婚約破棄から仕返し婚~王子様のお弁当を踏みつぶしたシンデレラ

青の雀

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6.お泊り

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 「ん……ッっ……、ふゎ……っ……。」

 チュパチュパと水温が響いている、

 カフェから、社長に拉致されて、今は社長のマンションに来ているのだが、玄関を入った途端、社長から熱烈なキスの嵐で、息ができないぐらい。

 せめて、荷物を置かせて、とお願いしたら、荷物だけ、本当に荷物だけを置かせてもらい、唇を吸われて、舌を挿し込まれて、絡めとられて、スーツの上着を器用に脱がされ、ブラウスのボタンも4つ目まで外され、スカートのファスナーを下ろされ、フォックを外されると下にストンと落ちる。

 「今日は、結婚のことで、はるかと話がしたくて、来てもらったのだけど、我慢できなくなってしまって、ごめんね。」

 「とにかく脱いで。話し合いをしよう。」

 「ん?なぜ、脱ぐ必要があるの?」

 「はるかのスーツは、キャリアの戦闘服だろ?素のままのはるかと話がしたい。」

 ああ、確かに言われてみれば、そうだ。仕事の時は必ず、スーツを着る。スーツを着ないでは、仕事にならない。

 妙に納得するものの、それならスーツだけでもいいのでは?と手を止める。ブラウスまで脱ぐ必要がある?

 でも、ふと見ると、社長はスーツを脱ぎ、きれいに畳まれている。プライベートな話をするのだから、鎧は脱がないとな。そして、スゥエットの上下に着替えて、お茶の支度をしてくださっている。

 「飯まだだろ?ピザでも、頼むか?」

 社長は、ピザ宅配に電話して、アレコレ注文している。

 社長は普段着があるからいいけど、はるかは何も持ってきていないので、ここでスーツを脱いでしまっても何も着るものがない。

 途方に暮れていると、そこにピザが配達されてきた。とにかく食べようということになり、はるかは半裸のまま、ピザを食べ始める。

 そうだ、 社内メールのことも言わないと、と思っていると、LIMEを交換してと言われる。

 だよね。やっぱり社内メールはヤバイよね。

 「そろそろ、下の名前で呼んでくれないか?」

 「へ?社長の下の名前って、よく知らない。え……と、山形正幸さんだったよね?」

 「それは、親父の名前、俺の名前は正孝だ。」

 「ああ、正孝さんね。」

 「さんは、いらないだろ?これから夫婦になるのだからな。」

 「正孝でいい?」

 「いいよ。はるか。」

 名前を呼び合うだけで、照れる。

 「今日は、泊ってけよ。」

 「でも、明日の着替えがないから一度帰るわ。それに明日のお弁当の準備もあるからね。」

 「はるかのご実家のご両親のところへ挨拶に行きたいけど、都合聞いといてもらえるかな?」

 「ありがとう。正孝。」

 車ではるかのマンションまで送ってくれて、ついでだからと、お茶でも?と言えば、ノコノコ上がり込んでこられ、はるかのマンションでセックスする。

 正孝のマンションで、ピザを食べながら、さんざん弄られていたので、すぐ濡れ、お互いが満足できたことは良かった。

 まぁ、一度目の朝チュンのことを思えば、シラフなだけマシかもしれない。あの時から、まだ2日しかたっていないなんて、嘘みたいな展開に自分でも驚く。

 結局、正孝がはるかのマンションに泊まり、はるかの家で朝ごはんを食べ、背広を取りに正孝の自宅マンションまで行き、お弁当を手渡し、一緒に出勤することになってしまったのだ。もうこれだけ既成事実を作ってしまえば、何も怖くない。

 開き直りって、恐ろしい。

 緑岡陽子も、こんな心境だったのかしら、とふと思う。

 会社に着くと、改札を通ってからは、もうすっかり他人同士のフリ。

 「おはようございます。」

 何食わぬ顔で挨拶をする。

 「ああ、おはよう。篠原さんも早いね。」

 {ええ。社長と同伴出勤ですもの。}

 はるかは返事の代わりにニッコリ微笑む。

 社長は社長室へ。はるかは経理部へ出勤していく。
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