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最後の答え2
しおりを挟む涙が止まると途端に恥ずかしくなり、すみません、と体を離す。
あんなに泣いて、恥ずかしい事もたくさん言ってしまった気がする。居たたまれない。居たたまれなくて、顔を洗って来ますと言って慌ててその場を離れた。
「うわ、酷い顔」
鏡に映る顔に、苦笑した。
目は赤く、瞼も少し腫れて、あの二人と並ぶにはますます申し訳ない顔になっている。
今まで殆んど泣いた事のない優斗は、涙の止め方が分からなかった。
ただどこで聞いたのか、泣いたら目は冷やす、という知識があり、タオルを水に浸して目に当てる。
これはどれくらい冷やすものなのだろう。1分も経たないうちにタオルを外すと、ドアの向こうから控えめな声が掛かった。
「優くん、大丈夫?」
「はい。えっと、すみません。もう少し目を冷やしてから行きます」
と言うと、突然ドアが開いた。
そして直柾に手を引かれ、ソファに横にされる。
直柾の膝枕の上で、目元にはタオルが乗せられて。体温で温まったタオルは隆晴が取り替えた。
……恋人になって早々、甲斐甲斐しく世話をされてしまった。また迷惑を掛けてしまった。
落ち込む優斗に気付いたのか、二人は大丈夫だと言うように、よしよしと優しく頭を撫でた。
「本当は、ちゃんと言葉を考えてから告白しようと思っていたのですが……」
言い訳は格好悪いが、本当は違うのだと言っておきたかった。
「あの写真を見せて、呆れられたかと思って……。気持ちを伝える前にお二人が離れていく気がして、慌てて告白してしまったので……なんだかもうぐちゃぐちゃで……」
格好悪い、と自己嫌悪に呻く。
本当は、先に告白だけをするつもりだった。好きだと、恋人になりたいと伝えて、それから、いつからどう想い始めたのか、どこで好きになったのか、きちんと順序立てて話すつもりだった。
もっときちんと内容を纏めて言葉にするつもりだったのだ。
ちゃんと恋愛の好きだと確信して、色々な覚悟も出来て、それなのにもう一緒にいられなくなると思ったら、怖くなった。だから……。
あの写真。二人は一度首を傾げ、察した。
「ああ、あれか。俺にどうこう言う資格はなくても、諦めねぇからって言おうとしたんだけどな」
「え?」
「好きな人が出来ても、渡さないって言おうとしたんだけどね」
「え……」
「俺が諦めると思ったか?」
「優くんのことは誰にも渡さないよ?」
勘違い。
早とちり。
ポンポンと言葉が浮かぶ。それで、焦ってしどろもどろになりながら告白をしてしまった。優斗はタオルの下でギュッと目を閉じた。
「大変お見苦しいところをお見せしました……」
「俺はね、優くんの気持ち、たくさん聞けて嬉しかったよ」
優しい声音に胸がほわりとする。だが、出来れば忘れて欲しい。そして最初からやり直させて欲しい。
「泣き顔、可愛かったしな」
出来ても出来なくても今すぐに忘れて欲しい。今、すぐ。
「ところで優くん。いつから彼を名前で呼ぶようになったの?」
「え……」
「アンタの知らない間ですけど?」
「へぇ?」
「あの……」
見えない先で、バチッと火花が散った気がした。
「あの、喧嘩はしないでくださいね?」
そう言うと、二人は動きを止める。
「優くんがそう言うなら……」
「不本意だけどな」
「君のそういうところだよ」
「何のことか分かりませんけど」
という声がまた聞こえ始め、これは喧嘩ではなく二人なりのコミュニケーションかな、と思う事にした。
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