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59大所帯
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「ふぅーっ。国教会はまだ水晶玉なんてものを持って、迫ってくるとは思っていなかったわ。ったく迷惑な話。」
「本当ね。もうアンダルシア国は壊滅したというのに、今さら聖女様だということを知っても、利用価値なんて、ないのにね。」
お母様が、クッキーを口に放り込みながら言う。
「で、これからどうするの?じきにここに押しかけてくるわよ。」
オリヴィアは、目の前の紅茶をすすりながら、
「うーん。そうなのよね。どうしたものか……。」
「カラン!カラン!」
玄関のベルが勢いよく鳴る。
「来た!」
玄関扉前で、執事と司祭様が睨み合っている。
「聖女様を呼んでください。」
「はい、確かに当家のお嬢様は、聖女様でございますが、それはアデセル国の教会で判明したもので、アンダルシアの国教会とは、なんの関係もございませんから、お引き取りのほどを。」
「それでは何故、帰国為された?」
「聖女様が祖国の惨状をお聞きになられ、一時帰国されただけのこと。それを国教会がしゃしゃり出てこられ、聖女様は大変困惑されております。どうか、このままお引き取りを。」
「ぐぬぬ……。」
「どうしても帰らないとおっしゃるのなら、聖女様に結界を張っていただきますが……?」
「わかりました。今日のところはこれにて。また日を改めて、ご挨拶に伺います。」
国教会の司祭が聖女様の結界に阻まれたとあっては、信者が減る。
なんといっても、体裁が悪い。国教会が聖女様から嫌われているとは、口が裂けてもそんなこと言えない。
まことに不本意ながらも、撤退せざるを得ない。
こうなったのも、すべてアンダルシア王と二人の王子のせいだ。しかし、その王子ももうおそらくこの世にいないだろう。
どこにも向けることができない怒りを抱えて、国教会へ向かうが、そこはがれきの下となり果てていた。
もはや戻るべき教会がなくなった今、自然とスカイダウン家へ向かう。もう一度、聖女様に許しを乞うために。
玄関ベルがさっきとは違う感じで鳴り渡る。
うんざりした様子の執事を嗜め、オリヴィア自身が扉を開けると
「聖女様、どうか、この一介の老いぼれを聖女様の元に置いてくださらぬか?」
「どうぞ、中へ。」
扉を全開すると、驚いたような顔で見つめてくる。
「良いのでございますか?」
「ええ。司祭様もわたくしと同じ被害者でございましょう?それなら、お断りする理由はございませんわ。」
司祭様は、恐縮しきって、おずおずと屋敷に踏み入れる。
司祭様だけかと思っていたら、その後をぞろぞろと修道士が続く。
え!ちょっと待ってよ。と思ったときは、既に遅し。屋敷の中は司祭様一行で身動きが取れないほどいっぱいになった。
仕方なくスカイダウン家の人々が中庭へ出る。
「なぁリヴィ。こんな大勢の修道士を見たのは初めてだ。どこかに簡易の教会を建てられないか?」
「建てられないこともないけど、場所が……。」
「場所なら没落した貴族の屋敷跡など、使えば問題なかろう?」
「たとえば?」
「たとえば……マリンストーン公爵家の屋敷跡、ボロニア子爵家の屋敷跡などどうだ?ボロニアの娘は、リヴィを追ってアデセルまでやってきて、アールスハイド殿下とイチャついたことがあったな。ガキのくせに、こまっしゃくれた奴だったな。」
「ボロニア家は大きな商会を経営していたから、敷地の広さは十分あるわね。」
オリヴィアはなるべくマリリンちゃんのことに触れず、ボロニア家の跡地に簡易境界を建てることに決める。
マリリンちゃんへの菩提を弔うための供養になればいい。
司祭様に、ボロニア家の跡地に教会を建てたいという旨を説明し、みんなでそこに見に行くことにする。
「本当ね。もうアンダルシア国は壊滅したというのに、今さら聖女様だということを知っても、利用価値なんて、ないのにね。」
お母様が、クッキーを口に放り込みながら言う。
「で、これからどうするの?じきにここに押しかけてくるわよ。」
オリヴィアは、目の前の紅茶をすすりながら、
「うーん。そうなのよね。どうしたものか……。」
「カラン!カラン!」
玄関のベルが勢いよく鳴る。
「来た!」
玄関扉前で、執事と司祭様が睨み合っている。
「聖女様を呼んでください。」
「はい、確かに当家のお嬢様は、聖女様でございますが、それはアデセル国の教会で判明したもので、アンダルシアの国教会とは、なんの関係もございませんから、お引き取りのほどを。」
「それでは何故、帰国為された?」
「聖女様が祖国の惨状をお聞きになられ、一時帰国されただけのこと。それを国教会がしゃしゃり出てこられ、聖女様は大変困惑されております。どうか、このままお引き取りを。」
「ぐぬぬ……。」
「どうしても帰らないとおっしゃるのなら、聖女様に結界を張っていただきますが……?」
「わかりました。今日のところはこれにて。また日を改めて、ご挨拶に伺います。」
国教会の司祭が聖女様の結界に阻まれたとあっては、信者が減る。
なんといっても、体裁が悪い。国教会が聖女様から嫌われているとは、口が裂けてもそんなこと言えない。
まことに不本意ながらも、撤退せざるを得ない。
こうなったのも、すべてアンダルシア王と二人の王子のせいだ。しかし、その王子ももうおそらくこの世にいないだろう。
どこにも向けることができない怒りを抱えて、国教会へ向かうが、そこはがれきの下となり果てていた。
もはや戻るべき教会がなくなった今、自然とスカイダウン家へ向かう。もう一度、聖女様に許しを乞うために。
玄関ベルがさっきとは違う感じで鳴り渡る。
うんざりした様子の執事を嗜め、オリヴィア自身が扉を開けると
「聖女様、どうか、この一介の老いぼれを聖女様の元に置いてくださらぬか?」
「どうぞ、中へ。」
扉を全開すると、驚いたような顔で見つめてくる。
「良いのでございますか?」
「ええ。司祭様もわたくしと同じ被害者でございましょう?それなら、お断りする理由はございませんわ。」
司祭様は、恐縮しきって、おずおずと屋敷に踏み入れる。
司祭様だけかと思っていたら、その後をぞろぞろと修道士が続く。
え!ちょっと待ってよ。と思ったときは、既に遅し。屋敷の中は司祭様一行で身動きが取れないほどいっぱいになった。
仕方なくスカイダウン家の人々が中庭へ出る。
「なぁリヴィ。こんな大勢の修道士を見たのは初めてだ。どこかに簡易の教会を建てられないか?」
「建てられないこともないけど、場所が……。」
「場所なら没落した貴族の屋敷跡など、使えば問題なかろう?」
「たとえば?」
「たとえば……マリンストーン公爵家の屋敷跡、ボロニア子爵家の屋敷跡などどうだ?ボロニアの娘は、リヴィを追ってアデセルまでやってきて、アールスハイド殿下とイチャついたことがあったな。ガキのくせに、こまっしゃくれた奴だったな。」
「ボロニア家は大きな商会を経営していたから、敷地の広さは十分あるわね。」
オリヴィアはなるべくマリリンちゃんのことに触れず、ボロニア家の跡地に簡易境界を建てることに決める。
マリリンちゃんへの菩提を弔うための供養になればいい。
司祭様に、ボロニア家の跡地に教会を建てたいという旨を説明し、みんなでそこに見に行くことにする。
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