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「たまにはいいんじゃない?」
 
 ナミに事の経緯を説明した時に返ってきた言葉だった。
 
「今まで部隊の指揮する研修を受けてきたし、今度は実戦でするにもいいんじゃない?」
 
「いいのか?」
 
「うん、それに目的がある旅ってわけじゃないじゃない? 実際にやってみたら自分に向いていたってこともあるかもしれないじゃない」
 
「研修の時は、適正は標準だったぞ」
 
「適正だって経験によって変わるでしょ」
 
「まあ、そうだが・・・」
 
 俺はナミと話をして、てっきり嫌がられると思ったのだが実際はそんなことはなかった。そしてここ最近、ナミは妙に機嫌がいい、不思議だ。
 
 俺は指揮官のオーガと待ち合わせした場所に向かう事にした。待ち合わせた場所は大きな建物の大きな部屋だった、大きなというのは俺にとっては、だった。オーガにとっては普通の広さなのだろうと、集まったオーガの数と部屋の広さを見て思った。
 
 長方形のテーブルにオーガたちがそれぞれ立っており、中央奥には指揮官のオーガがいた。
 
「きてくれてありがとう、レンツ殿」
 
 そして、レンツコールが始まり、指揮官のオーガがそれをなだめ、ようやく話が出来る状態になった。それを見ていたナミが笑いを堪えていて、俺はいたたまれなくなっていた。
 
「改めて、俺は指揮官のマガツだ。ここにそろっているのはオーガの中でも精鋭の強さを持つ者たちだ」
 
「「「よろしくお願いします!」」」
 
 十数名のオーガが一斉に敬礼したので少し驚いた。
 
「俺たちを導いてほしい」
 
 指揮官のマガツは頭を下げると、周りのオーガたちも頭を下げたので俺はそれに応えることにした。
 
「わかった、必ずオーガたちが勝利を手にするように導く」
 
 オーガたちは雄たけびを上げ始め、すでに勝ったつもりでいた。まだ傷が全快していないオーガは傷口から血が噴き出したりしていて、不安になってきた。
 気を取り直し、マガツにこのクーデター的な何かに参加してるオーガの数、扱ってる武器などを聞くことにした。武器はドラゴンにダメージを与えられるのか、また勝算についての確認をした。それに対して、マガツは答えられる、答えられない箇所があり、俺は把握するために対話し続けた。
 
 長い会談の後、すっかり外は暗くなり、俺は宿泊する場所のことをすっかり忘れていた。
 
 マガツにいいところはないかと聞くと、この建物に客室があるので利用してくださいと言われ宿泊所は無事に確保し、会談の続きは翌日となった。翌日は続きの会談をしつつ、現状のままでは命令系統に課題があり、それらを解消しない限り作戦そのものを遂行できないことがわかった。
 
 まず俺は各オーガに役割を教える事にした。
 
 オーガは自分より強いものに従うため、指揮官のマガツと一騎打ちし、徹底的に力の差をオーガたちに見せつけた。念のため、ナミにも協力してもらってナミもマガツを倒してもらった。そのあと、ドラゴンがいつ攻めてくるのか確認したが、城へ行って攻撃しない限りあちらから襲ってきたことはないと知り、時間的余裕があることを知った。
 
 マガツを公衆の面前で倒したことにより、オーガは仮として自分の配下に入ることになった。仮というのはドラゴンがここを治めているので、ドラゴンに俺が一騎打ちで勝てば、仮ではなくなる。そんなことはしたくないのでしない。
 
 小隊、中隊、大隊と決め、各隊にリーダーと連絡兵を定めた。ドラゴン一体に対して千人規模必要かと問われるとオーガなら余裕になるだろう。しかし、それは作戦と各オーガの役割次第だと教える事にした。実際にマガツと戦ったことで彼らの戦闘能力は良く、先日のドラゴンとの無謀な突撃でも身体は丈夫であることと、戦闘センスがあるのか、立ち回りは悪くなかった。
 
 ドラゴンに手加減されているだろうが、戦術次第では圧倒できると感じた。
 
「レンツ殿、この作戦はどういう効果が?」
 
 俺は簡易的に作成した市内地の模型とオーガとドラゴンの人形で作戦を説明していた。城の中はどうなっているかわからないが、昨日はどうやったら立ち回っていたら勝てたのか説明した。説明の途中だったが、疑問に思ったオーガの一人が質問してきたのだ。
 
「これは、相手をかく乱する作戦だ。一人が処理できる限界というのは決められているから、その限界を常に刺激し、冷静な判断をしにくくする。そうすることでスキがうまれやすくなるので、そこに攻撃を与え続ける。相手からの攻撃に対しては反撃せず耐えて、攻撃してるチームの支援を行う意味がある」
 
「なるほど・・・」
 
 俺は作戦に参加する人数の規模、交代で戦い続ける方法、兵糧の考え方、などを可能な限り伝授していった。

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