婚約破棄された公爵令嬢は、恋敵の娘に転生する

青の雀

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22 ベルサイユのばら

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 クリスティーヌは、ワルシャルの合宿に参加せずに勉強した過去へ行く魔法と未来へ行く魔法の二つを完全マスターして、自分の遠く過去の世の自分の幸せを見届けることに成功したのだ。

 今の自分に影響はないが、心底良かったと思える。やっぱり、過去の自分が不幸なまま死んでいくのはイヤだから。幸せになってほしい。

 そしてサンドラでは、相変わらずフランツ様とお茶会三昧の日々、でも過去の世で2度目の人生の時、フランツ様というよりは、フェルゼン様によく似た男性のシンボルをひいお爺様の魔剣でちょん切る羽目になったことには驚いたわ。

 まぁ、もう二度とフェルゼン様の大人になってからの姿には、会えないだろうからいいようなものだけどね。

 まぁそれもこれも、過去の世でわたくし自身が幸せを勝ち取るためのプロセスであったことには間違いない。

 クリスティーヌは帰国してから、その後の加奈子先生が幸せかどうかを確認するために。それに向こうから、戻ってくるとき、ナカジュン先生からのたっての希望の成果がどうなっているかを見たかったので、こっそり見に行く。

 「あら、クリスティーヌちゃん、また来たの?さっき、大量の金貨を持ってきてくれたから、助かったのに。ウチの人の研究に莫大なお金が必要なのよ。だから、将来持ってきてくれるクリスティーヌちゃんの金貨を当てにして、銀行から借り入れをしていたのよ。でも、さっき持ってきてくれたから、銀行員を呼んでそれで返済ができたわ。ありがとう。」

 「んじゃあ、こんなものでもわずかな足しになる?」

 そう言って、異空間の中から、モンマルトルの変態王子からプレゼントされた宝石をいくつか出してみる。

 「まぁ!こんな大きなダイヤモンド見たことがないわ。これなら1個5000万円はくだらないわね。いや、もっとするかも?それにこれは、ルビー、サファイヤ、エメラルド、キャッツアイもあるわね。」

 加奈子先生は眼をキラキラと輝かせている。

 「この前、変態王子にもらったものだから、要らないものよ。全部あげるわ。もっとあるから出すね。」

 応接テーブルの上に、ジャラジャラとちょっとした小山ができるほどの宝石を出していく。

 ふと見ると、加奈子先生は泡を吹いてぶっ倒れている。治癒魔法や回復魔法はできるから、そっと試してみると、気が付いてくれ、よかったわ。

 「これ、全部もらっちゃって、本当にいいの?」

 気が付いても、まだ息が荒く、フーフー言っている加奈子先生。

 「いいよ。だって、本当に気持ち悪い変態変質者の王子からのプレゼントなんだもん。向こうで捨てちゃうつもりで、異空間に入れておいたのよ。今の今まで、もらったことさえ忘れていたぐらいだからね。」

 「こんなプレゼントしてくれる王子様をフっちゃうなんて、クリスティーヌちゃんも大したものよね。」

 そう言って、加奈子先生はお腹をさすっている。また3人目ができるらしいわ。ナカジュン先生も頑張るわね。

 行き詰った研究の鬱憤を加奈子先生で紛らわしているのだろうか?

 と思っていたら、よくわからないけど、当時流行していた新型病の治療薬の開発に成功して、世界中から、注文が殺到している。受注に追われる日々、加奈子が元気の源だからと毎晩のように乗ってくるのよ。と加奈子先生は嬉しそうに目を細める。

 まぁね、ナカジュン先生はまだ24歳の医学部生だもんね。それは体力がおありだと思いますわよ。

 加奈子先生も10歳の子供になんてこと、のろけるのよ。

 前回、帰国するときに、ナカジュン先生たっての希望で50年後、開発を成功させる秘薬の化学構造式?を見たいと言われて、ナカジュン先生を連れて、一瞬、50年後に飛んだことがあったのだ。もちろん、加奈子先生は知らない。二人だけの秘密?なのである。

 その式をさらに改良して、今回の新薬を成功させたのである。歴史を変えちゃったわけだけど、いいよね?ご自分の成果なんだもん。誰かの成果を横取りしたわけではない。

 新型病の治療薬だけ、手を付けられた。未曽有の国難、いや世界難を今のナカジュン先生なら救えると判断されたのだろう。

 学生時代から研究を重ねて、3年、学生の身分では研究室を持てない。だからこそ藤堂病院内に研究室を作り、そこでようやく開発に成功され、今まさに売り出したところのようだ。それに莫大なお金がかかり、借金をしてまで、ナカジュン先生の研究を支えた加奈子先生、内助の功である。

 ああ、そうそうもうひとつ聞きたいことがあったんだ。笹崎麗華を採用したかどうか、である。

 採用試験に来たけど、書類選考で見事落としたらしいわ。一応、本人には、難しい問題だから落ちたと思わせてね。

 そして最初の旦那とは、今もって会わない、会ったことがないらしいわ。それは重畳、おめでとうございます。と言って、笑顔で別れ、元の異世界へ帰るクリスティーヌ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 それから月日は流れ、クリスティーヌは15歳になったのである。そろそろ学園に入る年頃。フランツ様がお義母様の母国ベルサイユの学園に進学されるから、クリスティーヌもそれに従い、一緒の学園に留学することが決まる。

 だから、過去の世で一度もフランツ様にお会いできなかったのである。

 学園内では、クリスティーヌのことを「ベルサイユのばら」と評されるほど、美しく成長した。まぁ元が美人だから、だけど過去世は、おブスだったから今世は絶世の美女になれたのかもしれない。過去があってこその自分なのだ。

 学園では、寮に入らず、大使館から通うことにし、父は上機嫌である。

 そう、過去世から帰って以来、父の転勤がなくなったことである。今までは2年に一度の割合で必ず、赴任先がころころとかわっていたのに。

 なんでも父を異動させようとすると、ベルサイユ国から横やりが入り、命の恩人の父を動かすとは、我が国に喧嘩でも売っておられるのか?との剣幕で言われるから、父を動かしづらい。

 クリスティーヌが学園を卒業したら、いつ異動があってもかまわないと、当の父は思っているようだ。

 フランツ様はと言うと、それなりに若き日のフェルゼン様によく似てらしたが、過去世から帰って以来、フランツ様への熱は前ほどでなくなる。やはりあの阿部定事件が尾を引いているようだ。

 10歳の娘が見てはいけないものを見たばかりか、ちょん切ったのだもの。でもフランツ様とあいつとは、別人格なのだからと、必死に自分に言い聞かせている。

 フランツ様はあの日以来、少しも変わらず、優しく時には自慢気にクリスティーヌをエスコートしてくださる。

 あの男とは似ても似つかない人格だということは、よくわかるのだが。でも、サンドラ国に帰る気はない。チャールズとカトリーヌ、リリアーヌの争いに巻き込まれるのは、ごめんである。

 そのことを加奈子さんに相談してみた。もう相談できる相手は加奈子さんしかいないのである。

 加奈子さんは、あれから5年経っているのに、そう年齢は変わっていないように見える。ドブスって、年齢かわらないよね。美人は年とともに衰えるけど、ブスって、あまり変わらない。肉体的には、23歳の頃より、若返り魔法をかけて、少しでもナカジュン先生との年の差が開かないようにしているからかもしれない。

 「どうしても、そのフランツ様と結婚しなきゃいけないの?」

 「だって、わたくしからプロポーズしてしまったのですもの。わたくしからのたってのお願いで。」

 「ふーん、よくわからないけど、前の旦那とそのフランツって子の違いを見つければいいのね?」

 藤堂加奈子先生を異世界に呼んだクリスティーヌは、まず自分たち二人に隠蔽魔法をかけ姿を見えなくしてから、放課後のフランツ様が住む寮に向かったのだ。

 フランツ様は寮の私室で、本を読んでいらっしゃる。

 「うん、確かに元の旦那に似ているね。でも、旦那より、ずっといい男に見えるよ。姿かたちは……。ただね……。」

 「ただ、なんですか?」

 「長く生きてきた女の直感みたいなものだけど、あの子は、将来必ず浮気するよ。」

 「えー!どうしてそう思われるのですか?」

 「なんとなく、女のニオイがした。クリスティーヌちゃん以外の女の子のニオイがね。今、もうすでに女の子がいるか、近い将来女の子ができるか、のどちらかだと思うわ。前の旦那が浮気したとき、やっぱり女の勘で誰かと浮気していると感じ取ったもの。それはニオイだったから。」

 根拠なき、発言だけど、妙に説得力があったのだ。

 また、浮気されて捨てられるのか……?せっかく美人に生まれてきても、こうも男運が悪いとどこかで断ち切れねばなるまい。阿部定みたいに、またちょん切っちゃう?

 夜中、もう一度自分に隠蔽魔法をかけて、寮のフランツ様の部屋に忍び込んだら、やっぱり女の子を引きずり込んでいた。知らない子だったけど、二人は愛し合っているように見えた。

 そっと近づき、今、まさに女の子の中に入ろうとしている根元から、魔剣でぶった斬った。ざまぁみろ、すっとしたわ。わたくしを抱く前に他の女の子と練習するからよ。女の子のほうにも仕返ししてやろうと思って、二つのふくらみを削いでやったわ。前と後ろとね。胸とお尻です。あはは。もう二度と余程の物好きでもない限り、アンタを抱くような男はいない。

 なぜ、そこまでしたかと言うと、部屋に入った瞬間、若い男女は、クリスティーヌの悪口を言い合っていたから。それも本心から、言っていたから許さない!フランツはともかくとして、その女の子とは確かに初対面だったにもかかわらずよ。クリスティーヌのクの字も知らないくせに、恋敵の悪口を言う女は信用できない。だからよ。

 「クリスティーヌなんて、顔だけ美人の阿婆擦れ女さ。ただ公爵家の娘なだけに偉そうにしやがって。何がベルサイユのばらだ。笑わせるな!」

 「クリスティーヌなんて、嫌な女。自分程、偉いものはないって顔をしている。国王陛下を助けたのだって、まぐれかもしれないじゃない。それをいい気になって、女に嫌われる女よ。あんな女が聖女様のわけはない。」

 「そうだよ。俺にとっては、クリスティーヌなんかより、君のほうが聖女様だ。愛している。好きだ。」

 クリスティーヌは、聞くに堪えなくなって、そこで魔剣を取り出したのだ。

 知らなかったわ。フランツ様がわたくしのことを愛してもいなかったなんて、いつも優しく愛の言葉を囁いてくださっていたのに、あれは口から出まかせを言っていらしたとは、思いもしなかったわ。

 もっと早くに真意の魔法を発動していたら、見抜けたかもしれなかったのだ。でも、一目惚れしてしまったから、真意の魔法を発動しなかったわ。それは愛する人への裏切り行為になるのでは?と思い、発動していなかったのだ。

 深夜の寮の中は騒然とした。二人の若い男女の阿鼻叫喚の叫び声、その中を何食わぬ顔をして、大使館の自室に戻るクリスティーヌ。

 翌朝、二人は学園を欠席した。学園もこの事態をないこととして処理し、二人は退学扱いとなったのである。

 いくらベルサイユのばらが聖女様かもしれないという噂があっても、ベルサイユのばらに自分の婚約者が他の女子生徒と浮気している最中に根元から消滅したから、治してくださいとは言いにくい。

 その女子生徒の身体もなんというか、本来あるべき胸とお尻が無くなっている。それも乳首ごとないのだから、これはもう女子というより、化け物の姿である。人間らしき姿と形容したほうが適切か?その後の女子の消息は不明。

 クリスティーヌには、真実を隠したまま侯爵家から違約金が支払われる。もう一生、フランツ様には子供が作れない身体になってしまわれたのだから、廃嫡され、男相手の男妾になられたのだ。

 事の顛末を加奈子先生に報告したら、大笑いされたけど、クリスティーヌは、信念を持ってやり遂げたのだから、もう後悔の念はない。

 これでやっと悪い男運スパイラルを断ち切れたかどうかは、わからないが、心底すっとしたのである。

 それからの学園生活は、殊の外順調で、毎日気分よく過ごせた。そしていよいよ卒業式シーズンが近づく。
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