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隆晴、直柾
しおりを挟むその後、隆晴は。
「隆~、優ちゃんとこ行ってたんだろ? シた?」
ワクワクした様子で寮の部屋に入ってきた叶多を、無言で睨む。ただ、無言で。すると叶多はベッドに寝転がる隆晴を見下ろし、心底驚いた顔をした。
「は? まだ? まだなんもしてねーの? なんで? 据え膳じゃん、なんで??」
「俺の理性を褒め称えろ」
「いや、マジですげーよ。俺には無理。隆、凄すぎ」
パチパチと手を叩いて素直に褒め称える。
「褒めるな」
「どっちだよ」
叶多はケラケラと笑った。こんな隆晴、面白すぎる。
「優ちゃん、絶対隆のこと好きじゃん。キスして押し倒せば百パーいけるって」
「……いける自信はある、けど、それをしたら終わりなんだよ」
重々しく溜め息をついた。
優斗の優しさや弱さを利用して、押し切って、最後まで出来る自信はある。
だがそうして抱いたとして、優斗はそれを許すだろう。許すから、もうそばにはいられない。
「隆は真面目だな」
「お前が不真面目なだけだ」
そうだな、と叶多は笑った。
自分の気持ちを押し通す事も、相手の好意を利用する事も、許される事すらも許せない。そんな人間がどれだけいるだろう。
「優ちゃんのこと、本当に大事なんだな」
「……大事だよ」
そっと目を細め柔らかく笑う隆晴に、叶多は目を瞬かせた。
その顔を見せれば終わらずに先に進めるだろうに、と思うが、このもどかしくて甘酸っぱくて子供のような恋を、見守っていたくもなる。
「頑張れよ」
「ん。サンキュ」
いつになく素直な隆晴に、優ちゃん愛されてるなぁ、とこちらの方が照れてしまった。
一方の直柾は。
「直君。お顔の準備はいいかな?」
「……これでどうでしょうか」
「うーん、駄目かな」
後部座席を振り返った櫻井は、困ったように笑う。
会った瞬間に何かがあった事は察したが、敢えて訊く事はしなかった。仕事に影響のない程度なら、直柾の意思を尊重したかったからだ。
だが、こんないかにも“恋してます”という顔の彼を世に出すわけにはいかない。
「これからもそんな感じなら、彼に会うのは控えて貰わないと」
「大丈夫です。行けます」
櫻井の言葉を遮った直柾はスッと目を閉じ、細く息を吐く。そして目を開けた時には、完璧な“俳優、橘直柾”の顔になっていた。
櫻井は満足そうに頷く。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
そうして現場へと入り完璧に仕事をこなす直柾を見つめ、今入っているもの以降は少し仕事量を減らそうかと考える。
彼が初めて仕事よりも欲したものを与えてやりたいと思うのは、マネージャーとしての気持ちか、親心か。
どちらでもいいか、と笑う。真面目で、あまりに真面目すぎる良い子の直柾には、幸せになって欲しいだけだ。
スケジュール帳を開き、今入っている中でも午前中に動かせる仕事はないか、と確認を始めた。
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