりを挟む橘 優斗には、二人の恋人がいる。
母親の再婚相手の息子で、大企業の御曹司であり、人気若手俳優でもある橘 直柾。
高校時代から優斗がお世話になっている先輩で、芸能人顔負けの男前であり、文武両道の竹之内 隆晴。
――どう考えても、贅沢すぎる……。
二人と恋人になって、一ヶ月が過ぎた。
優斗は今日もまた、あの二人が恋人という事実に打ち震えている。
身も心も彼らのものになったあの日を思い出すだけで、大声で叫んで転がりたい気持ちになる。
元々格好良かった二人だが、あの日はあまりにも……そう。映研サークルの女の子たちが言っていた、“雄みがすごい”という言葉がしっくりきた。
だから、それからしばらく二人の顔をまともに見られなかった。
間近で見ようものなら、あの時の二人を思い出して、逃げ出してしまうから。
優斗に逃げられた二人も、それぞれに考えた。
考えた末に直柾はあるものを用意して、優斗の住む実家のマンションを訪れていた。
「優くん、Happy Halloween」
「えっ、直柾さん、おかえりなさ……狼だっ」
思わず駆け寄った優斗は、キラキラした瞳で直柾を見つめた。直柾の頭上には、尖った耳が。腰にはふわふわの尻尾が下がっている。
「ちゃんと狼男だと分かって貰えて嬉しいよ」
逃げられないことに安堵した直柾は、優斗の手を取り、ソファに促す。
「耳も尻尾も、勿論俺も、優くんだけのものだよ」
うずうずしている優斗の手に尻尾を乗せると、両手でそっと包み込まれた。頬ずりしてもいいよ、と言ってみたら、本当に可愛い姿を見せてくれるから、直柾は笑顔のままで静かに身悶える。
「狼男の仮装は、優くんにしか見せてないんだ」
「えっ、嬉しいです。直柾さん、雑誌では吸血鬼と王子様と海賊してましたよね。そっちもかっこよかったです」
先日発売された三社の雑誌では、直柾がメインのハロウィン特集が組まれていた。
勿論即買いしたし、思わずSNSでも検索したところ、ずらりと並ぶ「血を吸われたい」「求婚されたい」「略奪されたい」の文字。
――分かる……って思ってしまった……。
見る側にそう思わせる表情、目線、色気。実力派俳優の本気を見た。
「嬉しいな。優くんは、どれが一番好きだった?」
「えっと…………吸血鬼です」
一つだけ人外の仮装なのに、それが一番似合っていた。人間離れした美形だからだろうか。
最近の直柾は髪を明るめのアッシュゴールドにしているし、雑誌では赤いカラーコンタクトをしていた。もしかしたら本当に吸血鬼ではないかと疑いたくなるほどだった。
――……本物だったら、吸われてもいいな。
そう思ってしまうくらいに直柾のことが好きなのに、本人には殆ど伝えられていない。
――好きって素直に伝えるの、難しい……。
そんなことを考えていると、ふいに顔の上に影が落ちた。
「ひッ……ちょっ、直柾さんっ、何するんですかっ」
「ごめんね。優くんが美味しそうで、つい」
つい、じゃない。
つい、で首筋を噛まないでほしい。
血を吸われる前に心臓が止まってしまう。
「本物の吸血鬼なら、優くんの血を吸って俺の一部に出来たのに……」
指先で首筋を撫でられ、また小さな声が零れてしまう。
「でも俺は優くんの物だから、やっぱり俺の一部を優くんにたくさんあげたいな」
「っ……」
「たくさん、食べてくれていいよ?」
「あのっ、それはっ」
俺が食べられる方では!?
服の隙間から直柾の手が滑り込んだ瞬間、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
「だっ、誰か来ましたね!?」
バッと起き上がり、直柾を押し返して慌てて玄関へと向かう。
――流されるところだった……!
いつ両親が帰ってくるとも知れないリビングで、本当に危ないところだった。
雑誌の吸血鬼は本当に格好良かったし、握らされたもふもふの魅力にも抗えなかった。もしここが家でなければ……受け入れた、のに……。
そんなことを考えてしまい熱くなった顔をパタパタと手で扇ぎながら、玄関の鍵を開ける。
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