9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
13 / 82

13

しおりを挟む
 僕はマナチと会話してる中で、携帯端末の動画をさらに確かめたいと思った。意識して、毒物を直接汁物に入れ、それを殺した後に毒物だけ意識して除去すれば、自分自身だけ助かる。そして、それを動画で撮っておく事で自分が殺害したわけじゃないと言えるのではないかとおもった。もし、目撃者がいたとしてもこの携帯端末の動画で言い逃れができる。
 
 僕は水が入ったペットボトルを召喚し、半分程捨て、スティック状のお菓子を砕いてペットボトルに入れた。
 
「ヨーちゃん、何してるの?」
「ちょっと気になったことがあるから試してるんだ」
 
 僕はペットボトルをふり、水とスティック状のお菓子が混ざり合い、飲むのに勇気が必要な何かになった。
 
「ヨーちゃん、まさか飲むの?」
「いや、飲まないよ?」
 
 僕はスティック状のお菓子だけ消えろと意識した。すると、濁り溶け合った水は元の水になった。
 
「わー! すごい手品だ」
「まじか」
 
 僕は出来るとは思わなかった事が出来てしまい、驚いた。
 あの生き残った一人が毒物を入れたかもしれない、だが、他の人も同じように入れてその人を殺したと擦り付ける事も可能だと思った。
 
「どうしたの?」
「今度はマナチがこの中に何か入れてみてよ」
「うん、わかった」
 
 マナチがラムネみたいなものを取り出し、ペットボトルの中に粉々にして入れてくれた。僕はさっきと同じように中身をふって、混ぜ合わせた。
 
「マナチ、さっき入れたのを消したいと意識してみてくれるか」
「むむ~むん!」
 かわいい掛け声だ。
 
 すると混ぜ合った水は元の透き通った水に戻った。これはますます誰が食中毒を起こしたのかわからないと思った。
 
「マナチ、ありがとう」
「気になる事がわかった?」
「うーん、もっとわからなくなった感じかな?」
「そっかぁ~わかるといいね」
「そうだね、ありがとう」
 癒し、圧倒的癒し。この笑顔があるおかげで元気になれる。
 
 ほどなくして、砂利の砂漠へ戻り、瓦礫が見えないような砂利の丘の裏側にまで移動した。ここならネズミからも見えないし、瓦礫の山からも見えないので大丈夫だろうというムッツーの判断だろう。
 
「このあたりで、あの場所で何を発見したのか話す」
 ムッツーは、椅子やテーブルなどを出し、それぞれ座るように促した。僕の方を向き、携帯端末を出してくれとジェスチャーしてきた。僕がポケットから携帯端末を出すと、周りは驚いていた。
 
「そこに動画が録画されているんだが、あのネズミの死体の奥で何が起きていたのか記録されていた」
 ムッツーが重々しく、ドヤ顔で言った。
「そ、そんな事より助けを呼べるんじゃないの?」
 ハルミンがムッツーのドヤ顔をいっきに赤面化させた。
 
 その発想はなかった。大丈夫、ムッツーよ……僕も同じだ。
 
 僕は携帯端末を操作し、電話やメールなどどこかと通信可能な手段があるか調べた。しかし、あるのは写真撮影、動画を撮る、録音するだけだった。
「ムッツー、ちょっと僕の代わりにこの携帯を見てくれないか、もしかしたら僕の操作が悪くてわかってないのかもしれない」
 僕はムッツーに携帯を渡し、ムッツーにも確かめてもらう事にした。
 
「これはただのデジタルカメラだ」
 よかった、僕が機械音痴だと思ったら、デジタルカメラだった。どこの世界に携帯端末と同じ見た目のデジタルカメラがあるんだよ。ちくしょう。
 
「ハルミン、どうやらこれは携帯じゃなくてデジタルカメラだった」
「そ、そっか……」
 ハルミン、期待させてごめんよ。
 
 ムッツーは気を取り直し、あのネズミの死体の山の奥に何があったのか話し始めた。人の死体がたくさんあり、デジタルカメラが瓦礫の山の中にあり、その後でネズミが現れ、ネズミが死んでいった事をかいつまんで話した。
 死体がどういう状態だったかなど細部は話をしなかったが、みな一様にショックを受けていた。自分たち以外に人がいたけれど、死んでましたなんて驚かない方が無理な話だ。
 
 そして僕たちが戻ってきて砂利の砂漠まで戻るというのがどういう意味を持つのか一同に緊張が走ったように感じた。あの瓦礫の山の中にネズミがいるという事が怖気が走るというか、怖いというわけだ。
 
「動画を見たいかどうかは、各自ヨーちゃんに言って見せてもらってくれ……それでいいかな?」
 
 僕は頷き、周りも頷いていた。あれ、ということはこのデジタルカメラは僕が所有していいってことか、やったぜ! いや、あの動画は残しておかないといけないから何か気味が悪いなぁ、でも思い出は残せるからいいかもしれない。まて、素直にマナチが撮らせてくれるのか?
 
「砂利の砂漠まで戻ってきた理由を改めて説明すると、あの瓦礫の山の中にネズミが生息している。あそこに留まり続けた場合、ネズミに襲われるかもしれないと思い、距離をとったのが一つだ」
 ムッツーが説明し始め、現実に引き戻された。
 ハルミンの方を見るとあの状況を思い出したのか気分が悪くなっているようだった。
 
「そして、もう一つが……あの大量のネズミの死体の奥に私たちと同じくらいの女性が死んでいて、生き残りがいるがどこにいるかわからないという事だ。殺した人がどこかでいるかもしれないので、離れてここまで戻ってきた」
 
 みな、信じたくないという思いと不安と恐怖により、身をすくめたり、震える者もいた。こういう時に効果的に彼女たちをなぐさめればラブラブになれるのかなと思ったが、どうすればいいのかわからなくて思考が停止した。
 
 ムッツーはデジタルカメラで録画された状況を説明し、どうやって死んで、何が起きたのかを説明した。話を聞いた後に、その動画を確かめたいと言ったのはタッツー、ジュリ、ツバサ、マナチだった。ハルミンだけは、気分がすぐれないのもありテントをだし、先にテントの中に入っていった。
 
 僕はチャンスかもしれないと思い、席を立った。
「私が行くわ、ヨーちゃんは危ない中でいろいろ見てきて勇敢で強くてすごいわ……そのムッツーを支えてくれると嬉しいわ」
「わかった、やれることはやる」
 ママ母性本能にお願いされちゃったら、残ってムッツーと協力しないとな。決してまるで心を見透かされたから引いたわけじゃないよ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

処理中です...