55 / 80
55海の魔物
しおりを挟む
なんか女神様が言っていることの半分も理解できないが、ヤバイ雰囲気だけはわかる。そろそろと後ろへ下がろうとするが、急に目の前が真っ暗になった。
ステファニー女神様の異空間に放り込まれたのだ。
「つべこべうるさいんだよ。」
ステファニー女神様は、店を出て向かい側の三途の川の渡し船のところまで行く。
船頭に耳打ちし、そこにバーモンドを出す。
船頭は、バケツと柄杓をバーモンドに渡し、
「お前は、ここで一生と言っても100年ほどだが、この三途の川のドブ攫いをするのだ。逃げるところはない。それで罪を償ってから地獄へ行け。」
「俺は王子様だぞ。こんなことしてタダで済むと思っているのか?」
「ここでは生前の身分など関係ないのだ。たまたま王子様に生まれたのだが、それだけでお前は一生分の運を使い果たしてしまったのだろう。王子の地位に甘んじて、やりたい放題、好き放題してきたのだろう。少しは他人の気持ちを慮り、まっとうな人生を送っていたら、もしかしたら天国へ行けたかもしれない。せいぜい頑張るのだ。」
船頭は行きかけ、茫然と突っ立っているバーモンドのところへ再び戻り、
「ドブ攫いしなければ、飯にもありつけんよ。ここで餓死することなどできないから、せいぜい腹を空かして抵抗するがいいよ。」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「終わったね。」
ステファニー女神様は、自分のブティックに戻り、お茶で一服している。
「今回は、オリヴィア、グッジョブだったねぇ。あんな俺様王子、わたくしでもごめん被りたいわ。これで災いは一つ消したのだから、心行くまで自分の人生を歩んでおくれ。」
バーモンドが店に来て、30分ほどしか経っていないのに、人間界の時間では、軽く100時間ぐらい経過しているからか、ついにバーモンドの残りの兵隊たちが扉を蹴破り、なだれ込んできたのだ。
「おい!女。バーモンド殿下をどこへやった?」
「ほぉ?あのバカタレに忠実な部下がいたってことかね?」
「バカタレ……とは、不敬だぞ!ひっ捕らえてくれるわっ!」
「わたくしを捕まえる?……くすくす……こんな面白いこと言う人間、初めて見たわ。捕まえられるものなら、捕まえてごらんなさい。」
ステファニーはそのまま店の外へ出る。店の中で乱闘騒ぎになれば、大事な商品を壊されかねないから。
人数で言えば、100人程度と言ったところか?血気盛んな若者に取り囲まれている状態。
一応、ブティック側ではなく、向かい側の三途の川の渡し賃売り場に近いところまで、おびき寄せる。
店の前の道は、水子や不慮の事故死を遂げた人が通る道だから、自分で死にに来た人とは意味が違うのよ。
「愚かな人間どもよ。くらえ!」
ステファニーは、兵隊たちにトルネード魔法を放ち竜巻の中に入れ、空高く舞い上げ一人残らず三途の川の中に落とし入れる。
「泳げないんだ。助けてくれー。」
叫んでいるものがほとんど、そうアンダルシアは内陸だから海がない。
「三途の川で溺死することはないから、安心して。いつまでも浸かっていなさい。」
そのうち、心優しい船頭が引き上げてくれるまで、川の中でプカプカすることに。でも100人もいるから、罪が浅い人ほど先に引き上げられる。
「あーあ、これで面倒ごとは終わったよね?もう一度、お茶淹れようっと。あ!その前に裏口をフタしなきゃ。善男善女が入ってこられると困るわ。」
ったく。近頃の若い者は……とブツブツ言いながら、扉と窓を修復していると、扉近くに若い男の子?がガタガタ震えながらいるのを見つける。
「なんだい?アンタも入ってきちまったのかい?」
その男の子は今朝、入隊したばかりの子で、見習いとして最初の仕事がブティックの前での見張り役。王子様が4日前に入って以来、出てこないから出てこられたら、他の兵隊たちに知らせる役目だったそうだ。
それがいっこうに出てこられないものだから、窓と同じように力づくで扉を壊し、他の兵士は全員、中へ入ったのだが自分一人除け者にされたことが悔しくて、つい中へ入ってしまったということ。
ステファニーは真実の目で、その子を見ると、その見習い君には、幼い弟や妹がいる。父親はすでに他界、母親は病気みたいに弱っている。
「わかったわ。アナタのお家まで、送って行ってあげる。そして、お母様の病気も治してあげるわ。だから、ここで見たことは誰にも言ってはダメよ。約束できる?」
「はい。約束します。もし、約束を破ったら、あの川に突き落とされてもいいです。」
「よく言えました。では、これから一緒に行こう。」
ステファニーは、その男の子の手を握り、自宅をイメージさせ、そこまで一気に飛ぶ。
王都の町はずれに、あばら家が建っていた。あまりにもひどいボロ家に驚きながら、家に入ると母親らしき女性が寝ている。
まずはその女性に治癒魔法をかけ、その後、あばら家をブティックの家へと変える。玄関は普通の扉に変え、ショウウインドウも普通の出窓仕様にする。
「食べ物も、わずかなお金もこの家の中にあります。お母様の体調はじきに良くなります。この家は、もうわたくしには必要ありませんから、どうぞ使ってください。」
それだけを言い残し、女神様は元のブティックへ戻られた。
ステファニー女神様の異空間に放り込まれたのだ。
「つべこべうるさいんだよ。」
ステファニー女神様は、店を出て向かい側の三途の川の渡し船のところまで行く。
船頭に耳打ちし、そこにバーモンドを出す。
船頭は、バケツと柄杓をバーモンドに渡し、
「お前は、ここで一生と言っても100年ほどだが、この三途の川のドブ攫いをするのだ。逃げるところはない。それで罪を償ってから地獄へ行け。」
「俺は王子様だぞ。こんなことしてタダで済むと思っているのか?」
「ここでは生前の身分など関係ないのだ。たまたま王子様に生まれたのだが、それだけでお前は一生分の運を使い果たしてしまったのだろう。王子の地位に甘んじて、やりたい放題、好き放題してきたのだろう。少しは他人の気持ちを慮り、まっとうな人生を送っていたら、もしかしたら天国へ行けたかもしれない。せいぜい頑張るのだ。」
船頭は行きかけ、茫然と突っ立っているバーモンドのところへ再び戻り、
「ドブ攫いしなければ、飯にもありつけんよ。ここで餓死することなどできないから、せいぜい腹を空かして抵抗するがいいよ。」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「終わったね。」
ステファニー女神様は、自分のブティックに戻り、お茶で一服している。
「今回は、オリヴィア、グッジョブだったねぇ。あんな俺様王子、わたくしでもごめん被りたいわ。これで災いは一つ消したのだから、心行くまで自分の人生を歩んでおくれ。」
バーモンドが店に来て、30分ほどしか経っていないのに、人間界の時間では、軽く100時間ぐらい経過しているからか、ついにバーモンドの残りの兵隊たちが扉を蹴破り、なだれ込んできたのだ。
「おい!女。バーモンド殿下をどこへやった?」
「ほぉ?あのバカタレに忠実な部下がいたってことかね?」
「バカタレ……とは、不敬だぞ!ひっ捕らえてくれるわっ!」
「わたくしを捕まえる?……くすくす……こんな面白いこと言う人間、初めて見たわ。捕まえられるものなら、捕まえてごらんなさい。」
ステファニーはそのまま店の外へ出る。店の中で乱闘騒ぎになれば、大事な商品を壊されかねないから。
人数で言えば、100人程度と言ったところか?血気盛んな若者に取り囲まれている状態。
一応、ブティック側ではなく、向かい側の三途の川の渡し賃売り場に近いところまで、おびき寄せる。
店の前の道は、水子や不慮の事故死を遂げた人が通る道だから、自分で死にに来た人とは意味が違うのよ。
「愚かな人間どもよ。くらえ!」
ステファニーは、兵隊たちにトルネード魔法を放ち竜巻の中に入れ、空高く舞い上げ一人残らず三途の川の中に落とし入れる。
「泳げないんだ。助けてくれー。」
叫んでいるものがほとんど、そうアンダルシアは内陸だから海がない。
「三途の川で溺死することはないから、安心して。いつまでも浸かっていなさい。」
そのうち、心優しい船頭が引き上げてくれるまで、川の中でプカプカすることに。でも100人もいるから、罪が浅い人ほど先に引き上げられる。
「あーあ、これで面倒ごとは終わったよね?もう一度、お茶淹れようっと。あ!その前に裏口をフタしなきゃ。善男善女が入ってこられると困るわ。」
ったく。近頃の若い者は……とブツブツ言いながら、扉と窓を修復していると、扉近くに若い男の子?がガタガタ震えながらいるのを見つける。
「なんだい?アンタも入ってきちまったのかい?」
その男の子は今朝、入隊したばかりの子で、見習いとして最初の仕事がブティックの前での見張り役。王子様が4日前に入って以来、出てこないから出てこられたら、他の兵隊たちに知らせる役目だったそうだ。
それがいっこうに出てこられないものだから、窓と同じように力づくで扉を壊し、他の兵士は全員、中へ入ったのだが自分一人除け者にされたことが悔しくて、つい中へ入ってしまったということ。
ステファニーは真実の目で、その子を見ると、その見習い君には、幼い弟や妹がいる。父親はすでに他界、母親は病気みたいに弱っている。
「わかったわ。アナタのお家まで、送って行ってあげる。そして、お母様の病気も治してあげるわ。だから、ここで見たことは誰にも言ってはダメよ。約束できる?」
「はい。約束します。もし、約束を破ったら、あの川に突き落とされてもいいです。」
「よく言えました。では、これから一緒に行こう。」
ステファニーは、その男の子の手を握り、自宅をイメージさせ、そこまで一気に飛ぶ。
王都の町はずれに、あばら家が建っていた。あまりにもひどいボロ家に驚きながら、家に入ると母親らしき女性が寝ている。
まずはその女性に治癒魔法をかけ、その後、あばら家をブティックの家へと変える。玄関は普通の扉に変え、ショウウインドウも普通の出窓仕様にする。
「食べ物も、わずかなお金もこの家の中にあります。お母様の体調はじきに良くなります。この家は、もうわたくしには必要ありませんから、どうぞ使ってください。」
それだけを言い残し、女神様は元のブティックへ戻られた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
161
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる