婚約破棄なら金返せ!聖女に家を取られた王族は滅びの道まっしぐらでも誰も助けません

青の雀

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 国王陛下以下王家の人々は今夜も野宿である。薪を拾ってきて、焚き火を全員で囲んでいるのである。リリアーヌは、父を探しに行ったきり、戻ってきていない。どうせ、どこかで男を引っ掛けて、その男のところに転がり込んだのであろう。

 「ダニエル。だいたいお前が聖女様と勝手に婚約破棄するからいけないのだ。」

 「だって、我が愛するリリアーヌを虐め、他の男と浮気していたからだ。」

 「バカ者!聖女様になるということは、純潔の証であるから、他の男と浮気できるはずがなかろう。誰からそんなバカな話を聞いた?」

 「え?リリアーヌからだけど。」

 「では、リリアーヌの首を刎ねよ。我が国が破産寸前であるのも、聖女様をホワイトブルゾン国にとられるのも、すべて性悪リリアーヌのせいだ。」

 「破産寸前は、母上のせいでしょう。それに我が国が財政難だと聞いたのは、婚約破棄してからのことですし。」

 「な、な、何を言っているの。王妃としての体面を保つために必要だったのですわよ。決して、無駄遣いなどしておりませんわ。ねぇあなた。」

「とにかくだ。そのリリアーヌの首を刎ね、ダニエルは聖女様の元へ行き、聖女様を連れ戻すのである!それしか、我が国が助かる道はない。」

 ダニエルは、渋々リリアーヌを探しに行くため、焚火の傍を離れる。そのリリアーヌはというと、歓楽街にいたのである。数人の男にカラダをいじられながら嬌声を上げている。

 「今夜は、誰のところにお泊りしようかなー。」

 俺、俺。男たちは、口々に誘っている。

 「リリアーヌ!こんなところにいたのか?さぁ帰ろう。」

 リリアーヌの手を掴んで引き寄せようとしたところ、いきなり男たちに殴られた。

 「帰るってどこによ?みなさーん、この人、王子様なんだけど、家を追い出されて帰るところがないのよ。無一文だし。」

 「ぎゃはは。とんだニセ王子様だな。ぎゃはは。」

 「「「「「にせおうじ!ニセ王子!」」」」」

 手を叩いてはやし立てられたダニエルはアタマにきて、剣を抜いてしまう。誰であろうと、どんな身分の人であろうと、歓楽街で剣を抜くと、処罰の対象となる。

 ダニエルは、騎士団に捕まり、今は王城の地下牢が使えないから、大木に野ざらしで逆さ吊りにされてしまうのである。

 寒さと空腹と屈辱に打ちひしがられるダニエル。
 やはり、父の言う通り、リリアーヌは性悪女だったのか?リリアーヌは、俺に作り話をしていたのか?木に吊るされたまま、考える。この状況では、すべてがリリアーヌの嘘だったとしか考えられない。

シルヴィアが浮気していたことも嘘。シルヴィアは、リリアーヌとは初対面だと言っていたから虐められたということも嘘。
 あのリリアーヌは、いったい俺をどうしたかったのか、それすらわからないでいる。

 シルヴィアの父エヴァンス公爵とリリアーヌの父ドイル男爵は、婚約破棄後、行動を共にしているようだと聞いたことがあった。とすると裏でドイル男爵が暗躍していたのか?リリアーヌはドイル男爵の意を酌んで、行動していたのか?

 と考えると、リリアーヌはシルヴィアを聖女様と知っていたことになる。俺とシルヴィアを別れさせるために、仕組んだのか?

 俺が連れ戻さなければならなかった女性はシルヴィアで、俺が心底愛さなければならなかった女性もシルヴィアだったのだ。俺は、どこで間違えたのだろう。

 リリアーヌに固執し、誑し込まれてしまったのである。
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