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1.婚約破棄
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今日は、お城から呼び出しがあったと聞き、慌てて聖女服のまま馬車に飛び乗った。
わたくしジェニファーの婚約者様は、サラシア国の第1王子のフィリップ殿下、先ごろ立太子の礼を済まされて、今や王位継承権第1位の王太子殿下になられました。
でもフィリップ殿下がジェニファーにお優しくしてくださったのは、子供の時だけで、それも聖女様という肩書だけで、婚約者に仕立て上げられてしまったのだ。
名前だけの婚約者で、今、殿下の御寵愛を受けていらっしゃるのは、第2夫人候補のセレンティーヌ侯爵令嬢様で、有名な魔導士の先生に師事していらしたとかで、いつもいつも顔を合わせるたびに嫌味を言われてしまうので、ジェニファーは苦手としている相手でもある。
今日の呼び出しは、おそらくだけど、婚約破棄を言い渡されるのではないかと懸念している。
それぐらい最近の殿下は、セレンティーヌ様に傾倒されていらっしゃるから、どうせわたくしは、お飾りの聖女だから、最近は、セレンティーヌ様と一緒になって、「ポンコツ」呼ばわりされているけど。
「ジェニファー、来たか。今日、呼んだのは、貴様と婚約破棄がしたくて、その呼び出しと、何もしない聖女など必要がないとセレンがいうのでな、貴様には、国外追放してもらおうと思っている。」
「さようですか?その儀、しかと承りましたが、後悔しないでくださいませね。」
「相変わらず、偉そうなことを言われるのですね。たかが何もしない聖女でポンコツのくせに。」
「そうは言うな。ジェニファーとの婚約は、父上が決められたことだったからな。俺も将来の伴侶とするには、聖女様の肩書が欲しかったということも事実だし、ジェニファーと婚約していたから、すんなり立太子にも参加できたというものだから、少しぐらいは感謝している。だがな、もうこれで教会にも毎年、多額の寄贈をしていたが、来年からは打ち切りとする。貴様が何もしていなかったことで、教会や聖女に多額の税金を支払うことの矛盾や疑念が後を絶たないからな。邪魔だから、早々に出て行ってくれ。」
何もしていないわけがないじゃない?
小さい時から、ずっと力を解放しているから、もうジェニファーの力が普通になってしまっているだけで、結界を解いてしまったら、何が起こるか予測できない。
それでもジェニファーはお役御免とばかりに、結界を解くつもりでいる。
今まで、我ながらに「ポンコツ」と罵られながらも、よくぞ耐えてきたものだと思っている。
教会のみんなに別れを告げてから、荷物をまとめようと思っていたのに、ジェニファーの知らないところで、教会にはすでにジェニファーの荷物をまとめさせて、それを罪人用の馬車に積み込まれ、ジェニファーもその馬車で、国境を目指すことになってしまったことは誤算だった。
教会で仲の良かった人とお別れも言えないなんて、わたくしが一体何をしたって言うのよ。腹立ちまぎれに、ジェニファーは、まだサラシア国にいる間に、さっさと結界を解除してしまう。
傍目ではわからないが、確実にわずかながらも変化はあった。まず、風が変わり、空気によどみが生じた。
でも御者も、些細なことで感じていないようだが、馬は少しの変化でも敏感に感じ取っているようだ。その証拠に、まっすぐ走れなくなり、ふらふらと足がもつれそうになりながら走っていることがわかる。
御者は、そのことに何も感じずに、鞭をふるい、馬にいうことを利かそうと努めている。
アンドロメダ国との国境線で、いきなり扉を開けられ、荷物を放り投げられて、
「ここまでだ。あとはこの腐った国で、せいぜい幸せになりな。聖女様だから、一人でも生きていけるだろ?」
下卑た笑みを浮かべられ、戦慄するも、フィリップから、「二度と聖女にサラシアの土を踏ませるな。」と強く命じられてきたので、それ以上は何もせず、国境線上に捨て置かれた。
わたくしジェニファーの婚約者様は、サラシア国の第1王子のフィリップ殿下、先ごろ立太子の礼を済まされて、今や王位継承権第1位の王太子殿下になられました。
でもフィリップ殿下がジェニファーにお優しくしてくださったのは、子供の時だけで、それも聖女様という肩書だけで、婚約者に仕立て上げられてしまったのだ。
名前だけの婚約者で、今、殿下の御寵愛を受けていらっしゃるのは、第2夫人候補のセレンティーヌ侯爵令嬢様で、有名な魔導士の先生に師事していらしたとかで、いつもいつも顔を合わせるたびに嫌味を言われてしまうので、ジェニファーは苦手としている相手でもある。
今日の呼び出しは、おそらくだけど、婚約破棄を言い渡されるのではないかと懸念している。
それぐらい最近の殿下は、セレンティーヌ様に傾倒されていらっしゃるから、どうせわたくしは、お飾りの聖女だから、最近は、セレンティーヌ様と一緒になって、「ポンコツ」呼ばわりされているけど。
「ジェニファー、来たか。今日、呼んだのは、貴様と婚約破棄がしたくて、その呼び出しと、何もしない聖女など必要がないとセレンがいうのでな、貴様には、国外追放してもらおうと思っている。」
「さようですか?その儀、しかと承りましたが、後悔しないでくださいませね。」
「相変わらず、偉そうなことを言われるのですね。たかが何もしない聖女でポンコツのくせに。」
「そうは言うな。ジェニファーとの婚約は、父上が決められたことだったからな。俺も将来の伴侶とするには、聖女様の肩書が欲しかったということも事実だし、ジェニファーと婚約していたから、すんなり立太子にも参加できたというものだから、少しぐらいは感謝している。だがな、もうこれで教会にも毎年、多額の寄贈をしていたが、来年からは打ち切りとする。貴様が何もしていなかったことで、教会や聖女に多額の税金を支払うことの矛盾や疑念が後を絶たないからな。邪魔だから、早々に出て行ってくれ。」
何もしていないわけがないじゃない?
小さい時から、ずっと力を解放しているから、もうジェニファーの力が普通になってしまっているだけで、結界を解いてしまったら、何が起こるか予測できない。
それでもジェニファーはお役御免とばかりに、結界を解くつもりでいる。
今まで、我ながらに「ポンコツ」と罵られながらも、よくぞ耐えてきたものだと思っている。
教会のみんなに別れを告げてから、荷物をまとめようと思っていたのに、ジェニファーの知らないところで、教会にはすでにジェニファーの荷物をまとめさせて、それを罪人用の馬車に積み込まれ、ジェニファーもその馬車で、国境を目指すことになってしまったことは誤算だった。
教会で仲の良かった人とお別れも言えないなんて、わたくしが一体何をしたって言うのよ。腹立ちまぎれに、ジェニファーは、まだサラシア国にいる間に、さっさと結界を解除してしまう。
傍目ではわからないが、確実にわずかながらも変化はあった。まず、風が変わり、空気によどみが生じた。
でも御者も、些細なことで感じていないようだが、馬は少しの変化でも敏感に感じ取っているようだ。その証拠に、まっすぐ走れなくなり、ふらふらと足がもつれそうになりながら走っていることがわかる。
御者は、そのことに何も感じずに、鞭をふるい、馬にいうことを利かそうと努めている。
アンドロメダ国との国境線で、いきなり扉を開けられ、荷物を放り投げられて、
「ここまでだ。あとはこの腐った国で、せいぜい幸せになりな。聖女様だから、一人でも生きていけるだろ?」
下卑た笑みを浮かべられ、戦慄するも、フィリップから、「二度と聖女にサラシアの土を踏ませるな。」と強く命じられてきたので、それ以上は何もせず、国境線上に捨て置かれた。
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