ポンコツ聖女と呼ばないで

青の雀

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2.出会い

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 ジェニファーの婚約違約金は、教会の運営費に充てられた模様で、文字通り一文無しで国境線に置いて行かれたのだ。

 さて、これからどうするか?

 日暮れまで、後2時間とかからないだろう。このまま行って、どこかの集落にたどり着ければいいだろうが、今夜は国境線で、野宿することになりかねない。

 とりあえず、ジェニファーは火をおこすため薪を集めることにしたのだが……、索敵魔法を駆使しながら獣が寄ってこないか慎重に拾い集めていると、人影を見つけてしまう。

 どうやら、その人影の目的もジェニファーと同じく薪を拾い集めている様子。近くの集落の村人なら一夜を乞うてもいいか?との思いで、その人影に接近することを試みる。

 ジェニファーが近づこうとすると、どうやらその人影は何かと戦っている。白いオオカミのような?犬のような?いや、犬にしては大きすぎる。

 どう見ても、人間の方が不利な状況で、今にも襲い掛かろうとしている魔物?に向けて、ジェニファーは、連続で光魔法を放つ。

 「それ以上の攻撃は、おやめなさい!」

 すると、どういうわけか、「その魔法は攻撃をやめ、ジェニファーの方へ寄ってくる。

 「我は、フェンリル。女神ステファニー様の眷属なり。聖女様をお迎えに上がった。我に名前を……。」

 「ええ!名前と言われてもね……。ポチなら犬みたいだし、タマなら猫みたいだし、ヴァナルガンド(銀の狼)にするか?フェンリルのリルをとって、リルちゃんも可愛いかも?」

 「我は、ヴァナルガンドがいい。呼んでくれ。」

 「では、ヴァナルガンド!」

 「うむ。」

 途端に、ヴァナルガンドのカラダが光り、すぐに元に戻った。

 「セ、聖女様!?君は、本当に聖女様なのか?」

 今しがたまで、戦っていた人間の方を見ると、驚愕のまなざしでジェニファーの方を見ている。

 ああ。面倒なことを聞かれてしまったみたい。

 フェンリルは、フェンリルで、人間に聞かれたことを何とも思っていない様子。

 「聖女様。これで我は、聖女様の神獣になりました。しかし、そろそろ腹が空きましたので、我に食事を与えてください。」

 なんですって!?ジェニファーは自分の食べるものも事欠いているというのに、ペットにまで餌をやらなければならないというのは、どう考えてもおかしい。

 「別にペットになってくれって、頼んだ覚えはないわ。」

 「いやいや。ペットではなく聖女様を護衛する神獣でございますれば……。」

 「わたくし、まだこの国に来てからアテがございません。今夜は、国境線で野宿するつもりで、近くに集落でもあれば、と思い薪を拾い集めていたら戦っているところを偶然、通り合わせたにすぎません。」

 フェンリルは、近くにいた先ほどまで戦っていた男性に向き直り、

 「では、帥の家に厄介になってやろう。」

 「は?こちらの女性が聖女様であるのなら、聖女様は歓迎しますがフェンリルまでついてこられるのは、ちょっと……。」

 「なんだ?愚かな人間よ。我がついて来るのがイヤだと申すのか?聖女様、この愚か者に一言言ってやれ。」

 そんなこと、まだわたくしのアテもないというのに、どうすれば?

 「あの……、わたくし隣国のサラシアから参りました。ジェニファーという聖女をしております。故あって、本日、こちらへ参りましたが今夜の宿も決まっておりません。どうか一夜の宿をお願いできませんでしょうか?」

 「ええ。聖女様であれば、願ってもいないことですから、どうぞ構いませんが……そちらの従魔もということでしょうか?」

 「できれば……。」

 本当は、フェンリルなどどうでもいいのだが、納得してくれそうもないので仕方なく、フェンリルの分までお願いしてみた。

 「それならば、仕方ありませんね。わかりました。どうぞ聖女様とその従魔も、我が王宮へご案内いたしましょう。」

 「え?王宮?」

 「ああ。これは申し遅れまして、失礼いたしました。私はアンドロメダ国の第1王子のチャールズ・アンドロメダと申すもので、ご存知かどうかは、わかりかねますが、我が国は貧乏国で、何のおもてなしもできませんが、どうか、ごゆるりとお過ごしください。」

 そのまま馬車に案内されるが、フェンリルのヴァナルガンドと共に王宮で一夜の宿にすることにしたのだが、馬車の中で、人目もはばからず「腹減った。」を繰り返されるので、

 「自分の食べるものと、今夜お世話になるこの国の皆さんのために食料となる獲物を獲ってきて頂戴。」

 いつの間にか、ヴァナルガンドはいなくなって、ほっとする。

 そして、王宮についたとき、すました顔をして、戻ってきたのだ。
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