8 / 39
公開収録
しおりを挟む「今月末にドラマの公開収録があるんだ。良かったら見に来ない?」
「え? いいんですか?」
優斗はパッと顔を輝かせた。あまりに即答され、直柾は目を瞬かせる。
「もしかして優くん、芸能界に興味あるの?」
「え? ないですよ?」
芸能界に入りたい、働きたい、とは全く思っていない。
「お仕事中の兄さんを見てみたくて」
「優くんはまた、可愛いことを……」
無邪気に笑う優斗をギュウッと抱き締めた。
「許可証、二枚用意するね。隆晴君とおいで」
「いいんですか?」
まさか彼まで誘ってくれるとは。すると直柾はにっこりと笑って。
「優くんのボディーガードとしてね?」
そう言い放った。
最近、優斗の前でも隆晴への対抗心を隠さなくなった。最初こそ戸惑ったが、こんな彼も良いなと思……、いや、新たな一面を知れて嬉しいと思うようになった。
“穏やかで完璧な王子様”ではない姿を見られる事が、嬉しいのだ。
チラリと背後を振り返ると、直柾は愛しげに優斗を見つめる。
……これは、自分だけが見られる顔かもしれない。その顔を、独り占め。
――何だろう……嬉しいというか、むず痒いというか……。
胸の内に生まれた感情に首を傾げながらも、やはり悪い顔よりもこの顔が一番いいな、と思うのだった。
・
・
・
そして、当日。
ドラマの収録場所は、一流ホテルの大広間と、そこへと続く廊下だった。
パーティーシーンでは大勢の俳優が集まる為、複数の事務所のマネージャーやスタッフも訪れているようだ。
指定された入口から収録場所へと向かう優斗と隆晴だったが……。
「君、どこかの事務所に所属してるかな? もし良かったら、うちのモデル事務所に……」
「すみません。そういうの興味なくて」
「え? そうなの? 勿体ないな」
本気で勿体ないという顔で引き止めようとする男性に隆晴は軽く会釈し、優斗の手を引きその場を離れる。
廊下の角を曲がるとまた声を掛けられた。
「五回目ですね」
「勘弁してくれ……」
クスクスと笑う優斗に、隆晴はわざと大きく溜め息をついた。
モデル事務所からの誘いが三回、俳優方面の誘いが二回。角を曲がる度に声を掛けられ、さすがに辟易してきた。
「先輩は立ってるだけでも目を惹きますから」
「好きな奴の目だけは惹けないけどな」
「は、……あ、すみません……」
「謝んな。ってか、マジで惹けてないのか……」
「惹け、てはいるかと……」
「なんで他人目線なんだよ」
本気で惹けていなかったとは何気にショックだ。
思わず溜め息をつくと、優斗はそっと視線を伏せた。
「俺が見てるとすぐ先輩がこっちを見るので、落ち着かないというか、それで、ずっとは見ていられないというか」
惹き付けられては、いる。
ただ、見られると見つめ返せないだけで。
「あれ? 目を惹くってそういうことじゃないです?」
あれ? と首を傾げる。
母親が再婚した事で心配事がなくなり気が抜けたのか、優斗は時々天然さを発揮するようになった。自分が無意識に爆弾を落としている事にも気付いていない。
今すぐそこの角に引きずり込みてぇ……。
機材が積まれた場所へと視線を向けてしまい、隆晴はそっと溜め息をついた。大丈夫だ。理性はまだ生きている。
今はただの先輩でいよう、と己に言い聞かせ、優斗の頭をわしゃわしゃと撫でた。
140
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる