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10.乳母
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明朝になり、とりあえずアクエリアスだけが先に城に入ることにした。
昨日夜ご飯の時も、そして今日の朝ごはんの時も当然のように家族団らんの席にユリウスは居座り、孫を抱かせてくれと喚き散らした。
それだけなら一度ぐらい抱っこさせてあげても良かったと思っていたけど、ユリウスはハロルドの顔を見た途端、激昂してハロルドを殴った。
大事な旦那様のイケメンの顔に傷でもついたらタダでは置かないわよ。と無言の殺気を感じ取ったらしく、以降、おとなしくはなったものの
「一発ぐらい殴ってやらないと、気が済まなかった。許せ」
それで済まそうなんて、酷い!絶対、孫を抱っこなんかさせてやらない。
ハロルドは、子供たちとお留守番してもらうことにして、アクエリアスだけが陛下と共に馬車に乗った。
「孫たちを連れてくればいいものを……」
「大丈夫よ、ハルといた方があの子たちはゴキゲンにしているわ。なんてったってハルはイクメンだから」
「いくめん……?」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
城に帰ると、もういきなり決済の書類に囲まれてしまう。
文句を言おうにもユリウスは、当然だろ!?という顔をして取り合わない。こんなに仕事が溜まっているなら、なんで昨夜ベンジャミン家に居座ったのよ?仕事しなさいっ!
書類仕事の合間にドレスの仮縫いがある。いや、必要ないし。新しいドレスならヒロインに作ってあげれば?
でも半日、お城で過ごしていると、フローラルの姿が一切見えないことに気づく。
「あれ?そう言えば、わたくしの家出と同時に娘だと名乗る令嬢が来たはずではないの?」
侍女に聞くも、首を横に振るばかりで何も教えてくれない。
おかしい。ヒロインが物語に出てこないのは、どう考えても変だ。
アクエリアスが逃げ出したことで、ハロルドと恋に堕ち子供を産んだことが関係あるの?歴史を変えてしまったから、ストーリー自体がおかしな方向に行っている?
うーん。考えても答えは見つからない。誰に聞いてもフローラルの存在がない?
まさか!?アクエリアスの代わりに処刑されてしまったとか?いやいや、そんな話であれば、ラスベガスにいても、噂ぐらいは耳にしただろうが、そんな噂も聞いたことがない。
何が何だかわからないうちに日数だけが過ぎていく。アクエリアスは王城の自分の部屋には泊まらないで、相変わらずベンジャミン家に帰っている。
すっかりベンジャミン家の嫁扱い?になっているよう。でも、嫁としての仕事は何一つしていないから、客人扱いなのかもしれない。それとも孫の母親という立場なのかも?
リブラの乳母が決まったと聞いたのは、その数日後のことだった。アクエリアスが満足に授乳できない。その暇がなかなか取れないことを心配したベンジャミン夫人が手配してくれたらしいが、正直、余計なことを、と思っている。
アクエリアスはバストの形が変わることなど気にせず、ヘミングウエイの時と同様、自分の乳でリブラを育てたいと思っていた。
授乳しなかったら、またハロルドとの子供を妊娠してしまう可能性がある。産褥が済んだ後、すぐハロルドに抱かれているが、授乳している間は妊娠しない。
お城に泊らずベンジャミン家に帰って寝るのは、そのためでもあるというのに。
ユリウスは、どうやらハロルドとの結婚式を挙げてくれる準備をしているみたい。結婚式をする前にまた3人目を妊娠したと知れば、どういう反応をするか見もの。怒って勘当されるかもしれないし、今度こそ処刑されるかもしれない。
乳母にリブラを奪われる前に、逃げなければ、と決意を新たにする。
ハロルドに乳母のことを相談すると、賛同してくれたので、すぐにでも出発するつもり。
基本的にハロルドは、アクエリアスが決めたことに賛成してくれる。決して反対しない姿勢が王配候補になった理由の一つだと思う。
久しぶりに帰ったラスベガスの店は、泥棒に入られた形跡が遺されていた。
昨日夜ご飯の時も、そして今日の朝ごはんの時も当然のように家族団らんの席にユリウスは居座り、孫を抱かせてくれと喚き散らした。
それだけなら一度ぐらい抱っこさせてあげても良かったと思っていたけど、ユリウスはハロルドの顔を見た途端、激昂してハロルドを殴った。
大事な旦那様のイケメンの顔に傷でもついたらタダでは置かないわよ。と無言の殺気を感じ取ったらしく、以降、おとなしくはなったものの
「一発ぐらい殴ってやらないと、気が済まなかった。許せ」
それで済まそうなんて、酷い!絶対、孫を抱っこなんかさせてやらない。
ハロルドは、子供たちとお留守番してもらうことにして、アクエリアスだけが陛下と共に馬車に乗った。
「孫たちを連れてくればいいものを……」
「大丈夫よ、ハルといた方があの子たちはゴキゲンにしているわ。なんてったってハルはイクメンだから」
「いくめん……?」
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城に帰ると、もういきなり決済の書類に囲まれてしまう。
文句を言おうにもユリウスは、当然だろ!?という顔をして取り合わない。こんなに仕事が溜まっているなら、なんで昨夜ベンジャミン家に居座ったのよ?仕事しなさいっ!
書類仕事の合間にドレスの仮縫いがある。いや、必要ないし。新しいドレスならヒロインに作ってあげれば?
でも半日、お城で過ごしていると、フローラルの姿が一切見えないことに気づく。
「あれ?そう言えば、わたくしの家出と同時に娘だと名乗る令嬢が来たはずではないの?」
侍女に聞くも、首を横に振るばかりで何も教えてくれない。
おかしい。ヒロインが物語に出てこないのは、どう考えても変だ。
アクエリアスが逃げ出したことで、ハロルドと恋に堕ち子供を産んだことが関係あるの?歴史を変えてしまったから、ストーリー自体がおかしな方向に行っている?
うーん。考えても答えは見つからない。誰に聞いてもフローラルの存在がない?
まさか!?アクエリアスの代わりに処刑されてしまったとか?いやいや、そんな話であれば、ラスベガスにいても、噂ぐらいは耳にしただろうが、そんな噂も聞いたことがない。
何が何だかわからないうちに日数だけが過ぎていく。アクエリアスは王城の自分の部屋には泊まらないで、相変わらずベンジャミン家に帰っている。
すっかりベンジャミン家の嫁扱い?になっているよう。でも、嫁としての仕事は何一つしていないから、客人扱いなのかもしれない。それとも孫の母親という立場なのかも?
リブラの乳母が決まったと聞いたのは、その数日後のことだった。アクエリアスが満足に授乳できない。その暇がなかなか取れないことを心配したベンジャミン夫人が手配してくれたらしいが、正直、余計なことを、と思っている。
アクエリアスはバストの形が変わることなど気にせず、ヘミングウエイの時と同様、自分の乳でリブラを育てたいと思っていた。
授乳しなかったら、またハロルドとの子供を妊娠してしまう可能性がある。産褥が済んだ後、すぐハロルドに抱かれているが、授乳している間は妊娠しない。
お城に泊らずベンジャミン家に帰って寝るのは、そのためでもあるというのに。
ユリウスは、どうやらハロルドとの結婚式を挙げてくれる準備をしているみたい。結婚式をする前にまた3人目を妊娠したと知れば、どういう反応をするか見もの。怒って勘当されるかもしれないし、今度こそ処刑されるかもしれない。
乳母にリブラを奪われる前に、逃げなければ、と決意を新たにする。
ハロルドに乳母のことを相談すると、賛同してくれたので、すぐにでも出発するつもり。
基本的にハロルドは、アクエリアスが決めたことに賛成してくれる。決して反対しない姿勢が王配候補になった理由の一つだと思う。
久しぶりに帰ったラスベガスの店は、泥棒に入られた形跡が遺されていた。
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