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今の状況と手品のように水のペットボトルを召喚できる事を考えながら、歩いているとマナチが砂利に足を捕らわれて盛大に転んだ。
「ふぎゃっ」
僕はすかさず、彼女に駆け寄ってそっと寄り手を差し伸べた。正直、砂利の上というのは、ちくちくして立ち上がる時も手のひらがあまり心地よくない。
「あ、ありがと」
「どういたしまして」
よく見ると膝が擦りむけていて、血が滲んでいた。僕はシャツの左袖を引きちぎり、水が入ったペットボトルを召喚し、少し湿らせて拭いてあげた。
「あとはこうして、こう、っと」
引きちぎった袖を軽く巻き付けて縛ってあげた。
「これでよし、大丈夫?」
「う、うん。ありがと」
僕としてはポイント稼げたと思ったりしたが、本当だったら転ぶ前に支えてあげた方がベストだよなぁとぼんやりと思った。そっちの方がかっこいいからだ。
「ね、ねぇ……転ばないように手をつないでもいい?」
と言いながらすでに僕の手を握ってきてるあたり、キュンポイント高いなと思った。
「あ、ああ。いいよ」
声が上ずった。
僕は恥ずかしさを隠すように、彼女の手を握り返し、一緒に歩くことにした。先を歩いている三人を見ると、ハルミンがタッツーの腕に巻きついて歩いていた。ムッツーはタッツーと話しながら、ハルミンが相槌を打ったりしてるのがわかった。
「ヨーちゃん、やさしいよね。へへっ、ありがとう」
マナチの言葉で手が汗ばむような感じになりつつあり、手汗をどうしようかと頭がいっぱいになった。
「そ、そうか」
こんな時、気が利いた返しが出来るように妄想していたが、咄嗟に出てこない自分はかっこ悪いなと思った。
「普通、咄嗟に袖引きちぎって巻いてくれたりしないよ。すごいよ」
僕はマナチの方を見ることが出来なかった。こういうシチュエーションはそもそも今までなく、どうしたらいいのかわからなかった。いやそもそもよくわからない場所で空はどんより雲模様、遠くには謎の淡い光り、あたりは砂利ばかり、ムードなんてない。
「あっ、ちょっと……その、ムッツーに相談したい事があるから、先に行くね」
いきなり繋いでいた手を離された。
砂利に足を捕らわれることなく、さささーとマナチはムッツーの横に行き、何か話をしていた。もじもじとしながら、さながら恋する乙女みたいな感じだった。
これはあれか、僕の手汗がひどかったせいなのかと思い、さっきまで握っていた手を見つめた。
手汗はかいてなかった。
肩をすくめ、前を向くとムッツーとマナチの二人の会話が終わったのか、ムッツーがこちらの方に振り向いた。僕と目が合ったような気がし、もしかして不快だったからと自重しろとか言われるのだろうとか少し恐れた。
あの人ちょっとやさしくしたら勘違いしてきて、そんなつもりじゃなかった的な流れで悪者扱いされるやつだ。
「ちょっといったん止まってくれ、トイレ休憩にしよう。あの丘の裏側で行く人はついてきてくれ」
どうやらトイレ休憩したくて話しかけにいったのだった。僕は一安心した。
「ほかにいないか?」
「あ、あの・・・」
後ろを見るとおずおずとツバサが手を上げていた。
「じゃあ、行こうか」
ムッツーは丘の裏側へ先導するように歩いていった。それにつられてマナチも歩いていき、ツバサは挙動不審になりながらムッツーの後を追うのであった。
三人が砂利の丘の向こう側に隠れ、見えなくなって数秒も立たない内に大きな声がした。
「なんだそれは!?」
「ひぃ!」
ムッツーの叫び声とツバサの悲鳴が聞こえ、タッツーは急いで丘の裏側へ向かう途中で立ち止まり、彼女も驚いていた。
「えっ!?」
そして、何かを指さし、何か話し込んでいた。気になって見に行きたいが、さすがに覗き込む勇気はなかった。いや勇気というか変態だよなと思った。
事の成り行きを見ていると、何か見つけて驚き、タッツーが何か怒っているようだった。何に怒っているのかわからないが、怒ってる相手は多分ムッツーだろうなぁと思った。あのタッツーに尻を叱られるムッツーが妙にしっくり想像できたからだ。
トイレが終わり、砂利の丘の向こう側から出てきた時にマナチの服装だけが違っていた。
僕は一瞬で察し、ムッツーがマナチに何かしてけしからん事になったとわかった。さっきまで着ていた服ではなく、下半身だけズボンとがっちりとした靴を履いていた。どこからその服があったのか、というよりも何があったのか、いや何したんだという事が僕の中で頭がいっぱいだった。
「今日はこれ以上進まないでここでキャンプし、ツバサが知った事をみんなで共有し、明日に備えようと思う」
「いいんじゃないかしら」
タッツーはマナチの近くに行き、背中をさすってあげながら賛成していた。
僕はその賛成の前に何があったのか知りたいんだけども、ていうか、キャンプ言うても何もないからペットボトルを大量に出してその上で寝るくらいしか想像できなかった。
「私は賛成・・・」
マナチは目がまた少し腫れており、泣いた事が一目瞭然だった。
くっ、あの一瞬でいったい何をどうしたんだ。僕は知りたいという思いと不埒な妄想がさっきから頭の中で渦巻いていた。
「ところでツバサ、他にどんな事が可能なんだ? 説明してくれると助かる」
ムッツーがツバサに話しかけ、何か説明を求めていた。いや、お前が何をしたのか説明してください。
「服とか出せるようになったってこと!?」
ハルミンがマナチのズボンを指さしてツバサに聞いた。
「え、あ、はい……」
「……」
「……」
二人の会話が続かず、ハルミンは気まずくなり、ツバサももじもじし始めたのだった。僕は水が入ったペットボトル以外に服を召喚できたから、マナチに新しく服を着せたのかと思った。その服でマナチが泣いているのは、その見た目がしっかりした服だけど、いかがわしい服なのかと考えた。
「マナチがペットボトルを出したように、何か発見したということかしら?」
タッツーがツバサに気を使い、ハルミンとの会話を取り持っていた。どうして冷静でいられるのだろうか、ムッツーがマナチに何かしたはずなのに、どういうことだ?
タッツーは空気を読み、答えやすい質問をするのが上手かった。そして、包容力をかもしだしていたのもあり、相手に安心感を与えるのに充分なのだろう。もしかして無限の包容力はなんでも許しちゃうのか?
「は、はひ・・・あの『これ』がいろいろ教えてくれて、野営に必要な道具とか、食べ物とか、服とか、あるのがわかりました」
何かアレな道具でも取り出したのかと思ったらアーミーナイフだった。
僕は冷静になった。
「ふぎゃっ」
僕はすかさず、彼女に駆け寄ってそっと寄り手を差し伸べた。正直、砂利の上というのは、ちくちくして立ち上がる時も手のひらがあまり心地よくない。
「あ、ありがと」
「どういたしまして」
よく見ると膝が擦りむけていて、血が滲んでいた。僕はシャツの左袖を引きちぎり、水が入ったペットボトルを召喚し、少し湿らせて拭いてあげた。
「あとはこうして、こう、っと」
引きちぎった袖を軽く巻き付けて縛ってあげた。
「これでよし、大丈夫?」
「う、うん。ありがと」
僕としてはポイント稼げたと思ったりしたが、本当だったら転ぶ前に支えてあげた方がベストだよなぁとぼんやりと思った。そっちの方がかっこいいからだ。
「ね、ねぇ……転ばないように手をつないでもいい?」
と言いながらすでに僕の手を握ってきてるあたり、キュンポイント高いなと思った。
「あ、ああ。いいよ」
声が上ずった。
僕は恥ずかしさを隠すように、彼女の手を握り返し、一緒に歩くことにした。先を歩いている三人を見ると、ハルミンがタッツーの腕に巻きついて歩いていた。ムッツーはタッツーと話しながら、ハルミンが相槌を打ったりしてるのがわかった。
「ヨーちゃん、やさしいよね。へへっ、ありがとう」
マナチの言葉で手が汗ばむような感じになりつつあり、手汗をどうしようかと頭がいっぱいになった。
「そ、そうか」
こんな時、気が利いた返しが出来るように妄想していたが、咄嗟に出てこない自分はかっこ悪いなと思った。
「普通、咄嗟に袖引きちぎって巻いてくれたりしないよ。すごいよ」
僕はマナチの方を見ることが出来なかった。こういうシチュエーションはそもそも今までなく、どうしたらいいのかわからなかった。いやそもそもよくわからない場所で空はどんより雲模様、遠くには謎の淡い光り、あたりは砂利ばかり、ムードなんてない。
「あっ、ちょっと……その、ムッツーに相談したい事があるから、先に行くね」
いきなり繋いでいた手を離された。
砂利に足を捕らわれることなく、さささーとマナチはムッツーの横に行き、何か話をしていた。もじもじとしながら、さながら恋する乙女みたいな感じだった。
これはあれか、僕の手汗がひどかったせいなのかと思い、さっきまで握っていた手を見つめた。
手汗はかいてなかった。
肩をすくめ、前を向くとムッツーとマナチの二人の会話が終わったのか、ムッツーがこちらの方に振り向いた。僕と目が合ったような気がし、もしかして不快だったからと自重しろとか言われるのだろうとか少し恐れた。
あの人ちょっとやさしくしたら勘違いしてきて、そんなつもりじゃなかった的な流れで悪者扱いされるやつだ。
「ちょっといったん止まってくれ、トイレ休憩にしよう。あの丘の裏側で行く人はついてきてくれ」
どうやらトイレ休憩したくて話しかけにいったのだった。僕は一安心した。
「ほかにいないか?」
「あ、あの・・・」
後ろを見るとおずおずとツバサが手を上げていた。
「じゃあ、行こうか」
ムッツーは丘の裏側へ先導するように歩いていった。それにつられてマナチも歩いていき、ツバサは挙動不審になりながらムッツーの後を追うのであった。
三人が砂利の丘の向こう側に隠れ、見えなくなって数秒も立たない内に大きな声がした。
「なんだそれは!?」
「ひぃ!」
ムッツーの叫び声とツバサの悲鳴が聞こえ、タッツーは急いで丘の裏側へ向かう途中で立ち止まり、彼女も驚いていた。
「えっ!?」
そして、何かを指さし、何か話し込んでいた。気になって見に行きたいが、さすがに覗き込む勇気はなかった。いや勇気というか変態だよなと思った。
事の成り行きを見ていると、何か見つけて驚き、タッツーが何か怒っているようだった。何に怒っているのかわからないが、怒ってる相手は多分ムッツーだろうなぁと思った。あのタッツーに尻を叱られるムッツーが妙にしっくり想像できたからだ。
トイレが終わり、砂利の丘の向こう側から出てきた時にマナチの服装だけが違っていた。
僕は一瞬で察し、ムッツーがマナチに何かしてけしからん事になったとわかった。さっきまで着ていた服ではなく、下半身だけズボンとがっちりとした靴を履いていた。どこからその服があったのか、というよりも何があったのか、いや何したんだという事が僕の中で頭がいっぱいだった。
「今日はこれ以上進まないでここでキャンプし、ツバサが知った事をみんなで共有し、明日に備えようと思う」
「いいんじゃないかしら」
タッツーはマナチの近くに行き、背中をさすってあげながら賛成していた。
僕はその賛成の前に何があったのか知りたいんだけども、ていうか、キャンプ言うても何もないからペットボトルを大量に出してその上で寝るくらいしか想像できなかった。
「私は賛成・・・」
マナチは目がまた少し腫れており、泣いた事が一目瞭然だった。
くっ、あの一瞬でいったい何をどうしたんだ。僕は知りたいという思いと不埒な妄想がさっきから頭の中で渦巻いていた。
「ところでツバサ、他にどんな事が可能なんだ? 説明してくれると助かる」
ムッツーがツバサに話しかけ、何か説明を求めていた。いや、お前が何をしたのか説明してください。
「服とか出せるようになったってこと!?」
ハルミンがマナチのズボンを指さしてツバサに聞いた。
「え、あ、はい……」
「……」
「……」
二人の会話が続かず、ハルミンは気まずくなり、ツバサももじもじし始めたのだった。僕は水が入ったペットボトル以外に服を召喚できたから、マナチに新しく服を着せたのかと思った。その服でマナチが泣いているのは、その見た目がしっかりした服だけど、いかがわしい服なのかと考えた。
「マナチがペットボトルを出したように、何か発見したということかしら?」
タッツーがツバサに気を使い、ハルミンとの会話を取り持っていた。どうして冷静でいられるのだろうか、ムッツーがマナチに何かしたはずなのに、どういうことだ?
タッツーは空気を読み、答えやすい質問をするのが上手かった。そして、包容力をかもしだしていたのもあり、相手に安心感を与えるのに充分なのだろう。もしかして無限の包容力はなんでも許しちゃうのか?
「は、はひ・・・あの『これ』がいろいろ教えてくれて、野営に必要な道具とか、食べ物とか、服とか、あるのがわかりました」
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