転生聖女様、東大生コンビと共にタイムスリップ~利休編

青の雀

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 さて、どうしたものか?と頭を悩ませる。これがその大名のところから盗まれたものだと因縁をつけられる恐れがあるからだ。

 千利休に会って、それが上垣内家所有のものだと証明してもらうにしても、そう運よく利休に会えるとも限らない。

 俵屋宗達に上垣内家に一幅の掛け軸を注文しても、お茶会には間に合わないだろう。

 帰りに浅草寺へ初詣に……、何て気分にはなれない。

 本当に、そのお大名が利休ゆかりの掛け軸をもっていたかどうかも怪しいものだ。

 上垣内家と利休との関係は、広く知られているところだから、どう考えても、我が家の利休絡みの掛け軸を狙ってのこととしか思えない。

 これが現代の話ならば、カラーコピーすれば済むだけの話にも思える。カラーコピーしたものであれば、たとえその大身の大名家がそれを隠して奪い取ったとしても、カラーコピーしたものであれば、何枚でも複製可能であるから、痛くもかゆくもない。ただそれが和紙に見えるかどうかの問題と、和紙にそもそもコピーできるのかということ。

 ググると意外にもコピーできる和紙というものが存在した。

 おお!これ、ええやん!

 さらに調べてみると、100均にでもコピーできる和紙が売っていることがわかる。

 檸檬は、早速蔵に入り、一幅の掛け軸をカラーコピーしてみる。コンビニに行かなくても、我が家の事務所部分にコピー機はある。

 せっかくの晴れ着が汚れては、もったいないのでたすき掛けの上、割烹着を羽織っている。

 和紙は、100均へ買いに行かずとも、我が店のお茶の包装紙が和紙もどきというべきか、なんちゃって和紙風なので、お茶の袋に張る、和紙や、説明書きのための和紙などを会社の経費として仕入れている。その和紙の束の中から一枚を失敬してきて、色や手触りの似たものをコピーしている。

 驚いたことに裏面にも我が家に寄進するとの利休様の落款があったのだ。さっき、取り出したときは、そんなものに気づかなかったのだが……?まあ、自分の手でふさいでいたのかもしれないと思い直すことにして、両面でレーザーコピーする。

 何度か試行錯誤していると、いいように似たような感じの書画が出来上がったので、それをもって、清兵衛さんのところを訪ねる。

「これを表装して、お大名に渡さはったら、よろしおす」

 清兵衛さんは、カラーコピーした書画に一瞥すると、まさか!というように目を見開く。それは、確かにその書画の本物を清兵衛さんは、手元近くに置いていたので、いつの間にか、檸檬が持っていたことに驚くが、檸檬は、遠い未来から来ていることに知っているので、未来の蔵から出されたものだと知る。

「これはカラーコピーしたものやから、何枚でも複製ができます。この時代は、著作権法なんてないし、これをあげはったら問題あらへんわ」

「ああ、これは複製品ということどすな?わかりました。先方へはこれを本物と見せかけて、借用書を書かせますわ。その方が信憑性はありますやろ?」

 清兵衛さんは、笑いながら上機嫌で、それを表装するつもりでいる。ちなみに、その横には、それと似た掛け軸が一幅あったのだが、それが本物で、念のため広げて見せてくれたが、時代的には、そんな経っていないような感じがした。

 清兵衛さんも商売人だけあり、抜け目はない。

 もし、大名家が「当家から盗まれた掛け軸がなぜ?」と言いがかりをつけられても、本物が現代まで続く上垣内家の蔵にあるし、江戸の蔵にもある。

 それにそのカラーコピーは、裏面に千利休の署名と落款が押してある部分もコピーしている両面コピー刷りにしたのだ。

 たとえ「当家所有のもの」と言い張られても、カラーコピーの裏面には、上垣内家へ贈呈するという利休の書が証拠となるので、言い逃れは難しいのではないかと思うが、なんせご大身の大名家のことだから、どんな屁理屈をこねて、我がものにしようとするかなどわからない。

 一通り、江戸での用事が済んだので、このまま浅草寺へ向かおうかと思っていたけど、いったん帰宅して、やはり現代の神社へ行くことにする。

 あまり遠出はしたくないので、今日のところは、平安神宮にだけ行くことにして、タクシーをアプリで呼んで、岡崎公園を目指す。

 平安神宮は、建都1100年事業の一環として、民衆の寄付により建築されたもので、平安京を模している。

 正面には、応天門があり、その中央に「応天門」、これは弘法大師空海の書として、有名なのだが、現代にも伝わり逸話が残されている。

 それは、弘法大師が書の依頼を受けた時、多忙を極めていたため、うっかり応の字の点をひとつしか売っていないことに気づかず、納品してしまう。

 その応天門落慶式の時に招待された弘法大師は、文の中央に掲げられた我が所を見て、ギックリ仰天なさいまして、慌てて、その門の下まで行き、墨に筆を認め、文の下から筆を放り投げ、見事もう一点を書き加えられた。ということです。

 これが「弘法も筆の誤り」として、現代まで伝えられている逸話の一つになっている。

 さて、平安殿の見どころの一つはなんといっても、神苑。本田の左側(西側)から入り、奥を通り右側(東側)から出口がある。

 春夏秋冬様々な花木が植えられていて、四季折々に楽しませてくれる。入り口付近には、昔の市電車両が置かれている。北側は丸太町通りに面しているにもかかわらず、思いきっり静かで、まさに神苑そのものといった風情がある。

 池にかかる橋は橋殿のほかに、飛び石の橋があり、小さな子供さんは無理でも、小学生ぐらいの子供なら、十分わたることができるが、お年寄りはバランスが悪いため渡らない方が無難である。

 橋殿には、腰を掛ける弁知識の者が両側に長くしつらえてあり、ここで鯉のえさを買い、鯉に餌をやることもできる。

 吹雪と隼人はお屠蘇気分のままに赤い顔をして、付いてきているが、その姿は人間に変身しているというものの他の人間には見えない幻影のままである。でも、翔君にはしっかり見えているというから、翔君は伴侶として、なるべくしてなったということだろう。

 一行は、平安神宮を出て東側に向かって歩き出す。

 平安神宮の正面には、大鳥居があるが、今日は、そちらに向かわずに、お土産を買うため「おはぎ屋」さんへ向かう。

 店の名前は、あったんやろうけど、小さすぎて、よく覚えていない。確か、「源光餡」だったような気もする。鷹峯に似たようなお寺があったけど、あちらさんとは無関係らしい。

 赤、黄、緑の小ぶりなおはぎは美味しく、おはぎと同様の小柄なお婆さんが趣味で作っていらっしゃるとのこと。

 6個入り箱を2箱買って帰ることにする。もう少し下がったところに有名な平安殿の和菓子屋の看板が見えるが、今日は江戸へ2回も行ったことから、くたびれたので、このまま帰宅を選ぶ。

 家へ帰ると、案の定、父から目配せをされたので社長室へ入る。

「で、どやった?」

「さるお大身のお大名から、当家所有の利休ゆかりの掛け軸をよこせと言われたので、レーザーコピー機で両面カラーコピーしたものを清兵衛さんに渡したら、表装して借用書を貰うということやったわ」

「お、おま、そんなんで大丈夫かいな?下手したら、首が飛ぶで?」

「たぶん大丈夫やと思うで、明日になってまだ生きていたら大丈夫やと思うわ」

「檸檬も大胆なことするようになったな」

「そやかてこれは、完全に向こう(大名家)がガメているって話やろ?どうせ盗られるんやったら、複写で十分や。それよりおはぎ買うてきたから、みんなで食べよ」

「ホンマに大丈夫やろか?」

「お父ちゃんも歳いったんやな。そんなことでいちいち心配してたら命がいくつあっても足らへんようになんで。それに清兵衛さんは、本物やと思わはったぐらいなんやし、大丈夫やて」
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